山種美術館で、特別展「没後80年記念 竹内栖鳳」展を観てきました。

特別展「没後80年記念 竹内栖鳳」展 …山種美術館にて

 

日本画の専門美術館と言われるだけあって、山種美術館はイイ作品が本当に多いですよね。先日、没後80年記念 竹内栖鳳を観てきたのですが、改めて質の高さに驚かされてしまいました。

 

さて、今回の主役は京都画壇で超が付くほど有名な画家”竹内栖鳳”。もちろん代表作として名高い「班描(はんびょう)」も展示されます。そして同じく京都画壇の画家村上華岳の「裸婦画」も観れる。今回の特別展は想像以上に見所多し!と思い、早速行ってきたのでした。

 

山種美術館

【記念展】没後80年記念竹内栖鳳

・会期:2022年10月6日(木)~12月4日(日)

・場所:山種美術館にて(東京都渋谷区広尾3-12-36)
※一般用の駐車場はないので、恵比寿駅からの徒歩、もしくはバスを利用。

 

それでは「没後80年記念 竹内栖鳳」展の内容にちょっと触れながら、私なりの感想や見所について話していこうと思います。

 

 

内栖鳳と言えば、真っ先に挙がるのが代表作「班描」になるでしょうね。重要文化財に指定されているので、当然と言えば当然だと思います。今回真っ先に「班描」が展示されていましたが、やっぱり名画と言われるだけあると思います。

 

「班描」(1924年)竹内栖鳳

「班描」(1924年)竹内栖鳳

・81.9×101.6cm、絹本・彩色、山種美術館所蔵

とにかく私的に必見!なのが、リアル過ぎるくらい生々しい猫の毛並み。繊細で、質感までしっかりと描いている感じは栖鳳のなせる業と言った感じでしょうか。それから、私を睨みつけているかの様なエメラルドグリーンの目も印象的!ちょっと怖さもあるけれど、何よりも神秘的な感じは必見だと思います。

 

まず栖鳳がこの斑模様の猫を描こうと思った経緯について話してみたいと思います。

初秋の午後、沼津の街を歩いていたら、八百屋の車の上に寝ていた猫を目にします。栖鳳は”私の画材となるには格好の猫だ!”と沸き上がる表現欲に駆られてしまったのです。居ても立っても居られかったわけですね。

こういった背景を知ると、画面には無駄なものは一切なく、猫しか描かれていないのも納得。猫を描きたかったから、描いただけなのだから…。そして結果として竹内栖鳳を代表する作品に至った。名画なるべくして成ったという事でしょう。


参考)⇒竹内栖鳳の代表作「班描」を見に、山種美術館に行こう!

 

さて、真っ先に「班描」を観てしまった以上、他に見所は?と思う人もいるでしょう。でも個人的に見所は動物の絵だと思っています。というのも、栖鳳という画家は”動物を描けばその体臭までも表す”と称されたほど!個人的に動物はどれも一見の価値ありだと思うのです。

 

例えば、最初に観れた「緑池」は個人的に今回一番の傑作!これは緑色の池に浮かぶ蛙(カエル)を描いた非常にシンプルな作品。蛙の上半身が池から出ていて、下は水中に隠れている様子は本当に凄い!の言葉しか出ないと思います。今展で栖鳳の作品を色々と観てきましたが、改めて思うのが非常に絵が上手い画家だという事。竹内栖鳳の作品を観る上で、画力の高さは忘れてはならないポイントでしょうね。

 

「蛙と蜻蛉」(1934年)竹内栖鳳

「蛙と蜻蛉」(1934年)竹内栖鳳

・94.0×111.0cm、紙本・墨画淡彩、山種美術館所蔵

今回蛙を題材にした作品が他にもありますが、この「蛙と蜻蛉」という絵も栖鳳の上手さが際立っていると思います。一切の無駄がなく複数の蛙と蜻蛉だけが描かれていますが、ここまで蛙の動きを巧みに表現しているのも凄い。細密に描いているわけではなく、あっさりと描かれている様に見えて、でもリアルな動きと生々しい描写。シンプルが故に、純粋に絵の上手さが分かる瞬間だと思います。

 

ちなみに、今展で印象に残った言葉があったので紹介したいと思います。

日本画は省筆を尚(たっと)ぶが、充分に写生をして置かずに描くと、どうしても筆数が多くなる。写生さえ充分にしてあれば、いるものといらぬものとの区分けがつくので、安心して不要な無駄を棄てることができる。

出典元:神崎憲一「栖鳳語録」『国画』ニ巻九号、昭和17年9月

この言葉を観た瞬間、栖鳳の上手さの理由は充分な写生が土台としてあるからだと思ったのです。今展では魚の絵も多数展示されていましたが、どれも一切の無駄がなく、色の濃淡や筆の線だけで魚を表現している!京都画壇を代表する画家だけあるな~と思った瞬間でした。

 

「潮来小暑」(1930年)竹内栖鳳

「潮来小暑」(1930年)竹内栖鳳

・68.0×87.0cm、絹本・彩色、山種美術館所蔵

本来なら、もっと栖鳳の作品を挙げたいところですが、それは実際に山種美術館に行って見てほしいと思います。今回展示されている作品の約半分は栖鳳による作品で、ほとんどが山種美術館所蔵によるもの。実にこの美術館の質の高さに驚かされますね。

 

さて締めに、もう一人の注目画家作品を見たいと思います。

「裸婦画」(1920年)村上華岳

「裸婦画」(1920年)村上華岳

・163.6×109.1cm、山種美術館所蔵

村上華岳の「裸婦画」です。これも重要文化財に指定されている作品です。

全体的に薄茶色と肌色で構成されている作品ですが、私的には黄金色にも見えてしまいます。一昔前の美人女性にも見えるし、神秘的で女神の様にも見える。おそらく人によってこの女性に対する印象は様々だと思います。村上華岳はこの裸婦画について理想の典型である”久遠(くおん)の女性”を描いたと語っているそうです。つまり華岳にとって永遠に理想的な女性を描いたって事でしょうね。

私の考えですが、男性が理想の女性を描くときは基本的に母親がベースにあると思っています。私はこの「裸婦画」を観た瞬間、何とも母性溢れる温かみのある女性だな~と思ったのですが、あなたはどう思いますか??

 

この「【特別展】没後80年記念竹内栖鳳」は2022年12月4日まで開催します。

山種美術館は比較的小さい美術館とはいえ、質の高い日本画を多く抱えている個人的に好きな美術館の一つ。今年は竹内栖鳳が没して80年という節目。中身の濃い作品が多く展示されているので、ぜひ行ってみてはどうでしょう!?

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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コメント

  1. 私は松山市の者ですが今から20年近く前、京都東山に有る竹内氏の別邸、東山そうどう画廊で私の娘が結婚式させて頂きました。その時、待合室で虎の画とか猫の絵画を拝見し感動した事を記憶しております。懐かしく、想い出しました。有難う御座いました。

    • サダ
    • 2022年 11月 16日

    コメントありがとうございます。気になり調べてみましたが、現在は「ザ ソウドウ東山」の名で素敵な結婚式場になっているんですね。イイお話有難うございます。

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