国立西洋美術館の見どころ満載な「常設展」を観に行こう!

国立西洋美術館の「常設展」に行こう!

 

これだけ魅力満載なのに、なぜ国立西洋美術館の「常設展」に行かないのだろう??

「企画展」ではあれほど人が多いのに、なぜか「常設展」となると人が少ない…。しかも企画展のチケットで常設展まで鑑賞できるっていうのに、行かないなんて本当にもったいない。実は国立西洋美術館の「常設展」は見所と魅力が満載なのです!

 

【目次】

・1,入場者が少ないから、じっくりと作品を楽しめる!
・2,企画展はデート姿、常設展は本来の姿!
・3,ワンコインで200点を超える作品を見れる贅沢さ!
・4,観る日や気分によって作品の印象が違うのも絵画の魅力!
・番外編 ,宗教画を好きになるきっかけは”NMWA”でした。

さて、今回は国立西洋美術館の常設展で観れだろう作品を挙げながら、私なりに魅力に迫ってみたいと思います。

 

国立西洋美術館
さて上野の国立西洋美術館には約6,000を超える所蔵作品があります。

ルネサンス期の宗教画やオールドマスターと呼ばれる巨匠たちの作品たち。それから彫刻や印象派を代表する画家の作品。さらには現代のアートまで揃っています。作品の数や質も申し分なく、私が思うに日本を代表する美術館と言っても差し支えないかと思うほど。

そんな国立西洋美術館で行われる「常設展」は、見所満載で魅力溢れるものだと思っています。せっかく行ったなら、行かない手はないと思うのです。

 

 

1、入場者が少ないから、じっくりと作品を楽しめる!

美術館でじっくり鑑賞

「企画展」ではあれだけ人が多いのに、なぜか「常設展」となると人が少ない。はっきり言って、本当にまばらです。でも私にとっては内心嬉しかったりしますが…。

人が少ないだけに、じっくりと作品を鑑賞できるからです。

 

企画展で人気の画家の作品を見ようと思うと、場合によっては行列が出来ます。作品の周辺には多くの人が集まってしまい、じっくり作品を鑑賞しようにも難しいのです。

 

「眠る二人の子供」(1612‐1613年頃)ペーテル・パウル・ルーベンス

「眠る二人の子供」(1612‐1613年頃)ペーテル・パウル・ルーベンス

・50.5×65.5cm、カンヴァスに油彩

これはペーテル・パウル・ルーベンスの作品「眠る二人の子供」。

巨匠ルーベンスと言えば、企画展によっては人だかりができるほど人気の画家です。でも常設展になると、本当に人がいません。そんなわけで、この名画をじっくりと鑑賞できるのです。名画を独り占めできるって、これほどの贅沢はないでしょうね!^^

私的にこの「眠る二人の子供」は好きな作品で、「常設展」に行く度にじっくりと魅入ってしまいます。ちなみにこの作品は”習作”と言われていて、つまり作品を作るための練習のために描いたもの。比較的サラッと描いている様で、実は超上手いのが分かると思います。特に子供の顔の描写は本当に凄い!!ルーベンスの上手さが垣間見れる作品だと思います。

 

「帽子の女」(1891年)ピエール=オーギュスト・ルノワール

「帽子の女」(1891年)ピエール=オーギュスト・ルノワール

これは印象派を代表するルノワールの作品「帽子の女」

柔らかい繊細な筆のタッチと、美しい色遣い。女性の”美”を描かせたら右に出る者はいないと思います。ルノワールは印象派の中では人気の画家の1人で、もちろん企画展でも人だかりができるほど人気の画家。この美しい女性の絵を独り占めできるなんて^^。

こんな男日和に尽きる機会はないと思います。

 

「常設展」では有名な画家の名画をほぼ独り占め状態なのです。好きな作品をゆっくり、じっくりと見ていられる。実に贅沢だと思いませんか!?つくづく思いませうが、なぜ皆「常設展」に行かないのだろう??本当に不思議で仕方がないのです。

 

 

2、企画展はデート姿、常設展は本来の姿!

美術館でデート

例えるなら「企画展」はデート姿(外出用)、「常設展」は本来の姿(普段着)だと思っています。

ところで「企画展」は美術館が期間を定めて、テーマに沿って行う展覧会の事を言います。対して「常設展」は美術館が本来持っている(所蔵している)作品を披露する展覧会を言います。

日本でそれなりの作品数を所蔵していて、常設展を開いている美術館と言えば、代表的な所では”国立西洋美術館”や東京国立近代美術館、京都国立近代美術館が挙げられると思います。どれも主旨やテーマに沿って作品を収集し研究しています。もちろん展示する作品からも美術館のカラーが表れています。

例えば国立西洋美術館は名前の通り、西洋絵画を多く所蔵しています。

 

「豊穣」(1630年頃)ペーテル・パウル・ルーベンス

「豊穣」(1630年頃)ペーテル・パウル・ルーベンス

・63.7×45.8cm、カンヴァスに油彩

巨匠ペーテル・パウル・ルーベンスを筆頭に、クラーナハ、ドラクロワ、ティツィアーノ・ヴェチェッリオと有名どころはほぼ網羅しています。もちろん、あまり有名ではないけれど、素敵な作品も多数抱えています。

 

「古代建築と彫刻のカプリッチョ」(1745‐1750年頃)ジョヴァンニ・パオロ・パニーニ

「古代建築と彫刻のカプリッチョ」(1745‐1750年頃)ジョヴァンニ・パオロ・パニーニ

・98.4×135cm、カンヴァスに油彩

例えば、パオロ・パニーニは日本ではあまり知名度はないかもしれませんが、この遺跡をモチーフにした風景画は圧巻!!ちなみに”廃墟のロベール”と呼ばれた画家ユベール・ロベールも見逃せません!!

個人的に遺跡や神話、風景画の要素が融合した景観画は好きで、行く度に魅入ってしまいます。国立西洋美術館にはこういった景観画は多く所蔵している印象で、ぜひ見所のジャンルだと思っています。元々私が絵画を好きになった経緯に風景画があります。神話や宗教画というとちょっとお堅いイメージがあるけれど、でも風景の要素が加わっていると意外とすんなりと見れてしまう。好きなジャンルが1つあるだけで、絵画を好きになる要素十分だと思っています。

 

「夏の夕べ、イタリア風景」(1773年)ジョゼフ・ヴェルネ

「夏の夕べ、イタリア風景」(1773年)ジョゼフ・ヴェルネ

 

これはフランスの画家”ジョゼフ・ヴェルネ”の作品「夏の夕べ、イタリア風景」。

何とも言えない美しい風景画ですね。この景色が実際のイタリアの景色だったかどうかは不明ですが、本当に美しくロマンチックな絵だと思います。この作品にはジョゼフ・ヴェルネの”自然主義”の要素が十分発揮されていて、後のバルビゾン派や印象派へと繋がる重要な作品と言われています。

つくづく思いますが、美しい絵は説明など不要!純粋にじっくりと見ていられるのがイイですね!^^

 

さて、企画展は良くも悪くも、ある程度の来場者を呼び込むために人気の画家や作品を他から借りたしします。確かにその美術館のカラーに沿った形で行っているだろうけど、やっぱり入場者ウケする展覧会にしようと試行錯誤するわけです。つまりはデート姿というわけですね!

対して常設展は美術館の本来の姿って感じです。その美術館のカラーが所蔵作品に表れているのです。

 

「十字架のキリスト」エル・グレコ

「十字架のキリスト」エル・グレコ(本名はドメニコス・テオトコプーロス)

・95.5×61cm、カンヴァスに油彩

この人体を引き伸ばした様な、大げさで大胆なタッチはエル・グレコらしい作品だと思います。

日本で宗教画はそこまで人気のジャンルではないだろうけど、西洋絵画では重要な位置を占めています。国立西洋美術館は西洋絵画を多く所蔵している美術館です。特に宗教画は日本屈指の質と量を抱えています。西洋絵画を多く所蔵している国立西洋美術館ならではの作品だと思います。

 

 

3、ワンコインで200点を超える作品を見れる贅沢さ!

美術館の前にチケット購入

現在国立西洋美術館の「常設展」の入場料は大人で500円(大学生は250円)。ほぼワンコインで200点~300点を超える展示作品を楽しめます。本来企画展だと約100点前後で2000円近い入場料だと考えると、かなりお得なのが分かると思います。このリーズナブルな入場料で、多くの作品を堪能できるのも「常設展」の魅力だと思っています。

 

「あひるの子」(1889年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「あひるの子」(1889年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・171.7×76cm、カンヴァスに油彩

別に入場料がリーズナブルだと言っても、作品的には充実した内容になっています。個人的にミレイは好きな画家で、この「あひるの子」や、そして新たに加わった「狼の巣穴」も見所です。

ミレイは19世紀頃に活躍したイギリスの画家で、ラファエル前派を代表する一人。名画「オフィーリア」で有名な画家ですが、ミレイの作品でおススメは子供を描いた作品たちです。繊細に見えて、実は大胆な筆づかいは必見!ぜひ常設展へ行った際は、お見逃しなく!

 

「書物と髑髏のある静物」(1663年)エドワールト・コリール

「書物と髑髏のある静物」(1663年)エドワールト・コリール

・56.5×70cm、カンヴァスに油彩

エドワールト・コリールは17世紀後半のオランダの画家。ちょうどオランダが黄金時代と呼ばれていた時期に活躍した画家。特に質の高さは必見だと思います。

現世の儚さを描いたヴァニタスを得意とした画家で、高い写実性と技術の高さ。素人が見ても凄いの一言!

 

「花」ヴィクトリア・ファンタン=ラトゥール

「花」ヴィクトリア・ファンタン=ラトゥール

 

ヴィクトリア・ファンタン=ラトゥールと聞いて、ピンと来たら相当な絵画通だろうと思います。画家アンリ・ファンタン=ラトゥールの妻が描いた作品。ファンタン=ラトゥールの作品は国立西洋美術館に数枚所蔵されていますが、本物の様な写実性の高い作品が特徴。このヴィクトリアの描いた「花」の静物画も非常に写実的ですね。

ちなみにアンリ・ファンタン=ラトゥールはフランスの画家で、ちょうど印象派が流行り始めた時期に活躍した画家。もちろん印象派の画家たちとの親交はあったそうですが、それでも写実さを貫いていたわけです。

ここで挙げたのは国立西洋美術館の所蔵する作品のほんの一部。まだまだ素敵な作品がたくさんあるので、ぜひ足を運んで見てほしいと思います。

 

 

4、観る日や気分によって作品の印象が違うのも絵画の魅力!

美術館で絵画を堪能!

私の持論ですが、絵画はその日の時期や気分、環境によって印象も変化するものだと思っています。

以前は何となく通り過ぎていたのに、なぜか今回に限っては妙に惹かれる!こういった経験ってありませんか!?国立西洋美術館で開催する「常設展」は、定期的に展示作品を変えています。とは言っても、大幅に変更するって事はあまりありません。行く度に同じ作品と出会う事もよくあるのです。でも同じ作品とはいえ、観る時期や気分によって印象は違うのです。これって絵画鑑賞の魅力の1つだと思っています。

 

「グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」(1783年頃)ヨハン・ハインリヒ・フュースリ

「グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」(1783年頃)ヨハン・ハインリヒ・フュースリ

・276×317cm、カンヴァスに油彩

これは毎回行く度に見る作品「グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」。これまで常設展には何度も行っていますが、この作品が飾られなかったことってあっただろうか??本館から新館へと切り替わる部屋に飾っていて、常設展ではなくてはならない作品だと思います。何度見ても見飽きない!何度見ても圧倒される!!大きさもそうですが、何よりも絵の迫力は見物だと思います。

 

「陽を浴びるポプラ並木」(1891年)クロード・モネ

「陽を浴びるポプラ並木」(1891年)クロード・モネ

・93×73.5cm、カンヴァスに油彩

そしてこれは言わずと知れたクロード・モネの作品「陽を浴びるポプラ並木」。

国立西洋美術館にはモネの作品が多数所蔵されています。松方コレクションの由来となった人物松方氏はモネとの親交があった人物。モネの作品が多いのも当然なのです。もちろん代表シリーズ「睡蓮」もあります。

風景画は観る季節によって、印象も大きく違ってきます。四季折々の姿を見せてくれるのも風景画の魅力!冬ならモネの「雪のアルジャントゥイユ」、夏なら「セーヌ河の朝」と言った感じでしょうか。

 

 

番外編、宗教画を好きになるきっかけは”NMWA”でした。

「三連祭壇画:キリスト磔刑」(16世紀前半)ヨース・ファン・クレーフェ

「三連祭壇画:キリスト磔刑」(16世紀前半)ヨース・ファン・クレーフェ

 

先ほどちょっと触れましたが、国立西洋美術館は宗教画では日本屈指の量と質を誇っていると思っています。
ちなみにNMWAは”The National Museum of Western Art”の略。国立西洋美術館の事を指しています。

 

ところで、私が絵画を好きになるきっかけは、印象派絵画でした。それから現代アートと続いたのですが…、でも宗教画はちょっとハードルが高かったせいか、なかなか馴染めなかったのです。日本で宗教をなるとあまり良いイメージはない様ですし、何よりもキリスト教となるとほとんど接点がない。宗教画が親しみにくいのも仕方がないと言えば、当然だろうと思います。

 

「キリスト哀悼」(1637年)ホーファールト・フリンク

「キリスト哀悼」(1637年)ホーファールト・フリンク

 

実はこの国立西洋美術館は普段よく行く美術館です。もちろん「常設展」もちょくちょく通ったりしていました。上野という立地的だけに行きやすかったのもありますが、何より個人的に入りやすい美術館だったからです。

そんなわけで国立西洋美術館に行く度に、多くの宗教画と出会う事が出来たわけです。

 

毎回毎回宗教画と会っていたら、自然と親しみが出てくるのは当然の事!!気が付けば、宗教画というジャンルへの抵抗がなくなってきたのです。すると徐々に興味も湧いてきてしまったのです。

 

「ゲッセマネの祈り」(1570年頃)ジョルジョ・ヴァザーリ

「ゲッセマネの祈り」(1570年頃)ジョルジョ・ヴァザーリ

・143.5×127cm、カンヴァスに油彩

これはジョルジョ・ヴァザーリの「ゲッセマネの祈り」。

実は国立西洋美術館にはルーカス・クラーナハの「ゲッセマネの祈り」もあります。よく宗教画では描かれる題材なので、ぜひ覚えてほしい物語です。

キリストが「最後の晩餐」の後に、オリーヴ山の麓のゲッセマネに祈りを捧げに向かった時の話。キリストが祈りから戻ってみると、3人の弟子たちが傍らで眠りこけていたのです。

 

「悲しみの聖母」(1655年頃)カルロ・ドルチ

「悲しみの聖母」(1655年頃)カルロ・ドルチ

・82.5×67cm、カンヴァスに油彩

さて、このカルロ・ドルチの「悲しみの聖母」について、こんな興味深い調査結果が!

聖母の着ている青い衣にはラピスラズリから作られるウルトラマリンブルーが使用されている事が分かったのです。当時ラピスラズリは金と同じくらい高価だったそうです。そんな貴重で高価な材料を使い、贅沢にも表層だけでなく下地にも使っていたわけです。この結果を知って作品を改めて見ると、何か特別な思いを込めてこの聖母を描いたのかな?と思ってしまいますね。

 

最初あれだけ抵抗があったのに、何度も目にすれば抵抗もなくなり興味も湧いてくる。これって当然な流れだと思います。そんなわけで、私にとって宗教画を好きになってきたきっかけは国立西洋美術館(NMWA)だったのです。

 

国立西洋美術館

国立西洋美術館の「常設展」では、展示作品を入れ替えたりしています。たまに行くと、以前とは違った変化を観れたり出来るのです。そしてこれがまたオモシロかったりします。

実は「常設展」は見所満載!ぜひ「企画展」に行った際に、行ってみるのもイイと思います。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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