- 2022-5-28
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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最近何かと耳にする機会が多い、世界的現代アーティスト”ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)”。
常に作品を制作し続ける精力的な姿からは、まさか90歳を超えているとは思えない。しかも生存するアーティストの中で、最高落札額を記録したりと、私が思うに最近特に旬な画家の一人だろうと思います。日本でも展示の機会が増えていて、特に2022年は頻繁に見る機会がある当たり年!特に「ゲルハルト・リヒター展」は注目です!
「ゲルハルト・リヒター展」 ・東京都開催:2022年6月7日(火)~10月2日(日)まで、東京国立近代美術館にて |
ぜひ、気になる人は行ってみるとイイと思います。
ゲルハルト・リヒターの落札経緯と、私が思う魅力と見所!
遡れば今から何年前になるだろう?…
初めてリヒターの作品を見た時は、”何がそこまで凄いの!?”と思ったものでした。まるで絵具を伸ばしただけの絵に数十億という値が付くなんて!!今思えば本当に失礼な話ですよね。おそらく私と同じ感想を持った人もいると思います。
でも不思議な事に…
観ていると、味わいがあって実にイイ!のです。思うに、これこそリヒター作品の魅力であって、見所だと思っています。
ちなみに、最近のリヒターの高値落札の経緯はこちら!
・2012年…サザビーズで、抽象画「アブストラクト・ビルト」が約2132万ポンド(日本円で約27億円)で落札。
・2013年…「Domplatz,Mailand」が3700万ドル(日本円で43億円)で落札。
・2015年…「アブストラクト・ビルト(番号599)」が約3039万ポンドで落札。
それにしても凄い落札額です。
ゲルハルト・リヒターは”アートの可能性”を追求している画家だと思っていて、”挑戦的な作品”が多い印象です。そのため理解に苦しむのも当然だろうと思います。表現方法も多岐にわたり、シリーズだけでもこんなにあります。
・フォト・ペインティング:写真を忠実に描き、全体をぼかす手法
・カラー・チャート:様々な色のカラーチップを組み合わせる手法
・グレイ・ペインティング:カンヴァスを灰色で塗り、質感を表現する手法
・アブストラクト・ペインティング:スキージ(へら)で絵具を塗り、削っていく技法
・オイル・オン・フォト:写真に絵具を塗り置いていく表現手法
・アトラス:写真や新聞、雑誌の切り抜きを貼り付けていく作品
様々なシリーズがあるけれど、共通して言えるのは”どれもが表現方法の手段でしかない!”という事。
ちなみにこの中で私が好きなのは”アブストラクト・ペインティング”と”オイル・オン・フォト”。どちらも今までのアートにはない新鮮で、斬新さがあって、一見すると”何これ?”と思う代物。でも共に魅力溢れる作品シリーズなのです。
アブストラクト・ペインティングの魅力は”色彩の妙!”
特にアブストラクト・ペインティングは個人的に好きなシリーズです。スキージというヘラを使い豪快に絵の具を伸ばし、カンヴァスに絵具を何層にも塗り重ねていく。そしてナイフを使って削り、隠れた下層の色を露出させていく。複雑に絡みあった色彩と色味。筆で描いていく絵画では表現できない形や色の組み合わせ!しかも偶発的な要素も絡み合って、まさに”色彩の妙!”と言った感じでしょうか。
これはアブストラクト・ペインティング制作の動画です。大きなヘラを使いダイナミックに制作している様子は、なかなか見ごたえがあると思います。色味や変化の様子をじっくりと見ているだけでも面白いですね。ある意味偶発的に生まれた”色の機微”は、アブストラクト・ペインティングならではの醍醐味だと思っています。
確かに賛否の別れる作風ですが、新たな絵画を模索していく上では付きもの。私も最初は”?”と思ったりもしましたが、一度試しに見るに限ると思います。特に複雑に絡み合った色彩と質感は必見だと思います。
オイル・オン・フォトの魅力は”写真とアートのミスマッチ的面白さ!”
美しい写真、何気ない日常の写真に、突如として置かれた絵の具。この何とも言えないミスマッチ感が実にオモシロイ!このミスマッチ感はリヒターの代表作の一つ”オイル・オン・フォト”に表現される特徴です。
夢を見ている最中に、急に現実に戻されるというか…。
無数に展示された西洋画の中に、ポツンと1枚だけ飾られた水墨画の様な…。
そんな対極的な要素が1枚に集約されていると思っています。実は私が思うに写真と絵画って、ある意味対極的なものだと思っています。写真の技術に伴って、絵画の流れも変化していった経緯があるから。写実から印象、抽象と言った流れはその最たるもの。
そんな対極的要素を”芸術”として完成させた意味でも、リヒターの芸術観は凄い!と思えてきます。僕らでいう”写真にいたずら書きをする”を、芸術の域まで高めたわけですから。こんなアートもあってイイんだ!!僕もやってみたい!と思わせてくれます。
写真に絵具を塗った”オイル・オン・フォト”は、まさに私の好奇心をくすぐってくれるのです。100年前の時代だったらおそらく酷評だったろうけど、今の時代だからこそ受け入れられ、評価されるんでしょね。
ちなみにこの動画では、リヒターの様々なシリーズを見る事が出来ます。始まって50秒後には「オイル・オン・フォト」も登場します。
さて、私なりにリヒターの魅力について話してみましたが、まずはあなたの目で見てほしいと思います。特にリヒターの魅力は色彩の機微もそうですが、”質感”も大きな醍醐味だと思うからです。
これからリヒターを観に行くなら、ココ!!
最近ゲルハルト・リヒターの作品は各地で展示されています。特に2022年はリヒターのある意味ブレイク年!?。ここでは2022年に見れる企画展を挙げてみました。
「モネからリヒターへ - 新収蔵作品を中心に」 ・2022年4月9日(土)~9月6日(火)まで |
リヒターの作品「抽象絵画」が今展の大きな見所です!
参考)⇒ポーラ美術館で「20周年記念展 モネからリヒターへ」を観てきました。
「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」 ・東京都開催:2022年6月4日(土)~9月11日(日)まで |
リニューアルした国立西洋美術館の記念展。作品と美術館の変化を楽しむのもイイと思います。
参考)⇒国立西洋美術館リニューアル記念展「自然と人のダイアローグ」を観てきました。
「ゲルハルト・リヒター展」 ・東京都開催:2022年6月7日(火)~10月2日(日)まで、東京国立近代美術館にて |
「ゲルハルト・リヒター展」は、個人的に一番注目している企画展です。リヒター単独の作品展だけに、様々な作品シリーズが見れるのは超期待大!
ゲルハルト・リヒターの作品は写真や動画では、なかなか魅力って伝わらないと思っています。本物でしか味わえない”質感”も大きな見所だと思うからです。
今回簡単ですが、私なりに思うリヒターの魅力について書きましたが、ぜひ参考にしてもらえると幸いですね。そして美術館であなたなりの楽しさを発見してほしいと思います。芸術は”百聞は一見に如かず”です。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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