- 2023-4-2
- Impression (絵画展の感想)
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今回は、「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風」展のレビューや見所について話していきたいと思います。
ところで、カンペール(Quimper)?
おそらく知らない人も多いと思います。フランスの北西部”ブルターニュ地方”にある美術館で、ポン=ダヴァン派の作品を多く抱えている事で知られています。例えばゴーギャンやポール・セリュジェ、ベルナール、モーフラ…、風景画が好きな人には、タマラナイ画家ばかりではないでしょうか。
そんなわけで「ブルターニュの光と風」展の最大の見所は、風景画にあると言ってもイイ!!
【 目次 】 ・「ブルターニュの光と風」展の開催概要について |
今回はこの流れで話していこうと思います。
また後半では、私のおススメ画家も紹介しています。行く際の参考にしてもらえると幸いですね。
「ブルターニュの光と風」展の開催概要について
さてブルターニュと言えば、広大な自然や独自の文化を持っている地域で知られています。実際観光地としても人気の場所ですしね。当時多くの画家がこの地を訪れ、作品を制作したのも頷けます。
今回の「ブルターニュの光と風」展は、まさにそういった広大な自然の風景画だったり、民族色の残る風俗画が満載!ある意味、ブルターニュを観光した気分に浸れる展覧会だろうと思っています。
【 カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 】
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「ブルターニュの光と風」展は、東京⇒福島⇒静岡⇒愛知で開催の巡回展です。おそらく内容自体はほぼ変わらないと思うので、今回の話をちょっとでも参考にしてもらえたら嬉しいですね。
特に今展の一番の醍醐味は”風景画”です。風景画の良い所は、芸術に詳しくなくても楽しめるのがイイ!ぼ~と眺めるだけでも、十分オモシロイですよ。
※ブルターニュの街並みの様子(参考画像として)
「ブルターニュの光と風」展のレビューと見所は!?
私が行ってきたのは、東京開催のSOMPO美術館でした。
SOMPO美術館は損保ジャパン本社にある美術館で、かの有名なゴッホの名画「ひまわり」を所蔵している事でも有名!「ブルターニュ」展と一緒に、「ひまわり」も鑑賞出来たのは良かったですね。
それでは肝心のレビューをしていこうと思います。
「ブルターニュ」展は巡回展ですから、下で挙げる作品も見る事が出来ると思います。
・135×204cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵
アレクサンドル・セジェ(Alexandre Sege)の風景画「プルケルムール渓⾕、アレー⼭地」です。
ところで、この画家は知っていますか?
おそらく知らない人も多いと思います。ちなみに私は知らない画家でした。
今回は地元カンペール美術館の作品がメインで展示されています。つまり日本ではあまり知られていない画家の作品も結構見れるのです。知らない画家の作品を見てもつまらないのでは?と思うかもしれませんが、でも風景画においては画家の知名度ってあまり関係がないと思っています。何せ、風景画は、ボ~と眺める感じでも十分楽しめるからです。
”この景色って美しいな~”と思える作品があれば、それがあなたにとっての名画となるから!
・54.5×65cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵
マキシム・モーフラ(Maxime Maufra)は、「ポン=タヴァン派」で知られるフランスの画家です。
余談ですがモーフラはイギリスを代表する風景画家”ウィリアム・ターナー”に感銘を受けて画家を目指したと言われています。そしてブルターニュでは、ゴーガンとも出会っている。言うなれば、風景画家になるべくしてなった画家という感じがしませんか?
・170×245cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵
そしてこちらは看板作品にもなっている、アルフレッド・ギユ(Alfred Guillou)の「さらば!(Adieu!)」です。
高さ170cm、横245cmという大きな作品で、迫力あるシーンは本当に圧巻です。荒れ狂う波の描写が大画面で描かれているわけですから、この迫力は写真や画像ではまず伝わらないでしょうね。本物を観るに限ります!
アルフレッド・ギユはブルターニュの出身の画家で、後にカンペール美術館の理事も務めた人物でした。そういう意味では、カンペール美術館の看板画家と言ってもいいでしょうね。ギユはコンカルノーという漁村の人々を描いた画家として知られています。人々の生活に寄り添った作品が多いという意味では、ブルターニュの風景画にはなくてはならない存在でしょうか。
実はこの「ブルターニュ展」では、比較的大きな作品が多いのも見所!ちなみに一番右側に見えるのは、テオドール・ギュダン(Theodore Gudin)の「ベル=イル沿岸の暴風雨」という作品です。これも大きな作品で、荒れ狂う波の描写は凄かった!!
さて、ここまであまり日本では知られていない画家ばかりを挙げてしまいました。もちろんこればかりではありません。ポン=タヴァン派の代表格ポール・ゴーギャンや、エミール・ベルナールやポール・セリュジェの作品も見れます。
・「ブルターニュの子供」(1889年)ポール・ゴーギャン
・「さようなら、ゴーギャン」(1906年)ポール・セリュジェ
・「水瓶を持つブルターニュの女性」※ジンコグラフ(1886年)エミール・ベルナール
・「りんごの採り入れ」※ジンコグラフ(1889年)エミール・ベルナール
※ジンコグラフはリトグラフの一種で、俗に”亜鉛版リトグラフ”と呼ばれています。
それから私の好きな画家”リュシアン・シモン”の作品もありました。
・102×137cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵
リュシアン・シモン(Lucien Simon)??
この画家も日本ではあまり知られていないかもしれませんね。個人的には好きな画家で、知る人ぞ知る素敵な画家です!現在国立西洋美術館に「婚礼」や「ブルターニュの祭り」、「墓地のブルターニュの女たち」など数点所蔵されています。特にお気に入りは「婚礼」という作品で、初めて観た時は色彩感に一目ぼれしてしまったほど!!
・参考)⇒ブルターニュに魅了された画家”リュシアン・シモン”を解説!
③ ④
風景画で描かれる事が多い地域”ブルターニュ”。歴史的に独特な文化と風習、それから美しい自然が残る辺境の地とも呼ばれています。多くの画家たちが好んでこの地を選んだのも何となく分かる感じがします。風景画家にとって最高な瞬間って、好きな風景を描く事なのかもしれませんね。
・138×203cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵
フランスのパリで生まれた画家アドルフ・ピエール・ルルー(Adolphe Pierre Leleux)。20代中頃にブルターニュに居住し、その後多くの作品を描いて事で”ブルターニュのルルー”と言われた画家です。当時の庶民の行事や生活を、細部まで描いている点は見物!!ある種”資料的な価値”も感じませんか?このルルーという画家も、ブルターニュの自然と人々に魅了された一人だったという事でしょうか。
ここで、私がおススメする2人の画家を挙げてみたいと思います。
「ブルターニュの光と風」展では、日本であまり知られていない画家の作品も多く展示されています。カンペール美術館が地元の画家の作品を多く抱えているのも大きな理由なんでしょうね。だから知らないからと言って、作品の質が低いという訳ではないのです。逆にこういった展覧会こそ、新しい画家との出会いがある!というもの。
例えばピエール・ド・ブレ(Pierre de Belay)も、まさにそんな画家の一人です。
ピエール・ド・ブレの「ブルターニュの女性」(1940年)
私はこの画家について知らないのですが、でも画風は実に興味深い!今回展示されていた作品のどれもが、描き方に特徴があって面白かったですね。上の「ブルターニュの女性」では、線の規則性で表現した独創的な画風(トレイリスム:格子状技法)が特徴。もう一つ同じような作品に「ブルターニュの少女」もありました。
点描画に通じる様な…、版画の技法に似た感じの描き方は実に個性的!これはこれで作品としてオモシロイですね。
ピエール・ド・ブレの「コンカルノーの港」
こちらは対照的に絵の具の厚塗りと豪快な筆のタッチが特徴の作品です。絵から感じられる重厚感!!荒々しい筆づかいによって、一層”海の男!”感が表現されている様ですね!
今展ではブレの作品が計4点展示されていますが、描き方の違いで作品を描いている点は必見!!これは生(LIVE)で観てほしい作品だと思います。
地元に寄り添った作品を見るなら、地元にある美術館が一番!
ブルターニュの絵画を見るなら現地にあるカンペール美術館が最適!!ただ地元の画家も多くなるので、知らない画家も多かったりするでしょうけど。でも作品を見ていく上で、画家を知っているか知らないかは正直言って関係ない。
だって、イイな~!と思う作品があればイイわけですから!
・88×130.5cm、カンヴァスに油彩、カンペール美術館所蔵
「ブルターニュの光と風」展では、日本では知られていない名画と出会えるかもしれない!!そう思うと、ちょっとワクワクしてきませんか??東京、福島、静岡、愛知と4か所で開催するので、ぜひ日程をチェックして行ってみるのもイイと思います。新たな発見があるかもしれませんよ!
【 カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 】
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※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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