- 2018-11-3
- Artist (画家について), Artwork (芸術作品), For you (”Art”なイイ話)
- コメント:1件
「青いターバンを巻いた少女」や「北のモナ・リザ」と、実に様々な呼び名を持っているフェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」。どれも作品の特徴を表わしているだけに、間違いではないけれど、ここまで色々な呼び名を持っている作品も珍しいと思います。
もちろん、それだけ作品としての魅力があるからなんでしょうけれど…。
【 目次 】 1、真珠の耳飾りの少女?、それとも青いターバンを巻いた少女!? 2、なぜ「北のモナ・リザ」と呼ばれているの? 3、「真珠の耳飾りの少女」の今に至るまでの経緯 4、「真珠の耳飾りの少女」のモデルは誰!? |
未だに謎に包まれた名画「真珠の耳飾りの少女」の魅力と謎を、一つずつ解説していこうと思います。
1、真珠の耳飾りの少女?、青いターバンを巻いた少女!?
現在のところ、一般的に知られている作品名は”真珠の耳飾りの少女”だと思います。でも、私からすれば”青いターバン”の方がしっくり来る。なぜ、というのも、以前作品を観た時も、一番目を惹く部分がターバンでしたし…。
確かに耳飾りは美しいし、宝石のような輝きは目を惹きます。でも、ターバンの青は、真珠にも勝る美しいブルーが使われています。俗に”フェルメールブルー”と呼ばれ、”ラピスラズリ(Lapis lazuli)”という鉱物から作られた色だからです。つまり絵画に”宝石”が使われているわけですね。
※”ラピスラズリ”は当時アフガニスタンでしか採掘されていなかった鉱物でした。金と同等の価値だったと言われていて、かなり高価だったと言われています。
フェルメールが借金をしてまで、ラピスラズリを購入していたのも分かる気がします。ここまで神秘的で深みのある青色は、おそらく絵具では表現できないでしょうし、宝石だからこそ成しえる色だから。
絵画に宝石が使われているって分かると、私が青いターバンに目を奪われるのも納得ですね。自分の眼が節穴ではなかったわけですから。^^
さて、名画「真珠の耳飾りの少女」は、宝石が使われているだけが魅力じゃない!実は、他にも色々な謎というか、秘密にまみれているのです。追って説明していこうと思います。
2、なぜ、「北のモナ・リザ」と呼ばれているの??
「真珠の耳飾りの少女」の呼び名で、一番しっくり来ないのが「北のモナ・リザ」という名。
「モナ・リザ」と言えば、ルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチが思い浮かぶと思います。今さら作品を挙げなくても、おそらく誰もが分かる名画だと思いますが、一応参考として挙げてみました。
さて、「真珠の耳飾り」とどこが似ているだろう?
見ての通り全く似ている感じがしませんよね。
描かれたモデルで見ると、女性に対して言うのは失礼ですが年齢的にはちょっと違う様ですし…、画風も全く違う感じがします。確かに構図は似ていると言えば似ているけれど、でも人物画だから構図はある程度似てくるだろうし。
では、一体なぜ”北のモナ・リザ”と呼ばれる様になったのだろう??
以前「世界に狙われた名画の秘密」という番組が放送され、「真珠の耳飾りの少女」に関する様々な秘密や謎が明かされていました。その内容もちょっと交えながら、解説していこうと思います。
端的に言えば、理由は少女の魅惑溢れる唇の描写!にあると言われています。
魅惑溢れる少女の唇…。
この表現だけでも、興味が惹かれてしまいますね。濡れた感じと膨らみのある赤い唇。少女でありながら、大人びたセクシーさを感じる唇が何とも魅力的!でも、理由はセクシー的だからではない。一番の理由は”半開きの口元!”です。何かを言おうとしているかにも見えるし…。はたまた、微笑みの様な表情も見て取れる。少女の口元の描写だけで、実に様々な表情が読み取れるのです。実はこれが”北のモナ・リザ”と言われる所以!本家レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」と共通する部分だそうです。
ダヴィンチは「モナ・リザ」の口元を描く際、透明な薄い層の絵の具を何度も何度も重ね塗りして描いていました。(俗に”スフマート”と呼ばれる技法です。)ぼかしの効果で、微笑みなのか悲しみなのか微妙な表情を演出しているわけです。まさに、魅惑の唇です。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」も、同じくぼかしの効果がふんだんに使われています。口元をよ~く観察してみると、輪郭を描かずにぼかされているのが分かると思います。
輪郭を描かず、ぼかしの効果によって、見る人に様々な表情を見せているわけですね。まさに”モナ・リザ”と言っても過言ではない!!ちなみに、”北の~”は、フェルメールがオランダの画家だからです。ダヴィンチのイタリアから見て、オランダは北の方角に位置するから。
私的には「北のモナ・リザ」はこじつけの様にも感じますが、それだけフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が魅力溢れるからなのかもしれないですね。
3、「真珠の耳飾りの少女」の今に至るまでの経緯
現在「真珠の耳飾りの少女」は、フェルメールを代表する作品となっています。正確な価値は分かりませんが、間違いなく”100億”は下らないでしょう。専門家の話によれば”100億”はしてもおかしくないそうです。現在最高落札額はダヴィンチの「サルバトール・ムンディ」とされていて、落札額にして”4億5,000万ドル”。日本円では500億円くらいする計算になります。さすがに、ダヴィンチほどはいかなくても、それなりの価値は間違いないだろうから。100億円突破はほぼ間違いないでしょうね。
今の認識からすると、100億円超えは当たり前の「真珠の耳飾りの少女」。でも、今から150年くらい前は、信じられないくらいの価格だったのです。
「真珠の耳飾りの少女」の奇妙な経緯を、ちょっと参考に見てみようと思います。
1675年、ヨハネス・フェルメールが亡くなる。
フェルメールはかなり生活に苦労していたのは知られている事実。実際亡くなった時は、破産状態だったそうです。残された妻には、金銭的負担が重くのしかかってしまった。フェルメールの描いた作品の多くが競売にかけられてしまったのです。そして、その後約200年近くを様々な所有者へと転々とする事になったと言います。1881年、オランダのハーグでオークションが開催!
「真珠の耳飾りの少女」が2ギルダー30セント(約4000円)で落札されました。今では100億超えは当たり前とされる作品ですが、当時は1万円にも満たない価格だったのです。ほこりや泥にまみれていて、何が描かれているか分からないくらい作品状態が悪かったのもあるでしょうが、それでもちょっと信じられない価格ですね。
1915年、マウリッツハイス美術館で修復が開始。
最新の調査によって、ラピスラズリが絵の具の油と反応し、少女のターバンの青色が変色している事が分かった。
個人的に驚きは、150年前の「真珠の耳飾り」は、今の金額で4000円ほどだった。個人的にちょっと驚きですね。作品の状態が悪かったのも理由にあるとは思いますが、それでももう少し高値が付いてもいい様なものを…。もし当時私が購入していたら、今頃は億万長者だったかもしれませんね。^^
4、「真珠の耳飾りの少女」のモデルは誰!?
最近では、ある程度の真実が分かってきましたが、絵のモデルについてはまだまだ不確かな部分があるようです。正直言って、誰を描いたのか?については、明確な記載があるわけでもなく、どうしても描かれた背景を元に推測していくしかないから。
現在のところ、一番有力とされているのが、トロ―二―説だと言われています。
トロ―二―とは特定の人物ではなく、架空のキャラクターの事。当時(17世紀)のオランダではよく描かれたテーマだったそうです。
もちろん、他に説はあって、例えばフェルメールの娘マーリアではないか?の説。(フェルメールには11人の子どもがいました。)
フェルメールの作品の多くは、実際の人物(モデル)を描いていた事が多かったので、耳飾りの少女の正体に、注目が集まるのも無理はないですね!今後書物や記載された何か?が発見されれば、モデルの謎も明らかになるかもしれませんが、でも謎は謎のままにしておいた方が、イイのかもしれませんね。その方が、今後の楽しみにもなりますから!
深堀していくとますます作品の魅力が増してくる!
もちろんこういう謎が
作品の価値を押し上げている理由ではあるんだろうけど…。
こんな風に絵画は深堀して見ると、
また新たな魅力が発見できるのも楽しみの一つだと思うのです。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
とてもすごかった