東京国立近代美術館で「70周年展 重要文化財の秘密」を観てきた。

東京国立近代美術館で「重要文化財の秘密」展を観てきました。 in 2023

 

展示作品すべてが重文(重要文化財)

この言葉に惹かれ、先日東京国立近代美術館で開催した70周年記念展 重要文化財の秘密を観てきてしまいました。これから見に行く人もいるでしょうから、今回は私のレビュー(感想)を交えながら、見所作品やポイントについて話していこうと思います。

途中で”押さえてほしい!展示替え作品”と、後半には”絶対見てほしい一押し作品”も紹介しています。ぜひ、こちらも参考にしてほしいですね。

 

70周年記念展 重要文化財の秘密

・会期:2023年3月17日(金)~5月14日(日)まで
・時間:9:30~17:00(金、土曜は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
・観覧料:一般1,800円、大学生1,200円、高校生700円
 ※混雑の可能性もあるため、予約優先チケット(日時指定券)の購入をおススメ!

それにしても東京国立近代美術館が、開館から70周年を迎えたなんて!!意外と歴史があった事には、本当に驚きですね。節目となる記念展だけに、「重要文化財の秘密展」は押さえてほしいと思います。まだ見ていない人は、ぜひ一度足を運んでほしいと思います。

 

 

重要文化財の秘密展」のレビューと見所!

「重要文化財の秘密」展 …東京国立近代美術館にて

東京国立近代美術館(The National Museum of Modern Art‐Tokyo)は、普段私がよく行く美術館の一つ。当然ながら馴染みのある作品もチラホラと展示しています。ただ今回の様にすべてが重要文化財という試みは、おそらく初めての事でしょうね!しかも”本当にイイ作品が勢ぞろい!”という状態ですから、実に贅沢というか夢の様でした。普段ブログを書いていて、”ぜひ、見に行こう!”と書いた記憶はあっても、”絶対”という言葉を使う機会はほとんどないですが…。

でも今回に限っては、”絶対”を付けたいくらい良かったですね。

 

「騎龍観音」(1890年)原田直次郎

「騎龍観音」(1890年)原田直次郎

・272.0×181.0cm、カンヴァスに油彩、護國寺(東京国立近代美術館寄託) ※2007年(平成19年)重要文化財指定

これは原田直次郎の作品「騎龍観音」。龍の上に観音様が乗っている構図は、何度観てもインパクトが大きい!まるで”サーカスの様”という表現もされていますが、確かに言われてみれば…そんな感じです。龍の上に乗る観音様の斬新な構図を西洋画風で描いた作品「騎龍観音」。当然ながら、当時はかなり賛否両論だったそうです。人によって解釈が分かれそうですが、私的にはアリな作品です。

東京国立近代美術館はよく行く場所なので、もちろん「騎龍観音」も馴染みのある作品。目新しさという意味では、そこまでないけれど。でも今回に関しては、妙に”特別感”が感じられますね!^^

やっぱりイイ作品は、何度見てもイイって事なのだろうか!?

 

「裸体美人」(1912年)萬鉄五郎

「裸体美人」(1912年)萬鉄五郎

・162.0×97.0cm、カンヴァスに油彩、東京国立近代美術館所蔵 ※2000年(平成12年)重要文化財指定

萬 鉄五郎(よろず てつごろう)は1885~1927年、大正から昭和初期に活躍した洋画家です。ポスト印象派やフォーヴィスムに共感した画家で、特にゴッホからの影響は大きかったと言います。

ちなみに余談になりますが、東京国立近代美術館所蔵で萬 鉄五郎の「太陽の麦畑(1913年)があります。これは重文ではないため、「重要文化財の秘密展」では展示されませんが、同時に開催中の所蔵作品展「MOMATコレクション」で展示されています。ゴッホを彷彿とさせる感じは本当に圧巻なので、ぜひついでに同館の「所蔵作品展」も観てほしいと思います。

 

「天平の面影」(1902年)藤島武二

「天平の面影」(1902年)藤島武二

・197.5×94.0cm、カンヴァスに油彩、アーティゾン美術館所蔵 ※2003年(平成15年)重要文化財指定

藤島武二の代表作「天平の面影」は、現在アーティゾン美術館所蔵の作品です。まさか!ここで見れるとは思ってもみませんでした。一か所に集結するなんて、本当に贅沢な事ですよね。今回はアーティゾン所蔵で、青木繁の「わだつみのいろこの宮」もありました。共に通期展示となっているので、行った際は両方とも堪能してほしいと思います。

何度も言いますが、今回の大きなテーマは”重要文化財(略して”重文”)”です。東京国立博物館やアーティゾン美術館、永青文庫など、各地にある様々な美術館から、重文のみを一堂に集めています。重文はその美術館の顔となる作品が多いだけに、よくもここまで一堂に揃えたな~という感じですね。というか、よく貸してくれたと思います。

 

 

して今度は気分を変えて、”日本画”を挙げてみたいと思います。

川合玉堂と言えば、日本を代表する画家の一人。「行く春」は、そんな玉堂を代表する傑作です。

「行く春(左隻)」(1916年)川合玉堂

「行く春(左隻)」(1916年)川合玉堂

・各183.0×390.0cm、紙本彩色、東京国立近代美術館所蔵 ※1971年(昭和46年)重要文化財指定

 

「行く春(右隻)」(1916年)川合玉堂

「行く春(右隻)」(1916年)川合玉堂

 

さて作品「行く春」は、専門家曰く2通りの見方が楽しめる!との事。自然な空間が表現されているため、ちょっと離れて全体像を眺めるもよし!近寄って、散り行く桜の描写を楽しむもよし!こういった距離による楽しみ方は、本物でしか味わえないLIVE感だと思います。行った際は、ぜひ試してほしいと思います。

でもちょっと注意!したい点があります。今回の「重要文化財の秘密展」は、作品によって展示の期間が決められているものがあります。つまり展示替えがあるのです。上の「行く春」は3月17日~5月1日までしか展示されないため、日程は要チェックですね。

 

ここでCheck!
「重要文化財の秘密」展で、押さえてほしい!展示替え作品!

今展で一つ注意してほしいポイントがあります。それは展示替え作品が多数ある点です。重文は作品保護の観点から、展示期間の制限があります。仕方がないと言えば仕方がないわけですが…。そんなわけで、展示期間をチェックしてから行ってほしい!でないと、行ったのに見れないという事態もあるから。

ここでは私のおススメ作品で、展示替えになっているものをピックアップしました。

・「行く春川合玉堂(東京国立近代美術館)※3月17日~5月1日

・「(さざなみ)福田平八郎(大阪中之島美術館)※3月17日~4月16日

・「室君(むろぎみ)松岡映丘(永青文庫)※4月18日~5月14日

・「絵になる最初竹内栖鳳(京都市美術館)※5月2日~5月14日

・「弱法師下村観山(東京国立博物館)※4月11日~5月1日

・「麗子微笑岸田劉生(東京国立博物館)※4月4日~5月14日

・「湖畔黒田清輝(東京国立博物館)※4月11日~5月14日

東京国立博物館など、都内にある作品なら見る機会もあるだろうけど。大阪中之島美術館といった遠い場所だと、なかなか見る機会も難しいと思います。美術品は写真や画像よりも、本物を観るに限ると思います。ぜひ、逃さず観てほしいですね!

 

「収穫」(1890年)浅井忠

「収穫」(1890年)浅井忠

・69.6×98.2cm、カンヴァスに油彩、東京藝術大学所蔵 ※1967年(昭和42年)重要文化財指定

今回は明治以降の重要文化財(絵画や彫刻、工芸など)68件のうち、51件が展示という企画展です。本来、重要文化財は絵画と彫刻の分野だけでも約5000件近くにはなります。そう考えると、明治以降の重要文化財は意外と少ないのが分かると思います。歴史的に芸術的に価値の高いものが指定される傾向にあるそうで、明治以降という比較的近代の作品が指定されているって事は、よっぽど芸術的価値が高いと認められたからなのだろうか??

 

ここでCheck!
絶対見てほしい!私の一押し作品をご紹介!

さて、ここから私が特に目を惹いた作品たちを紹介したいと思います。

横山大観生々流転※通期展示
今村紫紅熱国之巻※通期展示
・鏑木清方の3部作築地明石町」「新富町」「浜町河岸※展示は3月17日~4月16日まで

ハッキリ言って、この”3件”は本当に要チェックです。例えば横山大観の「生々流転」は、絶対に見てほしい!

 

水の輪廻を一つの巻物で表した一大傑作生々流転」!

全長40メートルを超す作品って、おそらく他を見渡してもないと思います。これは数年に一度というタイミングでしか披露されない作品です。これは絶対に見てほしい!「生々流転」だけを見るために行くだけでも十分価値はあると思います。こちらは通期展示の作品なので、他に見たい作品と日程を合わせていくのもイイでしょうね。

 

※「生々流転1923年(大正12年)、横山大観
・55.3×4070.0cm、絹本墨画、東京国立近代美術館所蔵
・1967年(昭和42年)重要文化財指定
 全長40メートルにもなる作品だけに、東京国立美術館でも1階のスペースでしか広げられないそうです。

 

そして「生々流転」と見比べて鑑賞してほしいのが、今村紫紅熱国之巻です。これは朝之巻(3月17日~4月16日)、夕之巻(4月18日~5月14日)と2回に分けて展示されます。「生々流転」が黒白の水墨で描かれているのに対し、「熱国之巻」はカラフルで装飾的な描き方をされているのは見物!!しかも描かれているのがほぼ同時期というのも、何とも面白いですね。

 

さらに、鏑木清方の3部作築地明石町」「新富町」「浜町河岸も捨てがたい!ただ、こちらは4月16日までの展示なので、逃した人は…。→東京国立近代美術館所蔵ですから、「所蔵作品展」などで展示されるのを待つしかないかも!?

共に日本を代表する芸術家で、それぞれ個性豊かで見る価値充分な作品たちです。私の個人的な願望としては、全部見てほしい!ですが…。

 

それから日本を代表すると言えば、”高橋由一”も忘れてはいけないですね。

「鮭」(1877年頃)高橋由一

「鮭」(1877年頃)高橋由一

 

高橋由一(たかはし ゆいち)は、江戸時代末期から明治の中期まで活躍した日本で最初の洋画家と言われた人物です。武家の生まれで、家が代々剣術師範を務めていた経緯があり、画家として本格的に出発したのが30歳を超えてから。当時としては遅いスタートだったと思いますが、でも多くの後進を指導し、日本の最初の洋画家とまで言われるようになった。才能もあったのだろうけど、努力も相当だったのかな?と思うのです。一貫して”写実”を追求した画家として、高く評価されているので、リアルな描写は必見です!!

 

 

最後に、まとめとして…

東京国立近代美術館で「重要文化財の秘密」展を観てきました。 in 2023

今回の「重要文化財の秘密」展は、内容の濃さで言えばピカイチ!だと私は思っています。先ほど紹介した横山大観の「生々流転」や鏑木清方の3部作なども、当然ながら魅力的!そして普段見慣れている重文も、今回の様な演出だといつも以上に特別感が感じられますしね。

普段見慣れた作品も、展示方法や演出の仕方。それに当日の天気や見る人間の気持ちによっても、印象はガラッと変わってきます。これが芸術のオモシロさでもあって、何度観ても楽しめる理由なんだろうと思います。今回の「重要文化財の秘密」展では、そんな芸術のオモシロさが再確認できたのも、個人的には大きな収穫だと思っています。

 

東京国立近代美術館で「重要文化財の秘密」展を観てきました。 in 2023
重要文化財の秘密展」は、東京国立近代美術館で5月14日まで開催します。

ぜひ!”というか、”絶対に!”見てほしいと思う企画展です。ちなみに、今回は展示作品の約半分くらいが撮影可能になっているので、ルールを守って楽しんでほしいと思います。

 

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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