- 2020-11-8
- Impression (絵画展の感想)
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![「1894年 Visions:ルドン・ロートレック展」…三菱一号館美術館にて](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/1894_visions.mitsubishi_1gou01.jpg)
三菱一号館美術館で開催した企画展
「1894年 Visions:ルドン・ロートレック展」観に行ってきました。
今展のキーワードは”1894年”。
この年に活躍した画家に焦点を当てた企画展で、
特にルドンとロートレックの2大画家を取り挙げていました。
この1894年…
フランスでは印象派絵画が大きく飛躍していた時期。
もちろんルドンもロートレックもフランスの画家なので、
印象派の影響を多少なり受けてはいるものの共に独自の道を進んでいった様です。
例えばロートレックで言えば、
こういったポスター絵画が特に有名だと思います。
現代で言えば”芸術性のあるポスター広告”と言った感じでしょうか…。
![「ディヴァン・ジャポネ」(1893年)アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/divan_japonais.henri_de_toulouse_lautrec01.jpg)
「ディヴァン・ジャポネ」(1893年)アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「ディヴァン・ジャポネ」(1893年)
これはリトグラフ(版画の一種)による作品です。
※リトグラフ (lithograph)…
版画の一種で水と油の性質を利用して絵画を制作する事。
リトグラフは版画の様なもので広告的な意味合いもありながら、
その芸術性の高さから芸術作品としても評価されていた様です。
![「悦楽の女王」(1892年)アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/reine_de_joie.henri_de_toulouse_lautrec01.jpg)
「悦楽の女王」(1892年)アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
個性的で目を惹く作品…
シンプルで記憶に残るモノばかり!
しかもどれも目を惹くインパクトがあって
ポスター広告としては充分の機能があると思います。
でも中にはポスターでありながら街頭に貼られる事もなく、
1つの装飾的な作品として飾られるケースも多々あった様です。
![「コンフェッティ」(1894年)アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/confetti.henri_de_toulouse_lautrec01.jpg)
「コンフェッティ」(1894年)アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「コンフェッティ」(1894年)
この作品は女性を紙吹雪で歓迎しているそんな様子を表わしている様です。
confetti(コンフェッティ)
…紙吹雪、紙吹雪をまくという意味になります。
アルコール依存や性病など
ロートレックの私生活はかなり乱れていた様だけれど…
でも広告媒体を1つの芸術作品として押し上げた点では、
このロートレックの功績は相当なものだと思います。
36歳という短命だっただけに、
もしもっと長生きしていたら一体どんな作品を残せていたのかな~と。
そしてもう1人が
色鮮やかな花の絵でも有名な”オディロン・ルドン”です。
実は初期のルドンは版画家として活躍していました。
しかもモノクロの薄気味悪い世界観の作品が多かったのです。
![「骸骨」(1880年頃)オディロン・ルドン](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/la_squelette.odilon_redon01.png)
「骸骨」(1880年頃)オディロン・ルドン
オディロン・ルドン「骸骨」(1880年頃)
特にリトグラフ (lithograph)の作品が有名で、
白黒の版画と鬱々した不気味な感じの作品を制作していた時期、
俗にこの頃は”黒の時代”とも呼ばれています。
![「絶対の探求…哲学者」(1880年頃)オディロン・ルドン](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/philosophe.odilon_redon021.png)
「絶対の探求…哲学者」(1880年頃)オディロン・ルドン
オディロン・ルドン「絶対の探求…哲学者」(1880年頃)
モノクロ(白黒)の世界観と不気味さ…
幻想的で鬱々とした雰囲気の作品が多かったのです。
もちろん背景には周りの人間の死による喪失感もあったそうで、
こういった自身の精神状態が作品に表れていた様です。
でもそれが”1894年”を区切りに
徐々に画風が変化していったそうです。
この年にオディロン・ルドンは個展で初めて色彩の作品を発表し、
これ以降パステル画や油彩画など色彩を用いる様になっていったのです。
![「神秘的な対話」(1896年頃)オディロン・ルドン](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/mystical_conversation.odilon_redon01.jpg)
「神秘的な対話」(1896年頃)オディロン・ルドン
オディロン・ルドン「神秘的な対話」(1896年頃)
パステルの良さを残しながら、
同時に独自の技法によってまるで絵具の質感を持たせたり…
こういった独特な雰囲気と世界観は、
ルドンならではだと思いますね。
![「グラン・ブーケ(大きな花束)」(1901年)オディロン・ルドン](http://kaiga-date.com/wp-content/uploads/2020/11/grand_bouquet.odilon_redon01r.jpg)
「グラン・ブーケ(大きな花束)」(1901年)オディロン・ルドン
オディロン・ルドン「グラン・ブーケ(大きな花束)」(1901年)
これは三菱一号館美術館に所蔵されている作品
この「グラン・ブーケ」はまさにルドンを代表する作品だと思います。
まるで浮かび上がる様な描写と色鮮やかな花の色彩。
パステル的な味わいが活かされている傑作だと思います。
しかも綺麗な花束だけでなく、
幻想的な雰囲気がするのも魅力の1つだと思います。
花々をじっくりと見ていくと、
まるで人間の目の様に見えたり生き物の様にも見える。
どことなく不気味さもありながら、
全体的に幻想的で鮮やかに仕上がっているのが素敵だと思うのです。
まさにオディロン・ルドンしか描けない代物だと思います。
この「グラン・ブーケ」は久々に見たのですが、
僕にとってルドンの作品の中でコレが一番のお気に入り!!
何度観てもこの幻想的で鮮やかな花はイイですね!!
1894年頃は今回のルドンにロートレックといい
芸術をより昇華させていった時代だったのかもしれませんね。
実はこの1894年という年は
東京丸の内に三菱一号館が建設された年でもあるのです。
元々この三菱一号館はオフィスビルとして建設された建物でした。
その後建物は老朽化により解体され、
そして忠実に復元されて2010年に美術館として開館したそうです。
これは美術館の正面に広がる広場の写真です。
自然と彫刻などの作品もあって四季折々の変化を堪能できるのも素敵な場所です。
今展のルドンにロートレックといい、
”芸術性溢れる印刷物はそれだけで芸術作品に成りえる!!”
改めて芸術の可能性を垣間見る事が出来た。
そんな「1894年 Visions:ルドン・ロートレック展」でした。
【 1894年 Visions ルドン・ロートレック展 】 ・開催期間:2020年10月24日(土)~2021年1月17日(日) |
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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