- 2020-7-26
- Artwork (芸術作品)
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絵画は時として過去の歴史を教えてくれます。
ジュール=エリー・ドローネーの「ローマのペスト」は、まさに歴史の恐怖を語っていると言っても過言ではない!歴史上最も恐ろしい感染症”ペスト”の悲劇を生々しく描いた…、そんな一枚だと思っています。
・131.5×177cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
描かれたのは1869年、つまり19世紀の中頃。もちろん作品を見て分かるとおり、当時のペスト被害を描いたものではなく、ローマでペストが大流行した7世紀の様子を描いたもの。非常に生々しく描かれているとはいえ、実はローマの教会にあった絵画からインスピレーションを得ているそうです。
「ローマのペスト」には何が描かれているの?
ドローネーの「ローマのペスト」は7世紀に大流行したペストの様子を描いています。辺り一面に漂う澱(よど)んだ空気、今にも死臭がしてきそうですね。そして生気があるのか、ないのか分からない伏した人間たち。奥の方では十字架を立てて祈っている姿も見受けられますが、生きていると認識できるのはこの人くらいではないだろうか?ほとんどは亡くなっているか、もしくは今にも生き途絶えようとしている感じです。
そんな悲惨的な中で特に目を惹くのが、白い翼をした天使と槍を手にした悪魔。天使がある屋敷の前で指を差し示し、悪魔に槍で扉を1回、2回…と叩かせる…。すると叩いた数だけ人が順番に亡くなっていく。次は誰が天使から指を差されるのか?いつ自分に死の順番がやってくるのか??ペストの死が身近に迫っている様子がここに描かれているのです。
日本だとあまりペストの恐怖は実感がないだろうけど、歴史的に語られている話だと相当酷かったそうです。特に14世紀頃ヨーロッパで起こったペストは最悪だった。人口の約3分の1が死に至るほどだったとか…。
最近のコロナ被害も国によってはかなり酷いけれど、この絵に描かれている様子はこれ以上だったのかもしれないですね。確かにこの絵は目の前の光景を描いたものではないにしろ、なぜか異常に生々しくリアルに見えてしまうのです。
・カンヴァスに油彩、62×75cm、ブレスト美術館所蔵
実は同じような絵画がフランスのブレスト美術館にもあります。多少の違いはありますがほぼ同じような場面を描いています。
天使は神の使い?それとも…
おそらく多くの人が疑問に思ったと思います。この2枚の作品に描かれている天使は一体どんな存在なのだろう?と。本来天使と言えば”神の使い”と言われています。でも描かれて天使は神の使いと言うよりも、まるで死を呼ぶ”死神”の様に見えてしまう。「ローマのペスト」で描かれている天使は一体どんな存在なんだろうか?
天使は災いを知らせる象徴!?
世間一般には天使は”神の使い”と言われているけれど、実は解釈によって様々!「聖書」の黙示録の中ではこの様に言われています。
”天使がラッパを吹きならすと世界に災いが訪れる”
つまり天使は災いを知らせる象徴として書かれているのです。
もしかして「ローマのペスト」に描かれている天使も災いを呼ぶ象徴として描かれているのだろうか??絵画は間接的にメッセージを伝える傾向があると思っています。この絵にも何かしら意味があるのかもしれませんね。
感染症の危機は誰にでも降りかかる。もしかしたら、次はあなたの番かも?だから…
単に過去に起こった出来事を語っているだけでなく、この作品には深いメッセージが含まれているのかもしれない。深読みすればするほど、怖くもあり深い奥深い作品に見えてくるのです。
さてあなたはこのエリー・ドローネーの「ローマのペスト」から、一体何を感じ取れましたか??解釈は人それぞれです。正解なんてありません!ぜひ何かしら感じ取ってみて下さい!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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