国立西洋美術館で「憧憬の地 ブルターニュ展」を観てきました。

「憧憬の地 ブルターニュ展」 …国立西洋美術館にて

 

国立西洋美術館で開催した憧憬の地 ブルターニュ展  ~ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷 ~を観てきました。

 

フランス最果ての地”ブルターニュ(Bretagne)”は、西洋絵画では頻繁に描かれる場所の一つ。特に印象派や風景画家たちは、好んでこの地を描いていました。モネやゴーガン、それからエミール・ベルナールやポール・セリュジェ…、と挙げれば本当にキリがない。風景画が好きな人にとっては、タマラナイ面々ばかりですね。

 

憧憬の地 ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷

・会期:2023年3月18日(土)~6月11日(日)まで
・場所:国立西洋美術館、企画展示室にて
・時間:9:30~17:30(金、土は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで
 ※5月1日(月)、2日(火)、3日(水)、4日(木)は20:00まで開館
・観覧料:一般2,100円、大学生1,500円、高校生1,100円

 

「憧憬の地 ブルターニュ展」は、風景画好きにはたまらない画家たちの作品が勢ぞろいします。しかも黒田清輝や坂本繁二郎と言った日本の画家たちも多く展示されるし、かなり見所満載!と言った感じだと思います。

これから見に行く人も参考になるよう、私のレビューを交えながら注目作品や鑑賞ポイントについて話していこうと思います。ぜひ、参考にしてもらえたら幸いですね。

 

 

「憧憬の地 ブルターニュ展」のレビューと見所!

国立西洋美術館で「憧憬の地 ブルターニュ展」を観てきました。

ネやゴーガンと言った印象派の画家たちは、ブルターニュに行っては頻繁に風景画を描いていたのは有名な話。他にはエミール・ベルナールやポール・セリュジェなどもいますが、個人的にはクロード・モネの名に一番惹かれてしまいますね。モネは自然をこよなく愛した画家というイメージがあるだけに、一体このブルターニュには何?があるのだろう??と、そんな疑問さえも湧いてしまう。

しかも、タイトルが「憧憬の地」となっている事からも、余計にブルターニュの魅力に興味が注がれてしまうし…。

今回の一番のポイントは憧憬(しょうけい)にある様ですね。

 

ちなみに、憧憬の意味は「あこがれ、理想とする気持ち。」

画家たちにとって、ブルターニュは描きたい理想の場所だったのかもしれない!そう考えながら作品を見ると、より深く味わえると思います。今回の「ブルターニュ展」は、主に日本の美術館から集められた作品が勢ぞろいしています。名のある画家たちも多く登場してくるし、何よりも個人的に好きな画家もいたりと、実に豪華!!一通り作品を観て回ると、ブルターニュの魅力がちょっとは理解できるかもしれませんよ!!
※以前書いたブルターニュの記事もあるので、こちらも参考に!!
⇒”多くの画家を魅了した”ブルターニュ”の風景って、どんなだろう?

 

 

所1つ目!!

今回の「ブルターニュ展」で、真っ先に観てほしいのがモネとゴーガンの2大巨匠です。実は2人の作品を比べてみると、結構楽しいと思うので、ぜひ対比で見比べてほしいですね。^^

「嵐のベリール」(1886年)クロード・モネ

「嵐のベリール」(1886年)クロード・モネ

・65.4×81.5cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵

こちらはクロード・モネ(Claude Monet)の作品「嵐のベリール」です。

モネは1886年9月~11月の間、ベリール(Belle-Ile)という場所に滞在していました。ベリールはブルターニュにある最大の島(約85平方キロメートルの面積を持った島)。モネは滞在中に約40点ほどの作品を描いていますが、そのほとんどが海岸や海を題材にした作品です。モネは気に入ったモチーフを繰り返し描いた事で有名なので、よっぽどこの場所が気に入ったんだろうな~というのが分かりますね。

 

「ポール=ドモワの洞窟」(1886年)クロード・モネ

「ポール=ドモワの洞窟」(1886年)クロード・モネ

・65×83cm、カンヴァスに油彩、茨城県近代美術館所蔵

私が思う”クロード・モネ”は、自然の本質を見ていた画家という認識です。

日時と光の加減によって違った雰囲気を見せる風景を、瞬時に読み取りカンヴァスに描いた。印象派の画家の中でも、自然の本質を一番理解していた画家だろうと思っています。そんなモネが描いた波の風景画。やっぱり着眼点もモネらしいと思います。正直言って作品名を言われなかったら、どこの海か分からないくらいですが、でもモネだからどこの海だって構わない!モネが目の前の風景を描いたという点に価値があると思っています。

 

「ブルターニュ風景」(1888年)ポール・ゴーガン

「ブルターニュ風景」(1888年)ポール・ゴーガン

・89.3×116.6cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵(松方コレクション)

これは国立西洋美術館に所蔵されているポール・ゴーガン(Paul Gauguin)の作品です。これまで何度か目にした事がありますが、改めて見るとイイものですね。

モネが自然にスポットを当てて作品を描いたのに対し、ゴーガンはブルターニュに住む人々の生活感をメインに描いている。画家によって描くポイントが違うのも、見ていて面白いもの。

 

「ブルターニュの農婦たち」(1894年)ポール・ゴーガン

「ブルターニュの農婦たち」(1894年)ポール・ゴーガン

・66.5×97.2cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵

ゴーガンの平面的で素朴な感じがする色合いは、古き良き文化と伝統が残った異郷にはピッタリな画家かな?と思ったりします。土地に根付いた住民の生活感とゴーガンの画風は、本当に相性がイイと思う瞬間ですね。ゴーガンがポン・タヴェン派を代表する画家だけあるな~と思います。

 

ポン・タヴェンはブルターニュ地域圏にあるコミューンの事で、ここで生活し絵を描いた画家たちをポン・タヴェン派と呼んでいます。他にはエミール・ベルナール(Émile Bernard)やポール・セリュジェ(Paul Sérusier)などいます。もちろん今回の展覧会でも彼らの作品は展示されています。

 

・「青い肩かけのブルターニュ婦人(1887年)エミール・ベルナール、新潟県立近代美術館所蔵

・「ブルターニュのアンヌ女公への礼賛(1922年)ポール・セリュジェ、ヤマザキマザック美術館所蔵

・「急流のそばの幻影、または妖精たちのランデヴー(1897年)ポール・セリュジェ、岐阜県美術館

この3点は個人的に印象に残った作品です。どれも日本の美術館に所蔵されている作品ですが、あまり見に行く機会がないだけに、見れただけでも結構貴重だと思います。

 

 

所2つ目!!

2つ目に着目してほしいのが版画作品です。実は今回の「ブルターニュ展」ですが、意外と版画の作品が多かったのも見所だと思っています。別に版画とは言っても、単に木版だけを言うわけじゃなく、例えばリトグラフも版画の一種。今回アンリ・リヴィエール(Henri Riviere)の作品が数点展示していましたが、どれも味があって素敵なものばかり!日本の浮世絵を彷彿とさせる感じがあるので、初めて彼の作品を見てもすぐに親しめるのでは?と思います。

 

「連作「ブルターニュ風景」より:≪ギャルド=ゲランから眺めたデコレ岬≫」(1891年)アンリ・リヴィエール

「連作「ブルターニュ風景」より:≪ギャルド=ゲランから眺めたデコレ岬≫」(1891年)アンリ・リヴィエール

・22.6×35cm、多色木版、国立西洋美術館所蔵

 

「連作「美しきブルターニュ地方」より:≪トレブルに停泊する船≫」(1902年)アンリ・リヴィエール

「連作「美しきブルターニュ地方」より:≪トレブルに停泊する船≫」(1902年)アンリ・リヴィエール

・23×35.1cm、カラーリトグラフ色木版、国立西洋美術館所蔵

アンリ・リヴィエール(Henri Riviere) 1864‐1951年、フランスの画家で版画家。
ポール・シニャックと共に絵画を学んだ経緯があって、非常に親しかったそうです。リヴィエールは日本の浮世絵にとても興味を持ち、版画、特に多色版画の作品を多数制作していきます。日本の浮世絵を彷彿とさせるのは、そのためなんでしょうね。

 

鉄道ポスター:「ポン・タヴェン、満潮時の川」(1914年)ジョルジュ・ムニエ

鉄道ポスター:「ポン・タヴェン、満潮時の川」(1914年)ジョルジュ・ムニエ

・105.2×74cm、カラーリトグラフ、大阪中之島美術館所蔵(サントリーポスターコレクション)

今回の「ブルターニュ展」で特にお気に入りがジョルジュ・ムニエ(Georges Meunier)の「ポン・タヴェン、満潮時の川」。鉄道のポスターなので、当時は駅などに貼られていたって事でしょうか。子供の上目遣いの表情は何ともイイですね。最近日本で電車に乗っていても、カラフルでオシャレなものばかり。もしこの様に素朴で味わい溢れるポスターがあったら、相当目を惹くと思いますが…。版画ならではの味わいとアート性が融合したら、こういった素敵なポスターが生まれるわけですね。ミュージアムショップでは、ポスターなども販売されているので覗いてみるのもイイと思います。

個人的に”版画作品”の充実度はかなりだと思うので、ぜひ気にして見てほしいと思います。

 

 

所3つ目!!

そして3つ目は、日本の画家によるブルターニュの作品です。

日本とフランスの地という組み合わせも、意外と面白いな~と思ってしまいます。日本を代表する黒田清輝藤田嗣治、正直あまり知らないですが山本鼎(やまもと かなえ)の作品も見所だと思います。

 

「ブレハの少女」(1891年)黒田清輝

「ブレハの少女」(1891年)黒田清輝

・80.6×54cm、カンヴァスに油彩、アーティゾン美術館所蔵

 

「ブルターニュの入江」(1917年)山本鼎

「ブルターニュの入江」(1917年)山本鼎

・24.3×31.8cm、多色木版、国立近代美術館所蔵

山本鼎は洋画家で、版画家。今回は、山本鼎の版画作品が数点展示されていましたが、どれも好きな画風ですね。どことなくゴーガンにも通じる感じがして、素朴な味わいは見ていてホッとします。他には長谷川潔(はせがわきよし)の木版やリトグラフの作品もあるので、チェックしてみては?

一昔前だと版画はそこまで興味をそそられなかったのですが、最近になってからでしょうか?木版やリトグラフもなかなか味わい深くてイイな~と思ってくるようになりました。これも年の性だろうか?

日本人によるフランスの風景画と言う組み合わせも実に新鮮なので、私的には必見!と思っています。まさに日本の美術館でしか見れない組み合わせだと思うので、今回の「憧憬の地 ブルターニュ」ならではの演出でしょうね。黒田清輝や藤田嗣治など、有名どころの作品ばかりに目が向きがちかもしれませんが、実は他にも素敵な作品が目地を押しです。ぜひ、くまなく見渡してほしいと思います。

 

た今回話の流れ的に紹介できませんでしたが、私のお気に入りの画家”リュシアン・シモン”の作品7点が一堂に公開しているのもお見逃しなく!!ブルターニュを代表する画家と言っても過言ではないので、この機会に覚えてくれると嬉しいですね!

 

「憧憬の地 ブルターニュ展」 …国立西洋美術館にて

この「憧憬の地 ブルターニュ展」は、2023年6月11日まで開催します。ぜひ、”懐かしい故郷に里帰りする”気分で行ってみるのもイイと思います。

 

国立西洋美術館を背景に、ブールデルの「弓をひくヘラクレス」 国立西洋美術館を背景に、ロダンの「考える人」

そして国立西洋美術館と言えば、忘れてはならないのが「常設展」の存在です。西洋画の王道とも言える作品を数多く所蔵している点も見逃せない!企画展のチケットで「常設展」も鑑賞できるので、こちらもお忘れなく。せっかく行ったなら、存分に楽しまないと損ですよ!!

 

 
 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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コメント

    • 匿名
    • 2023年 4月 24日

    4/26天気予報は雨ですが、その方が混まないかなと思い行ってみようと思います。見どころを教えていただい楽しみが増しました。ありがとうございます。
    コロナ禍でなかなか美術館に行かなかったなですが、これが3年ぶりかと、、!
    楽しんできます。

    • サダ
    • 2023年 4月 24日

    コメントありがとうございます。参考にしていただいて、嬉しいです。ぜひ、楽しんできてください!

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