- 2019-11-28
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これはオーギュスト・ロダンの彫刻「カレーの市民(Burghers of Calais)」
国立西洋美術館に行った事のある人なら、
おそらくこの彫刻は目にした事があるだろうと思います。
オーギュスト・ロダンの彫刻「カレーの市民(Burghers of Calais)」
これも松方コレクションの作品の1つなんです。
国立西洋美術館の前庭には
他にもロダンの彫刻があるのはご存知だと思います。
例えば「考える人」や「地獄の門」など…。
いつもは何気なく見ている彫刻ですが、
その彫刻にある意味や背景は知っていますか?
もちろんこの「カレーの市民」にも、
その意味や作品に込められた背景があるのです。
…
ロダンの彫刻「カレーの市民」の意味と背景とは?
まず”カレー(Calais)”とは都市の事を意味しています。
(フランス北部にある港湾都市”カレー市”の事です。)
そしてこの彫刻で彫られている場面は
今から600年以上も前に起こった出来事…
時代で言うと1347年
”百年戦争時代”まださかのぼります。百年戦争時代とは…
1339年~1453年までの約100年間に起こった
イギリスとフランスで間で長期化した戦争の事。当時イギリスを治めていたのは国王エドワード3世。
対してフランスはフィリップ6世が国を治めていました。クレシーの戦いで勝利したイギリス軍は、
1346年に当時フランスの重要な町”港湾都市カレー”を包囲しました。
(歴史的出来事では”カレー包囲戦”と言われています。)対してフランス軍は何とかイギリスの包囲を解こうとしますが、
都市カレーへの補給も上手くいかず包囲を解けずにいたのです。こうしたイギリス軍のカレー包囲戦は約1年間続いたのです。
ついにフランス軍からの補給も来なくなり食料も尽きてきた都市カレーは、
ついに開城を余儀なくされます。そしてフランスはカレー開城の際、
降伏の交渉としてカレー市民の主要メンバー6人を人質として出す事に…。その主要メンバー6人とは
当時カレー市の指導者だった”ウスターシュ・ド・サン・ピエール”。
他にメンバーには”ジャン・デール”、”ジャック・ド・ヴィッサン”、
”ピエール・ド・ヴィッサン”、”シャン・ド・フィエンヌ”
そして”アンドリュー・ダンドル”の5人でした。彼らは都市カレーを守るため己を犠牲にイギリス軍の陣営に赴いていったのです。
ロダンの彫刻「カレーの市民」は、
都市カレーの市民を救うために出頭した6人の英雄を描いているのです。
でも…
この絶望感と苦悩に満ちた男性の表情…
そして後ろには首を紐で縛られた男性の後ろ姿も…
この男性たちの表情を見る限り、
全く英雄には見えませんよね!?
どう見ても悲劇と絶望に満ちた男たちにしか見えないのです。
実はこの英雄たちの表情で
こんなエピソードがあったそうです。
… 元々ロダンに彫刻を依頼した人(依頼主)は
この6人を英雄的な象徴として考えていたそうです。
でもこの彫刻で描かれているのは
疲れと苦悩に満ちている6人の男性の表情。
当時は英雄的な表情ではないという事で、
この彫刻は受け入れてもらえなかったのだそうです。…
依頼側と制作者側との意向の違いがあったって事ですね。
私の解釈としては…
もちろん彫刻を制作したロダンも、
この6人を英雄として見ていたと思います。
でも英雄だけれど一人の人間でもある。
そんな人間としての生々しさを
リアルに表現したかったのかな??と思うのです。
・・・
さてあなたはこの彫刻「カレーの市民」を見てどう感じますか??
それは実際に国立西洋美術館に行って、
ぜひあなたの目で感じ取って欲しいと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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