- 2023-10-8
- Impression (絵画展の感想)
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先日、国立西洋美術館で、パリ ポンピドゥーセンター所蔵『キュビスム展 - 美の革命』を観てきました。
巷では”50年ぶりの大キュビスム展!”と言われているけれど、一体何がそこまで凄いのだろう?
おそらく、こう思っている人も少なからずいると思います。
今回は自称”美術通”の私による感想や見所、そして「キュビスム展」を思う存分楽しむための鑑賞ポイント!について話していきたいと思います。
これから行こうと考えている方もいるでしょうから、参考にしてもらえると嬉しいですね。
東京⇒京都と巡回で開催するので、ぜひ!
【 目次 】 ・「キュビスム展 -美の革命」の感想レビュー! |
「キュビスム展 -美の革命」の感想レビュー!
まず「キュビスム展」の感想を端的に表現するなら、”思った以上に充実しているな~”と。
ピカソやジョルジュ・ブラックは当然として、個人的に好きなシャガールやクプカ、ロベール・ドローネーと勢ぞろいしているのがまず嬉しい!
多くの人はピカソなど、有名な画家ばかりに目が向きがちですが、実は”キュビスム”を語る上で、それ以外の画家も超重要!だと思っています。
何せ、キュビスムはかなり広く奥が深いジャンルだから。
代表する画家だけの作品展示だけでは、本当に勿体ないのです。シュークリームで例えるなら、表面の生地だけを食べる様なものですから。(この例えで分かってもらえたかな?)
構成としては、前半はキュビスムの誕生から始まり、最終的には抽象画へと至ります。
キュビスムの移り変わりを”流れ”で観れるのが、個人的に一番の醍醐味だと思っています。
というわけで、会場に入った瞬間”セザンヌの作品”がお出迎えしてくれるわけですね!
一般的な認識として、ポール・セザンヌ(Paul Cezanne)はポスト印象派の画家と思われていますが、キュビスムを語る上では、絶対に外せない画家です。
俗に”近代絵画の父”と呼ばれているくらいですから。
上のジョルジュ・ブラック(Georges Braque)の作品を見ても分かりますが、どことなく、セザンヌとダブりませんか??明らかに影響を受けているのが分かると思います。
ただ個人的にちょっと残念だったのが…
今回展示されたセザンヌの作品は「4人の水浴の女たち」や「海辺に立つブルターニュの少女たち」などでした。
欲を言えば「サント=ヴィクトワール山」を展示して欲しかったな~と。
・70×92cm、カンヴァスに油彩、フィラデルフィア美術館所蔵
※↑この作品は「キュビスム展」では展示されません。参考として載せてみました。
どうでしょう?
面と面を組み合わせた画風は、セザンヌと通じる感じがしませんか?
”山”を題材にした「サント=ヴィクトワール山」を見れば、キュビスムの誕生にセザンヌが外せない理由が分かってもらたかと。
「静物」(1910‐1911年)ジョルジュ・ブラック ※「キュビスム展 美の革命」より
以前から思っていた事ですが、ジョルジュ・ブラックの作品は、モノクロが多いな~と。”名前がブラックだから!?”と、思った程です。
確かにキュビスムを語る上では重要な画家ですが、如何せん私の様に明るい作風が好きな人間にとっては、ちょっと…という感じです。
ロベール・ドローネーが”明るいキュビスム”を描こうと思った理由も、何となく分かる気がしますね。
今回の「キュビスム展」では、随所に関係資料も数多く展示されています。
↑上の様に、風刺を効かせた挿絵は見ているだけでもオモシロイですね。
約100年くらい前の資料ですが、特に左奥に見える挿絵は妙にアート性を感じてしまいます。一枚くらいは家に飾ってもオシャレかな~と思ってしまいます。
・130×165cm、カンヴァスに油彩、ポンピドゥーセンター所蔵
ピカソやブラックのモノクロの世界から、徐々に色味が鮮やかになってきた感じがしませんか?
キュビスムの広がりを感じさせてくれる瞬間ですね。
ちなみにロジェ・ド・ラ・フレネー(Roger de La Fresnaye)は、1885ー1925に生きたフランスの画家。
戦争による後遺症か?体が弱かったためか、40歳という若さで亡くなってしまったのが何とも残念。
画風的には鮮やかで、面白い作品を描いているというのに…。
もう少し長生きしていたら、もっと名を残せただろうと思っています。
・267×406cm、カンヴァスに油彩、ポンピドゥーセンター所蔵
そして中盤辺りに姿を現した作品が、目玉作品”ロベール・ドローネー(Robert Delaunay)”の代表作「パリ市(The City of Paris)」という訳です。
画風的にはジョルジュ・ブラックに似ている感じもしますが、でも色彩観は全然違いますよね。
キュビスム的な画風と、鮮やかで明るい色彩観!これこそ、ロベール・ドローネーの特徴で、私が思う最大の魅力だと思っています。(私個人の主観ですが、明るい作品は、純粋に観ていてイイものですね^^)
(参考記事)
・キュビスムと抽象絵画の架け橋的な画家”ロベール・ドローネー”を解説!
・ロベール・ドローネーの「パリ市 / エッフェル塔」が純粋にイイ!と思う件
そしてロベール・ドローネーの妻ソニア・ドローネー(Sonia Delaunay)の作品も展示しています。
当然ながら画風は明るく鮮やかですが、でもここまでくるとキュビスムと言うよりも抽象的な感じもある。事実ドローネー夫婦は抽象画の先駆者とも言われているので、抽象的に感じるのは当然と言えば当然でしょうか。
こうやって”流れ”で見ると、キュビスムも抽象画も突発的に誕生したものではない!のが分かると思います。
きっかけがあり、そして誕生した。つまり”すべては繋がっている”という訳ですね。こういった発見が味わえるのも、この「キュビスム展」の最大の醍醐味だと思います。
「挨拶」(1912年)フランティシェク・クプカ ※「キュビスム展 美の革命」より
これはフランティシェク・クプカ(Frantisek Kupka)の「挨拶」という作品。
理論じゃなく、純粋に観ていてイイと感じる。今回の「キュビスム展」で特に惹かれた一枚です。
そしてこの流れで、マルク・シャガールの作品が現れてきました。
今回シャガールの作品は「ロシアとロバとその他のものに」、「婚礼」それから「白い襟のベラ」、「キュビスムの風景」など、計5点が展示されていました。
やっぱり好きな画家、好きな画風に囲まれるのはイイものですね。^^中でも「墓地」という作品は、一目見た瞬間惹かれてしまいました。
「墓地」(1917年)マルク・シャガール ※「キュビスム展 美の革命」より
空の描写がオーローラというか、プリズムの様にも見える。純粋に素敵な絵だな~と。
でも、すぐに作品名を見るや否や…
「墓地」!
このギャップにはしてやられましたね。
シャガールは戦争や愛をテーマにした作品が多いけれど、まさか一目ぼれした作品が「墓地」というタイトルだったとは。
カンヴァスの下に描かれているのは墓石の数々ですから、言われてみれば当然と言えば当然でしょうか。
それから、最後にもう一つ挙げておきたい作品があります。
レオポルト・シュルヴァージュ(Leopold Survage )の「エッティンゲン男爵夫人」という作品です。
建築的な感じがあって、静物的で装飾的な要素もある。そして物陰から見える人物のシルエットがまた洒落ている。この単なるキュビスムには収まらない複合的な画風は面白いしの一言ですね。
私の言葉で表現するなら、”空間的キュビスム”という感じになるでしょうか。こちらもぜひ忘れずに観てほしい作品です。
キュビスムはピカソ、ブラックだけじゃない!
そこから派生したキュビスムがまたオモシロイ!!
実は会場内で、隣の人が”やっぱりピカソだね!”と言っている人がいましたが…。
否!ここからが面白いのに!と。
もちろん絵画の好みや解釈は、人それぞれだと思います。
でもキュビスムを語る上で、ピカソやブラックだけで終わってほしくはない。素人の私が言うのもなんですが、それ以外のキュビスムが物凄く広く深い!からです。
というわけで、今回の「ポンピドゥーセンター所蔵 キュビスム展」は、 かなり充実した内容になっていると思うわけです。”50年ぶりの大キュビスム展”と謳うだけの事はありますね。
鑑賞のポイントは? コレを押さえるだけで、面白さも倍増!
「ポンピドゥーセンター所蔵 キュビスム展』は、”50年ぶりの大キュビスム展!”を大々的に謳われるほどです。
せっかく観に行くなら、思う存分楽しみたいですよね。
それにはポイントを押さえて鑑賞するのが、まず大事かと思っています。
鑑賞のポイント!、キュビスムを”流れ”で観れる!!
先ほどの感想レビューの時にも話しましたが、「キュビスム」は物凄く広く奥の深いジャンルです。だからピカソだけで終わってほしくはない。
それ以外の画家たちにも目を向けて、そして全体を”流れ”で観てほしいのです。
今回の様に「キュビスム」全体を取り上げた展覧会は、なかなかありませんでした。これまで”点”で展示していたものが、ついに繋がり”線”になったというわけです。
これが自称”絵画通”の私が思う最大の鑑賞ポイントです。
例えば、以下の様な鑑賞はどうでしょう!
・セザンヌとジョルジュ・ブラックの作品を見比べる。
⇒どういった流れで、キュビスムが誕生したのか?の経緯が分かるかもしれませんね。
・ブラックやピカソのキュビスムと、ロベール・ドローネーの作品を見比べる。
⇒キュビスムの広がりと、その後の抽象画への変化の経緯が分かるかもしれません。
歴史もそうですが、今回の「キュビスム展」を”流れ”で観るとよりオモシロくなるかと思います。
もちろん、普通に鑑賞するだけでも充分!です。
キュビスムや抽象画は、理論云々ではなく感性や感覚に頼る部分が大きいと思うので、純粋に絵を観て、この絵ってイイな~と思うだけでも充分!!
恋愛でもそうですが、一目惚れの確率ってなかなかないですしね。あなたが一目惚れする作品と出会えたら、それだけで芸術鑑賞は大成功!と言っても過言ではないのです。
まずは、あなたが惹かれる一枚を見つけてみましょう!
「ポンピドゥーセンター所蔵 キュビスム展」の開催概要
正式名「パリ ポンピドゥーセンター所蔵キュビスム展 ― 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」
”50年ぶりの大キュビスム展!”と言われる程ですから、興味のある人も多いだろうと思います。
私は”東京展(国立西洋美術館開催)”に行ってきたのですが、その後は”京都”でも巡回開催します。
気にある人は、日程をチェックして足を運んでみるのもイイかと思います。
東京展の開催概要について
【 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 】※東京開催 ・会期:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日) ・時間:9:30~17:30(毎週金曜・土曜は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで ・観覧料(当日券):一般は2,200円、大学生は1,400円、高校生は1,000円(税込み) |
国立西洋美術館の場所はご存知の人も多いと思いますが、一応載せておきました。
京都展の開催概要について
【 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 】※京都開催 ・会期:2024年3月20日(水・祝)~7月7日(日) |
それでは、楽しい美術館TIMEを!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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