- 2023-10-8
- Impression (絵画展の感想)
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先日、国立西洋美術館で「ポンピドゥーセンター所蔵 キュビスム展 ー 美の革命」を観てきました。
巷では”50年ぶりの大キュビスム展!”と言われているけれど、一体何がそこまで凄いの?と。
おそらく、こう思っている人も少なからずいると思います。
今回は自称”美術通”の私による感想や見所、そして「キュビスム展」の凄さについて話していこうと思います。
【 目次 】 ・「ポンピドゥーセンター所蔵 キュビスム展」の開催概要 |
また鑑賞のポイントは?では、楽しむためのポイントについても書いています。
これから行こうと考えている方もいるでしょうから、参考にしてもらえると嬉しいですね。
東京⇒京都と巡回で開催するので、ぜひ!
「ポンピドゥーセンター所蔵 キュビスム展」の開催概要
正式名「パリ ポンピドゥーセンター所蔵キュビスム展 ― 美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」
さすがに長くなるので、ここでは『キュビスム展』で統一させてもらいます。
とにかく展覧会名を見た時点で、気になる画家をチラホラ見かけるかと思います。
ちなみに私は、ドローネーとシャガールに惹かれてしまった!というわけで、早速観に行ってしまったわけです。
東京展の開催概要について
【 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 】※東京開催 ・会期:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日) ・時間:9:30~17:30(毎週金曜・土曜は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで ・観覧料(当日券):一般は2,200円、大学生は1,400円、高校生は1,000円(税込み) |
東京開催となる国立西洋美術館ですが、場所についてはご存知の人も多いと思いますが、一応載せておきました。
そして東京展の後は、京都でも開催するので、ぜひ日程はチェックしておきましょう!
【 パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 】※京都開催 ・会期:2024年3月20日(水・祝)~7月7日(日) |
「キュビスム展 -美の革命」の感想レビュー!
まず「キュビスム展」を一言で言うなら、”思った以上に充実しているな~”というのが本音です。
ピカソやジョルジュ・ブラックは当然として、個人的に好きなシャガールやクプカ、それからロベール・ドローネーもそれなりに観れたのが良かったですね。
多くの場合ピカソなど、有名な画家ばかりにスポットライトが当たりがちですが、でも「キュビスム」を語る上では、それ以外の画家も超重要だと思っています。そういった意味でも、かなり充実度が高かったな~という印象です。
構成としては、前半はキュビスムの誕生から始まり、最終的には抽象画へと至る。キュビスムの移り変わりを”流れ”で観れるのが個人的に嬉しいポイントです。
そんなわけで、会場に入った瞬間”なぜセザンヌの作品が?”と疑問に思った人もいるでしょうね。
知っている人も多いと思いますが、ポール・セザンヌ(Paul Cezanne)は一般的にポスト印象派の画家です。
でも一方では、”近代絵画の父”とも呼ばれています。キュビスムを語る上でも、セザンヌは絶対に外せない画家なわけです。
上のジョルジュ・ブラックの作品を見ても分かりますが、どことなくセザンヌの画風とダブりませんか??明らかに影響を受けているのが分かると思います。
ただ、個人的にちょっと残念だったのが…、今回展示されたセザンヌの作品は「4人の水浴の女たち」や「海辺に立つブルターニュの少女たち」などでした。
欲を言えば「サント=ヴィクトワール山」を展示して欲しかったな~と。

「サント=ヴィクトワール山」(1904年)ポール・セザンヌ
・70×92cm、カンヴァスに油彩、フィラデルフィア美術館所蔵
※↑この作品は「キュビスム展」では展示されません。参考として載せてみました。
キュビスムの画風は面と面を組み合わせた感じなので、”山”を題材にした作品の方がよりしっくりくると思っています。上の「サント=ヴィクトワール山」を見れば、私の言った意味も分かってもらえるかと。
まさにキュビスムの誕生を感じられると思います。
「静物」(1910‐1911年)ジョルジュ・ブラック ※「キュビスム展 美の革命」より
以前から思っていた事ですが、ジョルジュ・ブラックの作品はモノクロが多いな~と。”名前がブラックだから!?”と思った事もあるくらいですから。
確かにキュビスムを語る上では重要な画家ですが、如何せん私の様に明るい作風が好きな人間にとっては、ちょっと…という感じです。
ロベール・ドローネーが”明るいキュビスム”を描こうと思った経緯も、何となく分かる気がしますね。
随所に展示される関係資料の数々。
風刺を効かせた挿絵は見ているだけでもオモシロイですね。
約100年くらい前の資料ですが、特に左奥に見える挿絵は妙にアート性を感じてしまいます。一枚くらいは家に飾ってもオシャレかな~と思ってしまいます。

「腰かける男性」(1913‐1914年)ロジェ・ド・ラ・フレネー
・130×165cm、カンヴァスに油彩、ポンピドゥーセンター所蔵
ピカソやブラックのモノクロの世界から、徐々に色味が鮮やかになってきた感じがしませんか?
キュビスムの広がりを感じさせてくれる瞬間ですね。
ちなみにロジェ・ド・ラ・フレネー(Roger de La Fresnaye)は、1885ー1925に生きたフランスの画家。戦争による後遺症か?体が弱かったためか、40歳という若さで亡くなってしまったのが何とも残念。画風的には鮮やかで、面白い作品を描いているというのに…。
もう少し長生きしていたら、もっと名を残せただろうと思っています。

「パリ市(The City of Paris)」(1910‐1912年)ロベール・ドローネー
・267×406cm、カンヴァスに油彩、ポンピドゥーセンター所蔵
そして中盤辺りに姿を現した作品が、目玉作品”ロベール・ドローネー(Robert Delaunay)”の代表作「パリ市(The City of Paris)」という訳です。
パッと見はジョルジュ・ブラックに似ている様な…、でも全く違う画風にも感じる。何より色彩観は全然違いますよね。キュビスム的な画風は受け継ぎながら、でも色彩はより鮮やかで明るい。
個人的な好みになりますが、R・ドローネーの画風は純粋にイイですね。^^
(参考記事)
・キュビスムと抽象絵画の架け橋的な画家”ロベール・ドローネー”を解説!
・ロベール・ドローネーの「パリ市 / エッフェル塔」が純粋にイイ!と思う件
そしてロベール・ドローネーの妻ソニア・ドローネー(Sonia Delaunay)の作品も展示しています。
当然画風は明るく鮮やかで、でもここまでくるとキュビスムと言うよりも抽象的な感じもある。事実ドローネー夫婦は抽象画の先駆者とも言われているので、抽象的に感じるのは当然と言えば当然でしょうか。
どうですか??
こうやって”流れ”で見ると、キュビスムも抽象画も突発的に誕生したものではない!のが分かると思います。
きっかけがあり、そして誕生した。つまり”すべては繋がっている”という訳ですね。こういった発見が味わえるのも、この「キュビスム展」の最大の醍醐味だと思います。
「挨拶」(1912年)フランティシェク・クプカ ※「キュビスム展 美の革命」より
これはフランティシェク・クプカ(Frantisek Kupka)の「挨拶」という作品。
理論じゃなく、純粋に観ていてイイと感じる。今回の「キュビスム展」で特に惹かれた一枚です。
そしてこの流れで、マルク・シャガールの作品が現れてきました。
好きな画家、好きな画風に囲まれるのはイイものですね。^^
今回シャガールの作品は「ロシアとロバとその他のものに」、「婚礼」それから「白い襟のベラ」、「キュビスムの風景」など、計5点が展示されていました。中でも「墓地」は特に惹かれてしまった作品でした。
「墓地」(1917年)マルク・シャガール ※「キュビスム展 美の革命」より
最初観た時の印象は、空の描写がオーローラというか、プリズム的で素敵な絵だな~と。
でも、すぐに作品名を見るや否や…
「墓地」!
このギャップにはしてやられましたね。
シャガールは戦争や愛をテーマにした作品が多いけれど、まさか一目ぼれした作品が「墓地」というタイトルだったとは。カンヴァスの下に描かれているのは墓石の数々ですから、言われてみれば当然と言えば当然でしょうか。
それから、最後にもう一つ挙げておきたい作品があります。
レオポルト・シュルヴァージュ(Leopold Survage )の「エッティンゲン男爵夫人」という作品です。
建築的な感じがあって、静物的で装飾的な要素もある。そして物陰から見える人物のシルエットがまた洒落ている。この単なるキュビスムには収まらない複合的な画風は面白いしの一言ですね。
私の言葉で表現するなら、”空間的キュビスム”という感じになるでしょうか。こちらもぜひ忘れずに観てほしい作品です。
キュビスムはピカソ、ブラックだけじゃない!
そこから派生したキュビスムがまたオモシロイ!!
実は会場内で、隣の人が”やっぱりピカソだね!”と言っている人がいましたが…。
否!ここからが面白いのに!と。
もちろん絵画も芸術も、好みや解釈は人それぞれだと思います。でもキュビスムを語る上で、ピカソやブラックだけで終わってほしくはない。それ以外のキュビスムが、実に広くて深いのです。
とにかく今回の「キュビスム展」は、全体のキュビスムをかいつまんで展示している感じなので、そういう意味でも結構充実した内容になっていると思います。
鑑賞のポイントは? コレを押さえるだけで、面白さも倍増!
”50年ぶりの大キュビスム展!”と大々的に謳われている今展ですが、一体何が凄いのか??
それはピカソやジョルジュ・ブラックだけじゃない!それ以外の画家たちの作品を数多く揃えている点に尽きます!!
実は「キュビスム」は物凄く幅が広く深い。だからピカソだけで終わってほしくないわけですね。
これまでピカソの様に、一部の画家にスポットライトを当てた展覧会は数多くあったけれど、今回の様に「キュビスム」全体を取り上げた展覧会はなかなかなかった。
そして全体を取り上げた展覧会と言う事は…、キュビスムを”流れ”で観れる!!
これまで”点”で展示していたものが、ついに点と点が繋がり”線”になったというわけです。
これが自称”絵画通”の私が思う最大の鑑賞ポイントです。
”流れ”を鑑賞方法で例えるなら…
・どういった流れでキュビスムが誕生したのか?を知るなら
⇒セザンヌとジョルジュ・ブラックの作品を見比べてみると分かりやすいと思います。
・ピカソとブラックのキュビスムが、その後どうやって広がりを見せていくのか?を知るなら
⇒ブラックやピカソのキュビスムと、ロベール・ドローネーがどう違うかを観るのもイイ!
「キュビスム誕生⇒抽象画」の経緯を、”流れ”で観るとオモシロイと思います。
もちろん、”流れ”で観ようとする必要もありません。
キュビスムや抽象画は、理論云々ではなく感性や感覚に頼る部分が大きいと思うので、純粋に絵を観て、この絵ってイイな~と思うだけでも充分!!
まずは、あなたが惹かれる一枚を見つけてみましょう!
恋愛でもそうですが、一目惚れの確率ってなかなかないですしね。あなたが一目惚れする作品と出会えたら、それだけで芸術鑑賞は大成功!と言っても過言ではないのです。
それでは、楽しい美術館TIMEを!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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