- 2016-5-5
- Artwork (芸術作品), Impression (絵画展の感想)
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”ルノワールが描きたい女性って?”
…どんな女性が理想的だったんだろう?
ルノワールは女性の人物画を数多く描いています。
特に晩年になると
いっそう女性の裸婦画に熱心だったといいます。
この「ルノワール展」後半になると、
女性を描いた人物画や裸婦画がテーマになってくるのです。
ルノワールは絵画に”美”を持ち込んでいた事は有名で、
”芸術は綺麗なものでなければならない!”
この価値観が根底にあったからだと言われています。
という事は、
ルノワールの描いた女性画を見れば、
ルノワールはどんな女性を理想としていたのか?
もしくはどんな女性を綺麗と見ていたのか?
つまりは美に対する価値観が分かると思うのです。
・・・

「陽光のなかの裸婦」(1876年)ピエール=オーギュスト・ルノワール
ルノワール「陽光のなかの裸婦」(1876年)
これはルノワールが35歳頃に描いたもので、
第2回印象派展で出品された作品でした。
(この時のタイトルは”エチュード”)
影に沈んだ女性の身体は青みを帯びていて、
ところどころ木漏れ日で照らされた部分は本来の肌色を映している。
素早い筆のタッチで描かれていて、
ルノワールが夢中で描いていた光景が浮かんでくる様ですね。
もちろん当時の印象派展では、
”美しい裸婦”と評する意見もあれば、
対して”腐敗した肉体”といった辛口評価もあったそうです。
印象派誕生の初期の頃は、
この様な作品はなかなか受け入れられなかったわけです。
・・・

「ガブリエルとジャン」(1895年)ピエール=オーギュスト・ルノワール
ルノワール「ガブリエルとジャン」(1895年)
これは1895年
つまりルノワールが50歳中ごろの作品。
35歳頃の「陽光のなかの裸婦」と比べて見ると、
この「ガブリエルとジャン」はより柔らかさが表れている感じですね。
荒々しいタッチから柔らかく軽やかなタッチに…
優しさと温かみがより増してきている様ですよね!!
まさにルノワールらしい作品だと思います。
ちなみにここで描かれているのが
ルノワール家の子供の世話役をしていた”ガブリエル・ルナール”という女性。
それが徐々にモデルとして描かれる事が多くなり、
ルノワールの晩年までお気に入りのモデルとなっていたといいます。

「横たわる裸婦(ガブリエル)」(1906年頃)ピエール=オーギュスト・ルノワール
モデルとして描かれた回数は約200回ほどだったそうで、
よっぽどルノワールにとっての好まれていた女性だったわけです。
さてここで??と思いませんか?
もちろんルノワールには妻もいて、
描くなら妻をモデルにしても良かったはず。
でも世話役だったガブリエルを描くって…
これには”何か意味があるのでは?”
そう思いませんか??
私が思うにルノワールにとって
ガブリエルは理想的な女性だったのでは?と思うのです。
実は画商”アンブロワーズ・ヴォラール”が言うには、
”光をよく吸い込む肌を持っていること”が求められたと。
つまりは
透き通る様な美しい肌を持った女性という事だろうか?
光と融合した女性の綺麗な肌という事なのかも…

「バラを持つガブリエル」(1911年)ピエール=オーギュスト・ルノワール
ルノワール「バラを持つガブリエル」(1911年)
褐色の髪とふくよかな体つきのガブリエルは、
まさにルノワールの”女性美”として最適だったのかもしれないですね。
そんな肉付きの良い丸みを帯びた体つきと、
光を吸い込む透き通る様な美しい肌の女性。
次第にルノワールが”裸婦画”を描きたくなるのも、
それは自然の成り行きだったのかもしれないですね。

「大きな裸婦(クッションにもたれる裸婦)」(1907年)ピエール=オーギュスト・ルノワール
ルノワールの女性の裸婦画は、
本当に美しいとしか言いようがなくて、
特に肌の描写は実に美しい!!のです。
実はルノワールが美しい裸婦画を描く方法に、
シルバーホワイトを主体とした下地に、
薄く溶いた透明な絵具を何層にも塗り重ねる”
グラッシュ”という技法を使ったと言います。
これによって光沢感や深みが増してくると言います。
しかも下地の効果でより光が溶け込んだ光沢を表現していた。
ルノワールの美しい女性を描く事へのこだわり
そして女性美への強い追求が感じられませんか??

「浴女たち」(1918‐1919年)ピエール=オーギュスト・ルノワール
ピエール=オーギュスト・ルノワール「浴女たち」(1918‐1919年)
そして最晩年になると、
よりヴォリュームのある身体と
まるでバラ色の様な肌の女性を描くようになってきます。
なぜルノワールは赤みの肌の女性を描くようになったのか?
もしかしたらバラの様に赤みのある輝く肌に、
人間の生命力を見出していたのかもしれないですね。
ルノワールは自分に迫ってくる死に対して、
絵画に”生(生命力)”を込めていたのかもしれませんね。
ぜひあなたもルノワールの女性画から、
何かしらの”美”を見出だしてほしいと思います。
”裸婦の絵はまさしくきれいでなければならない。”
ルノワールの裸婦はなぜか色気やエロさといよりも、
女性らしい”美”が前面に出ている様に感じるのは、
こういった理由があるからなんでしょうね。
ルノワールは晩年リウマチの病気で苦しんだそうですが、
それでも紐で縛りつけながら絵を描き続けていたのです。
※you tubeでその様な映像を見る事が出来ます。
⇒『Pierre Auguste Renoir – Filmed Painting at Home (1919)』
この美しいものを描く事への執着を、
ぜひルノワールの作品を通して感じ取ってみてはどうでしょう?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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