- 2022-12-5
- Impression (絵画展の感想)
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物体を梱包するって、一体何が芸術的なのだろう!?
先日21_21 DESIGN SIGHTで「クリストとジャンヌ=クロード”包まれた凱旋門”」を観てきました。
クリストとジャンヌ=クロードという名で様々な物体や建物を梱包するという活動で世界を驚かせてきた芸術家夫婦。以前からこの2人の梱包アートは芸術なのか?との問いに、僕自身も最初は疑問視していたけれど、今回「クリストとジャンヌ=クロード”包まれた凱旋門”」を観てきて、やっと私なりの答えが出た感じですね。
【 クリストとジャンヌ=クロード”包まれた凱旋門 】 ・期間:2022年6月13日~2023年2月12日まで |
さて、”凱旋門を包む”は、2021年の9月に現実化したアートプロジェクトです。私はネット上で知ったニュースでしたが、でもこのプロジェクトが実現した日には、すでにクリストとジャンヌ=クロードは亡くなっていたわけです。
2009年に妻ジャンヌ=クロードが亡くなり、その後も夫婦で夢見ていたあるプロジェクトに向けて、夫クリストは活動を続けていた。そして2020年についに現実か?と思いきや、知っての通り世界はコロナウイルス危機のため延期。2020年の5月にクリストは夢の実現を待たずして亡くなってしまったわけです。でもそれから2人の夢を継ぐ形で、やっと2021年9月に”凱旋門を包む”プロジェクトは現実化したわけです。
さて、ここで参考ですが、クリストについて説明したいと思います。
クリスト Christo 1935.6.13ー2020.5.31
ブルガリア出身のアメリカの美術家。本名クリスト・ジャヴァチェフ(Christo Javacheff)。ガブロヴォに生れる。1956年プラハでステージ・デザインを学んだにち、58年パリに出る。1964年以降アメリカに在住。パリの道路をドラム罐(かん)で”封鎖”したのち、様々な物体を”梱包”し、ついには、コロラド渓谷やオーストラリアのシドニー湾まで包んでしまった。物体を梱包し、その既成の意味を剥ぎとることで、人間と物体との関係を常に曖昧に保とうとする方法論である。
出典元:新潮「世界美術辞典」
本来なら、クリストとジャンヌ=クロードの2人が揃う形で実現するのが一番だっただろうけど、現実はそうはいかなかった。でも2人の夢と意思がしっかりと受け継がれていたという意味では、これもまた2人の大きな功績だろうと思います。
「Christo and Jeanne-claud」展で見えた私なりの答え!
さて、「クリストとジャンヌ=クロード”包まれた凱旋門”」展の内容にちょっと触れながら、私が観て導き出した答えについて話していこうと思います。ちょっとネタバレはありますが、映像重視の企画展なので、肝心なポイントは実際に行って見てほしいと思います。
この企画展では”梱包凱旋門”プロジェクトが現実化する過程がしっかりと映像として観れるのがポイント!もちろん写真や図、模型も見れますが、やっぱり制作工程の映像が一番の見所でしょうね。
25,000平米のブルーシルバーの生地と、周りには3,000メートルにもおよぶ赤いロープ。写真や動画で見ると、凱旋門に似たミニチュアの様な建物しか見えない。でも実は、正真正銘本物の梱包された凱旋門なわけです。
構想から完成に至るまでにかかった果てしない時間。それから、プロジェクトに関わった大勢の人数。確か1500人?くらいだったと思いますが、想像を上回る多さには正直言ってビックリですね。もちろん、凱旋門の彫刻をちゃんと保護したりと、環境整備や作品保護にも余念はないし、観客の安全まで気を配る徹底ぶり!それでも凱旋門を包むというプロジェクトの認可は相当難しいだろうし…。もし日本の国会議事堂を包むとなったら、果たして日本は許可をするのだろうか?と疑問も湧いたほど。
それから個人的に興味深かったのが、生地や赤いロープの制作工程には、想像を超えた驚きがあったのです。既存の物を使うのでなく、ちゃんと作っていたわけですね。まさか、ロープの強度までこだわっていたとは!!
そういえば、凱旋門を包んだであろう生地とロープが、実際に展示していたのも嬉しいサプライズでしたね。(間近で見れるって、ちょっと興奮してしまいます。^^)
さて、肝心の”梱包凱旋門”は芸術なのか?の問いについてですが、私は今回の企画展を観て、ハッキリと断言できます!これもちゃんとした芸術!だと。私的な言葉で言うなら、アートプロジェクトの方が適切ですが…。
長い年月と莫大な費用をかけて完成までこぎつける。でも梱包凱旋門のお披露目はたったの2週間ほどで終了。それでも600万人?というもの凄い観客を集めたビッグアート!おそらくこの2週間という期間しか見れないから。この時間的制約があるからこそ、多くの人が梱包凱旋門を観たくて来たというのもあるでしょう。新潮「世界美術辞典」では、人間と物体との関係を曖昧に保とうとするとあったけれど、私的にはこの2週間の期間しか見れないという制約された時間の価値。それからクリストとジャンヌ=クロード達による莫大な時間が、目には見えないけれど梱包凱旋門にしっかりと注ぎ込まれている。この時間的な価値が、この梱包凱旋門の芸術的価値だと思うのです。
それに私の思うアート論では、一人でも評価する人がいれば、その時点で芸術として成りえるという考えがあるわけで、その意味では”梱包凱旋門”も正真正銘れっきとした芸術に成りえるわけですね。
梱包凱旋門は芸術か?はたまた、芸術じゃないのか??
この答えと解釈は人それぞれだろうと思います。でもそれで良いわけです。だって、それが芸術を楽しむ醍醐味だから!出来る事なら、実際に観たい!というのはありますが、今となっては、まず不可能に近い願望でしょうけど…。
そんなわけで、この「クリストとジャンヌ=クロード”包まれた凱旋門”」は2023年の2月12日まで開催します。ぜひ、行ってみては!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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