国立西洋美術館の新収蔵作「インフェルノ/地獄」を調べてみました。

国立西洋美術館の新所蔵作品

 

国立西洋美術館で新たに加わった収蔵作品、アウグスト・ストリンドベリインフェルノ地獄

 

作品名がなかったら、何が描かれているのか分からないけれど、その圧倒的な迫力とダークな魅惑は何とも言えないですね。観た瞬間、即惹き付けられてしまいました。今回は魅惑溢れる作品「インフェルノ」と、描いた画家について私なりに調べてみたのです。

 

普段、国立西洋美術館の「常設展」にはよく行くので、たまに”新収蔵作品”というコメントの入った作品を目にします。つまり、新たに、仲間入りした作品という意味ですが、やっぱり自然と目が向かってしまいますね。

どういった作品なのだろう??と…。

 

「インフェルノ/地獄」(1901年)アウグスト・ストリンドベリ

「インフェルノ/地獄」(1901年)アウグスト・ストリンドベリ

・100×70cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵(2022年購入作品)

正直言って、最初見た瞬間の印象は「何が描かれているのだろう??でも、何だか不気味!」と言った感情でした。作品名に”インフェルノ”がなかったら、おそらく分からなかったでしょうね。でも不気味な魅力という意味では、正しかった様です。

というのも、インフェルノ、つまり”地獄”という意味ですから…。

 

そして同時に、描いた画家アウグスト・ストリンドベリって誰?という疑問でした。

正直言って、知らない画家です。でも、なぜか聞いた事のある名でもあったのです。

横に書いてあった解説では、スウェーデンを代表する劇作家で小説家、傍ら絵画も制作していたとの事。画家としてよりも作家としての方が有名。というか、作家と言った方が正しいのかもしれませんね。実際Wikipediaで調べてみても、画家としてはほとんど書かれていないのです。確かに絵画作品で20点ほど出てきましたが、見た事がない代物ばかり。そういった意味でも、画家として知らなくても、当然と言えば当然なのでしょうか。

 

「インフェルノ/地獄」(1901年)アウグスト・ストリンドベリ

「インフェルノ/地獄」(1901年)アウグスト・ストリンドベリ

それにしても、この独特というか大胆な構図は本当に印象的です。

洞窟の奥で吹き荒れている嵐?それとも怒涛の如く落ちる流水?これも解説を見ないと、嵐だとは分からないと思います。もしそうだとしたら、まさに地獄そのもの!と言わんばかりの風景。私は”地獄”と”嵐”の2つのワードで、第二圏の愛欲の地獄を思い起こしてしまいました。暴風によって亡者たちが吹き流される地獄。手足の自由も効かず、一生風に吹きまわされる結末が待っているのです。

いろんな意味で、興味をそそられる作品ですね。

 

 

もう少し、アウグスト・ストリンドベリについて調べると…

Research

色々な点で魅惑溢れる画家ですが、まずは手持ちの辞書も使いながら探ってみました。

 

「アウグスト・ストリンドベリの肖像画」(1905年)リッカルド・ベリ

「アウグスト・ストリンドベリの肖像画」(1905年)リッカルド・ベリ

ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(Johan August Strindberg)

1849年‐1912年、スウエーデンのストックホルム出身の劇作家で画家。代表作には、『令嬢ジュリー』(1888年)、『死の舞踏』(1901年)、『幽霊ソナタ』などがあります。またオカルト研究や錬金術にも精通していて、科学者的側面もあった。そういう意味では実に多彩な人物だったわけですね。ちなみに、日本語訳された『ストリンドベリ名作集』もあります。

 

では、作品「インフェルノ/地獄」との関係に触れながら、ストリンドベリの生い立ちも見ていこうと思います。彼は3回?くらい結婚をしますが、どれも離婚という不幸な結果に終わっています。1891年に離婚。1893年にオーストリアの女流作家と結婚しますが、2年後に離婚。1901年に女優と結婚しますが、3年後に離婚。

つまり結婚生活には恵まれていなかった。その背景には精神的な問題もあった様です。そしてこの離婚という不幸から、女性へ対する偏見的な考えも生まれてきた。作品を生み出す上で、少なからずストリンドベリの思考も影響しているのかな?と思います。もちろん「インフェルノ/地獄」が描かれた経緯もそうなのかもしれないですね。制作された1901年頃は、結婚生活の破綻につながる様な精神的な危機に瀕していた時期でもあったそうで、精神的な闇が作品に表れているのかな?と思います。

ちなみに、ダンテの『神曲』が書かれた背景には、政権争いに敗れフィレンツェを追放された事への恨み、憎しみと言った負の感情から生まれた作品と言われています。このストリンドベリが「インフェルノ」を描いた背景にも、少なからず負の感情が大きく影響している。私がこの作品を観た瞬間に、惹き付けられたのは作品に込められた負の感情なのかもしれない!

そう考えると、ストリンドベリは”表現主義”の画家ともいえるのでは?と、私は思ったりします。

 

新潮「世界美術辞典」
また、手持ちの新潮世界美術辞典』で調べてみると、この様な文面も気になったのでした。

~ 晩年は神との贖罪の信仰に近づいた。ベルリンの<黒仔豚>とパリでのいわゆる”地獄時代”を通じて、ムンクやゴーガンとの交渉などもあったが、その90年代における海景と海辺風景をモティーフとした抽象表現主義的な画業(ストックホルム、コペンハーゲンの各美術館)も注目されている。 ~

・出典元:新潮『世界美術辞典』より一部

調べれば、調べるほど色々と闇が多そうなストリンドベリ。国立西洋美術館は本当に凄い作品を購入したものだな~と思います。

 

とにかく、国立西洋美術館に新たに所蔵作品の仲間入りをしたストリンドベリの「インフェルノ/地獄」。

時期にもよりますが、「常設展」に行けば出会えると思います。企画展を愉しむのもいいですが、同時に「常設展」にも行ってほしい!!もちろん、今回紹介した「インフェルノ」もイイですが、他にも素敵な作品はあります。ぜひ、あなたの惹かれる作品に出会ってほしいものです。^^

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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