ルドンの描いた”花”の魅力

Pastel Painting

 

オディロン・ルドンの作品でどれが一番かと問われたら、私は迷うことなく三菱一号館美術館にある「グラン・ブーケ」を選びます!

 

ルドンという画家は実にオモシロく、最初奇怪な生物のモノクロ作品を制作したかと思いきや、後半になると色鮮やかで美しい花の作品を描いたりしていました。ここまで作風が変化する画家もおそらく他にはいないんじゃないかな~と思います。個人的にこのギャップはオディロン・ルドンの魅力の1つだと思うのです。

 

「グラン・ブーケ(大きな花束)」(1901年)オディロン・ルドン

「グラン・ブーケ(大きな花束)」(1901年)オディロン・ルドン

オディロン・ルドングラン・ブーケ(大きな花束)(1901年)
・カンヴァスにパステル、248.3×162.9cm、三菱一号館美術館蔵

この「グラン・ブーケ」は三菱一号館美術館に行くと、ほぼ間違いなく見る事が出来ると思います。しかも何より素敵なのが展示の仕方です!!贅沢にも個室に飾られ、作品が浮かび上がる様なライトアップ演出!おそらくこれ以上ないって程の見せ方だろうと思います。

写真や画像で見る以上に素敵なので、ぜひ見た事のない人は行ってみる事をおススメしますよ!

 

さてこの作品は1897年にドムシー男爵に依頼されてルドンが制作したもの。ブルゴーニュのワイン畑にあるドムシー城の食堂に飾られた16点の内の1つで、ルドンの制作したパステル画でも特に大きな作品です。作品の高さが248cm…、つまり170cmの私が手を伸ばしてやっと届くくらいの高さなわけです。

 

ここでCheck!
「グラン・ブーケ」の魅力って!?

大きな作品ならではの迫力や浮かび上がる様な展示方法もイイですが、何より魅力的なのが作品から発せられる幻想的な雰囲気だろうと思います。パステル調らしく淡く美しい雰囲気を醸し出しながら、でもよ~く見ると花びら1つ1つが人の目や顔の様に見えたりもする…。元々奇怪で不気味な作品を作ってきたからなのか?、美しい絵でありながらどこか不気味で幻想的にも見えてしまうのです。まさにルドンワールドって感じですね!

 

 

実はドムシー城の食堂に飾られた作品16点の内、
他の15点は1988年にオルセー美術館に所蔵される事になりました。

でも唯一この「グラン・ブーケ」だけがその後も城に飾られ続け、
その後三菱一号館美術館の高橋館長の目に留まり2010年に同美術館の所蔵作品となったのです。

 

三菱一号館美術館 三菱一号館美術館
三菱一号館美術館の手前に広がる美しい庭園

まるでワイン畑に立っているドムシー城にも通じる様な…

この「グラン・ブーケ」が三菱一号館美術館にやって来たのは、
ある意味”必然の流れ”だったのかもしれませんね。

 

ここでCheck!
ルドン作品の魅力とこんな見所!!

このルドンのパステル作品は、
単なるパルテル調に留まっていないのが凄い所!

これもルドン作品の魅力であり見所だと思います。

時にはパステルの様な淡さや柔らかさがあって、
時には凛としたはっきりとした線もある。

パステルの良さを引き出しながら、
時にはアクセントとして尖った画材を使ったりもしたそうです。

 

 

「黄色い背景の樹」(1900‐1901年)オディロン・ルドン

「黄色い背景の樹」(1900‐1901年)オディロン・ルドン

オディロン・ルドン黄色い背景の樹(1900‐1901年)

 

「黄色い花咲く枝」(1900‐1901年)オディロン・ルドン

「黄色い花咲く枝」(1900‐1901年)オディロン・ルドン

オディロン・ルドン黄色い花咲く枝(1900‐1901年)

 

この2点ともにドムシー城の食堂に飾られた作品の一つ。
(現在は両方ともオルセー美術館に所蔵されています。)

黄色を基調とした作品で、
全体的に落ち着いた淡い感じに仕上がっています。

「ブラン・ブーケ」がパステルで描かれているのに対し、
この2点は油彩デトランプが使用されているのが特徴。

※”デトランプ”とは
イタリア語ではテンペラと言い、フランス語でデトランプと言います。
卵や膠などを用いた水彩絵の具の事。

この様に油彩とデトランプと言う異なる画材を用いる事で、
独特な奥行き感を表現しているのです。

 

「日本風の花瓶」(1908年)オディロン・ルドン

「日本風の花瓶」(1908年)オディロン・ルドン

オディロン・ルドン日本風の花瓶(1908年)
・カンヴァスに油彩、92.7×62cm、ポーラ美術館所蔵

これは日本風の花瓶とそれに挿された色鮮やかな花が特徴的な作品。

 

絵を見て感動!
個人的にこの「日本風の花瓶」は特に好きな作品です!!

柔らかく温か味の感じる作品で、
パステルとは違った描写が特に魅力的ですね!
個人的にこの明るい色合いは素敵ですね。

 

「ヴィオレット・ハイマンの肖像」(1910年)オディロン・ルドン

「ヴィオレット・ハイマンの肖像」(1910年)オディロン・ルドン

オディロン・ルドンヴィオレット・ハイマンの肖像(1910年)
・カンヴァスにパステル、72×92.5cm

これはルドンが70歳の頃に描いた作品。
パステル調の色鮮やかさとぼやけた感じによって、
全体的に幻想的な雰囲気を醸し出している作品です。

 

「青い花瓶の花」(1904年頃)オディロン・ルドン

「青い花瓶の花」(1904年頃)オディロン・ルドン

オディロン・ルドン青い花瓶の花(1904年頃)
・カンヴァスにパステル、47×60.5cm、岐阜県美術館所蔵

この「青い花瓶の花」は簾の目の紙を使っているといいます。
よりパステルのぼかしを強調した作品になっている様です。

それが幻想的で深みのある作品に繋がっているんだろうと思います。

 

ルドンは描く主題やモチーフによって
画材や画法を変えて描いたりもしているのです。

こういった変幻自在さもルドンの魅力だと思います。

 

考え…・思い…
ルドンを一言では言い表せない…

ルドンの”花”が魅力的に見えるのは、
こういったルドンの変幻自在で挑戦の賜物なのかもしれませんね。

ぜひルドンの「花」シリーズを観る際は、
こういったルドンの様々な試みを堪能してほしいと思います。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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