”上手い絵、下手な絵”の違いを、有名画家の作品から探ってみました!

上手い絵、下手な絵

 

世間一般に言われている”上手い絵下手な絵”。

 

改めて考えてみると、上手いと下手の違いって何だろう?って思ってしまいます。一体どんな基準で評価しているんだろう?考えれば考えるほど、その答えは見えてこないのです。

 

さて、一般的に専門的な教育を受けていれば、それなりに上手い絵を描けると言われています。もちろんそれはある程度正しいだろうと思います。実際画家の多くは、専門的な教育を受けたり修行していたからです。

普段から絵画作品を観ている私からすると、上手い下手の違いを説明するには名画を比べるのが一番分かりやすいと思います。プロの上手い絵を基準にしてみると、何が欠けていてどんな違いがあるかが見えてくるからです。

 

今回は皆が知っている有名画家3人の作品を挙げながら、私的な視点で上手いと下手の違いを探ってみました。するとこんな面白い結論に達したのです!

 

 

アンリ・ルソーの絵画は本当に下手なの?

この絵は上手いの?下手なの??

下手な画家の代名詞にもなっているアンリ・ルソー(Henri Rousseau)ですが、本当に絵が下手なのだろうか??

実際に”下手な画家”で検索すると、かなり高い確率でルソーの名が挙がってきます。確かに私自身ルソーの作品はよく目にしますが、上手いかと言われると、正直言って微妙な感じだったりします。だからと言って、下手な画家と言うのは…、ちょっと失礼だろう個人的には思ってしまうわけです。少なからずルソーは名も知られていますし、事実作品も売買されているわけですから。

 

本来専門的な教育を受けていれば、それなりに上手い絵を描けると言われています。でもこのアンリ・ルソーについて言えば、学校に通わず自己流で絵を描いていました。つまり専門の教育を受けていなかったのです。しかも展覧会では作品が嘲笑の的だったというエピソードまであるくらいです。ここまで話を聞く限り、アンリ・ルソーという画家は絵が下手なのだろうと思うでしょう。

 

では本当のところ”絵が上手いのか、下手なのか?”

アンリ・ルソーの画力を判断するには、上手い画家の作品と比べるのが一番手っ取り早いと思います。今回上手い画家としてアングルの作品を挙げてみました。

「奴隷のいるオダリスク」(1842年)ドミニク・アングル

「奴隷のいるオダリスク」(1842年)ドミニク・アングル

・76×105cm、カンヴァスに油彩、ウォルターズ美術館所蔵(アメリカ)

これは新古典主義を代表するフランスの画家ドミニク・アングル(Dominique Ingres)の作品。個人的にアングルは好きで、西洋絵画史ではかなり重要な画家です。事実多くの画家に影響を与えていて、プロが認めるプロの画家なわけです。

今回は絵が上手い画家として挙げてみましたが、まるで絵のお手本と言っても過言ではないと思います。細かな装飾や女性の美しい肌の色遣い。立体的で質感も実に絶賛!正直言って文句を言おうにも、付け所がないですよね。

 

さてアングルと比べて、アンリ・ルソーの絵はどうでしょう?

「私自身、肖像=風景」(1890年)アンリ・ルソー

「私自身、肖像=風景」(1890年)アンリ・ルソー

 

さて、あなたはどう思いますか!?

よ~く見ると違和感や不自然さがあちこちで見受けられると思います。例えばルソー本人が異常なほどデカすぎる。遠近感や全体とのバランスもあったもんじゃないわけです。確かに画面の手前にルソーが立っているので、多少大きく描かれるのは普通だろうけど、それにしてもちょっと大きすぎる感じです。しかも立ち姿もまるで宙に浮いている様に見えるし…。根本的にルソーの技術的な低さが見られますね!

確かに味があると言えば味がある描き方だけれど…。でも普通の感覚で見たら、下手な部類になるだろうと思います。

 

「フラミンゴ」(1907年)アンリ・ルソー

「フラミンゴ」(1907年)アンリ・ルソー

 

これも同じくツッコミどころ満載の作品です。手前のフラミンゴよりも、異常なほど大きすぎる花の大きさ。どういう意図で描いたのかわからないけれど、大きさのバランスや距離感が可笑しなことになっているのです。それに細密さもないし写実さもないし、何よりも遠くに見える木の描き方が幼稚にも見えます。確かに作品を見る限り、丁寧に描こうとしているのは読み取れますが、でも目の前の対象物をそのまま正確に描く技術はあまりない様に思えるのです。

ここまで作品を見ると、ルソーが下手と言われる理由か分かる気がしませんか?

 

ルソーの絵から判断した結論!

ここでCheck!
一般的に絵の上手い下手の違いは、当たり前として画力がない!事だと思うのです。

目の前の対象物や風景をありのまま正確に描けるのか?全体のバランスや遠近感など当たり前としての技法、技術があるのか?アンリ・ルソーは画家として当たり前の画力がなかった様に思うのです。アンリ・ルソーが下手な画家と言われる理由は、まさにここにあると思うのです!

でも個人的にアンリ・ルソーの絵は結構好きだったりします。この独創的というか個性的な絵は味があってとても好きです!私がアンリ・ルソーに惹かれる理由は、彼ならではの独創的世界観だろうと思うのです。

 

ピート・モンドリアンのコンポジションは上手い?下手??

抽象画

お次は抽象画を代表するオランダの画家ピート・モンドリアンです。

 

現在このモンドリアンは抽象画の創始者と言われるほどで、あのカンディンスキーと並び称されるほど有名な画家。代表作は直線と三原色で構成されたコンポジション」は特に有名だと思います。

 

「赤・青・黄のコンポジション」(1930年)ピート・モンドリアン

「赤・青・黄のコンポジション」(1930年)ピート・モンドリアン

 

これはモンドリアンの”コンポジション”シリーズを代表する一枚。

極限まで単純化された直線と色の組み合わせ。赤、青、黄色の最小限の色で表現された実にシンプルな作品です。まさに三原色ですね!観る限り遠近感も写実さもないし、ましてや立体的でもない。構図というかデザインです。あなたはこの作品をどう思いますか!?

上手いと思いますか?それとも下手?

 

「洗濯物と農家の家」(1897年頃)ピート・モンドリアン

「洗濯物と農家の家」(1897年頃)ピート・モンドリアン

 

実はモンドリアンは元々は伝統的な絵画の教育を受けていました。もちろんちゃんとした作品も数多く描いています。それが徐々に抽象へと変化していくのです。”リアリティの追求!”そのためにモンドリアンは線と色だけで自由な表現を試みていきます。そして行き付いたのがこの「コンポジション」シリーズだったのです。

 

さてここまで見てきて思うのは、芸術の世界では絵の上手さがすべてではなさそうですね。モンドリアンの様に元々専門の教育を受け上手い作品を描いていたのに、ある時から一変して抽象的な作品や、誰でも描けそうな作品を描いた画家は結構います。例えば日本だと岡本太郎もその一人だと思います。

 

モンドリアンの絵から判断した結論!

ここでCheck!
私たち素人からすれば、プロの画家は上手い絵を描いて当然という考えはあると思います。でもプロの画家は、私たちに常識の一歩先を進んでいる様です。限られた線と色で人や物を表現する。抽象画は簡単なようで、実は超難しい事なのかもしれない!多くの画家は高みを目指して抽象画を描いていたのかも?と私は思ってますが、あなたはどう思いますか?

ここまでを見ると、20世紀以降は絵の上手いや下手ってあまり関係ないと思うのです。

 

 

現代アーティスト”バスキア”の作品はどう評価すべき!?

スプレーアート

さて最後に紹介するのが、最近何かと話題に挙がる芸術家バスキアです。

本名はジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)
1960年にニューヨークのブルックリンで生まれたアメリカのアーティスト。元々壁にスプレーペインティングをしていたのきっかけで、それが評価され個展を開くまでに!さらには現代アートの巨匠アンディ・ウォーホルとも親交があって、共に作品を作った事もあるアーティストです。

 

残念ながら薬物で27歳という若さで亡くなってしまいましたが、ストリートアートを芸術の域にまで押し上げたという意味では、バスキアのアーティストとしての貢献度は計り知れないと思います。そんな現代アーティストのバスキアの作品はどうでしょう?上手いのか下手なのか??

 

バスキアの図録

さて、あなたは上手いと思いますか?それとも下手??

正直言って、私は答えに迷ってしまいます。というのも、落書きの様に見えなくもないけれど、でもプロの画家たちからは決して描けない!と言われるほどだったから。ある意味画家の個性が前面に出過ぎているからです。
※上の写真は以前購入したバスキアの図録です。

 

バスキアは元ストリートアーティスでした。専門の学校で学んだというわけではないのです。普通の画家が描くようなデッサンや油絵を描けと言われても、おそらく描けないだろうと思います。私たちの常識から考えると、バスキアはプロの画家が当たり前として出来る事が出来ない時点で、下手な画家の部類に入ると思います。

でもバスキアは皆が驚くほどの値で作品が売れて、評価されている画家の一人!記憶に新しいと思いますが、2017年に日本の前澤友作さんが123億円で落札したニュースがありましたよね!確か購入理由は作品のパワフルさ!だったと思いますが、現代アートにおいては絵の上手い下手はあまり関係ないのが分かると思います。

 

バスキアの絵から判断した結論!

ここでCheck!
最近の現代アートの世界では、上手い下手では説明がつかない事ばかりです。描かれた作品に込められたメッセージ性やパワー、生命力など…。作品を見て私たちがどう感じるのか?おそらくこれに尽きるんじゃないだろうか!?良くも悪くも見る側に委ねられていると思うのです。

確かに絵に上手い下手はあると思います。でも現在アートを語る上では、上手い下手より何を描いたかが重要だと思うのです。

 

私的にまとめてみました!

確かに一般社会では上手い下手の違いは出てくると思います。例えばバランスや構図、遠近感、対象物を写実的に描ければ、その時点で上手い絵の部類に入ると思います。でも芸術の世界では、特に20世紀以降になるとちょっと違ってきます。プロの画家なら上手く描けて当たり前!!プロはそこから一歩先を走っています。限られた線や色で人物や物をいかにして表現するか?単純化された形で、すべてを表現しようとしたわけです。私たちはそんな単純化された作品から、一体何を感じられるのか??

こう考えると芸術って本当に奥が深いですよね!!^^

 

最後に締めの一言として…
僕らは目の前の作品を見て、何かしら感じる事が大事!!”だと思っています。

これこそ絵画の愉しみ方で醍醐味でもあると私は思うのですが、あなたはどう思いますか??

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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