サントリー美術館で、「京都・智積院の名宝」展を観てきました。

「京都・智積院の名宝」展 …サントリー美術館にて

 

サントリー美術館で開催の京都・智積院の名宝を観てきました。

 

今回は京都にある真言宗智山派の総本山”智積院(ちしゃくいん)”から貴重な仏具や美術、それから等伯の障壁画…と、貴重な作品たちが観れるという、ある意味貴重な展覧会です。本来なら京都でしか見れない作品が、東京の六本木ミッドタウンに観れる!って、実に嬉しい限りですね。

 

京都・智積院の名宝

・期間:2022年11月30日(水)~2023年1月22日(日)まで
・場所:サントリー美術館(六本木ミッドタウン)
・時間:10:00~18:00(金、土は10:00~20:00まで)※入館は閉館の30分前まで

 

 

サントリー美術館は日本の古美術を中心に所蔵しているのが特徴で、ひと昔前の日本の美術品や陶磁、漆工にガラス工芸品などが豊富に揃っているのが魅力。しかも館内の雰囲気も実に美しくオシャレ!で、立地も良い場所にあります。さらには、周辺に国立新美術館や21_21 DESIGN SIGHTもあるので、個人的に六本木で美術館に行く際は、決まって2か所くらいをハシゴするのが定番ですが…。^^

 

さて、前置きはさておき、早速展覧会のレビューや作品に触れていこうと思います。

 

 

都にある智積院の名宝は、何といっても長谷川派の作品たちになると思います。もちろん今回の一番の見所にもなっています。

「楓図」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

「楓図」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

・壁貼付4面(各)172.5×139.5、紙本金地著色。智積院蔵(京都)

「智積院の名宝」展のメイン作品がこの長谷川等伯の「楓図」になると思います。

「楓図」は屏風ではなく、障壁画というジャンルになります。思った以上に大きな作品で、スケール観や迫力は想像以上!実際に観てもらえば分かりますが、画面に収まり切れないダイナミックさは一番の醍醐味だろうと思います。楓の図太い幹とバッサリと切り取った大胆不敵な構図。それに金地を背景に鮮やかな色彩感は、美しいし装飾的でもあったりします。

 

「楓図(壁貼付、左2面)」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

「楓図(壁貼付、左2面)」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

・壁貼付左2面部(各)172.5×139.5、紙本金地著色。智積院蔵(京都)

 

「楓図(壁貼付、右2面)」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

「楓図(壁貼付、右2面)」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

・壁貼付右2面部(各)172.5×139.5、紙本金地著色。智積院蔵(京都)

 

実のところ長谷川派についていは詳しくないというのが本音でした。狩野派や琳派は多少なり分かってはいますが、長谷川派については、長谷川等伯を少し知っているくらいで、後はあまり知らないも同然と言った感じでしょうか。でもこうやって間近で作品を観てしまうと、気になって調べてしまうのは、美術好きの性なのだろうか?

 

「松に秋草図(右隻)」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

「松に秋草図(右隻)」(桃山時代、16世紀)長谷川等伯

・228.0×331.0、紙本金地著色、智積院蔵(京都)

そして「松に秋草図」も実にダイナミックな印象の作品です。元々等伯は狩野派を学んだ経験があります。狩野派の特徴でもある豪壮さ(堂々とした立派なさま)が表れている感じがしますね。でもそれ以上にダイナミックな要因は、等伯の内面にあるのかな?と思っています。等伯は一代で長谷川派を狩野派と同等なくらいの地位に押し上げた画家。狩野派を少なからずライバル視していたようで、そんな対抗心もあって画風も迫力を増したのかな?と思うわけです。

 

 

ここでちょっと個人的雑談になりますが…

実はコロナ前までは、ほぼ毎年の様に京都へ旅行をしていたものでした。実はこう見えても御朱印を集めたりもしていて、京都にある寺社の約半分は回ったかな?と思っています。でも、まだ智積院は行った事がなく、もちろん御朱印もなければ、実際に等伯の「楓図」も見た事もない。そんなわけで、実物を見れたのは私にとってはかなり貴重な体験だったわけです。まさか、東京の六本木で観れるなんて、全くの予想外でしたが…。

ちなみに余談ですが、私が京都に行く際は、ほぼ必ず行く定番の場所があります。京都駅からほど近い伏見稲荷大社と庭園が最高な場所”東福寺”です。特に東福寺の紅葉時期は本当に素敵なので、ぜひ行って観てほしいと思います。

 

 

一代で長谷川派を高みまで押し上げた等伯ですが、でも今となっては歴史的にあまり聞く事ない。等伯の画家としての凄さばかりが目立ってしまい、それ以降がほとんど続かなかったというのが事実らしいです。等伯には久蔵と宗宅、佐近、宗也の4人の子がいたのですが、一番才能があったと言われた久蔵は早くして亡くなってしまいます。その後宗宅が継ぎますが、等伯の亡くなった翌年に死去。他2人もパッとした活躍がなかったのです。

 

「桜図(壁貼付、左2面)」(桃山時代、16世紀)長谷川久蔵

「桜図(壁貼付、左2面)」(桃山時代、16世紀)長谷川久蔵

・壁貼付右2面部(各)172.5×139.5、紙本金地著色。智積院蔵(京都)

今回は長男久蔵の作品「桜図」が展示しているのもポイント!

こちらも等伯の「楓図」に、負けず劣らずダイナミックさが特徴的!しっかりと等伯らしさを受け継いでいるのかな?と思ってしまいます。そして個人的に注目してほしいのが桜の花。胡紛が盛られていて、花弁がより立体的に表現されているのです。やまと絵の装飾技法をしっかりと学んでいる点が伺える作品と言われています。ぜひ、この盛られた感じは実物で見てほしいポイントです。ルーペがあるとよりイイと思います。(貸出もしている様です。)

等伯にとっては、長男久蔵に長谷川派を受け継いで欲しかったという願いはあったのだろうけど、悲しいかな…、26歳という若さでこの世を去ってしまうのです。

もし等伯の後、長谷川派がしっかりと継がれていたら、もしかしたら日本画の歴史も大きく変わっていたかもしれませんね。

 

 

て「智積院の名宝」展で、個人的に注目して欲しい作品が他にもあります。

・「朝顔図土田麦僊(ばくせん)
…竹内栖鳳に師事した事もあり、シンプルでデザイン的なのは栖鳳にも通じる部分でしょうか。

・「松桜柳図(昭和33年)堂本印象
…画面を横切るダイナミックな柳の幹は、「楓図」や「桜図」を意識したからだと言われています。作風は現代的でデフォルメされていますが、構図は等伯や久蔵と共通する部分もある。ぜひ比べて見るのも面白いと思います。

 

 

まさか、東京のミッドタウンで京都にある智積院のお宝の数々が観れるとは!

個人的に今回の「京都・智積院の名宝」展は、前々から気になっていた企画展でした。長谷川派の作品が観れるのが大きな理由ですが、元々寺社の作品はなかなか美術館等に貸し出す機会がないから。そういう意味でも東京で観れるって、やっぱり魅力だと思いませんか?

どちらにせよ、後々京都に行った際に、智積院へ行って見ようと思っているわけですが…^^。

 

「京都・智積院の名宝」展は、2023年1月22日まで開催します。ぜひ六本木に行った際は、立ち寄ってはいかがでしょうか!?

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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