- 2023-8-6
- Artwork (芸術作品)
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日本を代表する洋画家”黒田清輝”の代表作と言えば、「読書」「舞妓」「湖畔」「智・感・情」の4つが挙げられると思います。教科書に載るほど有名な作品だけに、見た事のある人も多いと思います。
さて、そんな誰もが知っている作品たちが「黒田記念館」で一堂に公開される!
まさに夢の様な共演と言っても過言ではない。年に数回しか実現しない”夢の共演”ですが、せっかく見るなら作品の予備知識があった方がより楽しめる!というわけで、今回は代表作を一つずつ取り上げながら解説していこうと思います。
まず、前置きとして
今回解説する作品は、代表作と言われる「読書」と「舞妓」、「湖畔」「智・感・情」の4点です。
その前に簡単ですが、生い立ちについて話していこうと思います。
黒田清輝は若い頃に多少なり絵の勉強はしていたと言います。でも法律の勉強をして、将来的に法律家になろうと考えていました。東京外国語学校ではフランス語を勉強したのはそのためだったのです。(当時日本はフランスの法律を参考にしようと考えていた様です。)
その後、黒田はフランスへ行くチャンスを得ます。1884年に法律を学ぶ目的で、フランスへ向かいます。結局1884年~1893年フランスに滞在した形になります。元々法律を学ぶ目的でフランスに渡った黒田でしたが、ある日パリで日本の画家”山本芳翠(ほうすい)”や”藤雅三(ふじまさぞう)”と出会います。彼らの影響もあって、1886年に画家を目指す事を決意!画家”ラファエル・コラン(Raphael Collin)”に師事したのです。
実は黒田清輝の作品を見ていくと、解説にラファエル・コランの名を頻繁に目にすると思います。ある意味黒田にとっては”師”であり、画家としての基礎を作った重要な人物という訳ですね。
下で最初に挙げる「読書」は、黒田がフランスに滞在中に制作した作品。そして日本に帰国して描いたのが、2番目に解説する「舞妓」という作品になるわけです。
それでは、「読書」「舞妓」「湖畔」「智・感・情」の順(制作年順)で解説していこうと思います。
1、「読書」黒田清輝、1891年時の作品
・98.2×78.8cm、カンヴァスに油彩、東京国立博物館所蔵、重要文化財
1890年(日本では明治23年)6月~8月頃、グレー村(パリ近郊の村)滞在中に描いた作品。絵のモデルはフランス人の女性”マリア・ビヨー”。実は、マリア・ビヨーとは、単なる画家とモデルの関係ではなく、恋愛関係にあったと言われています。
鉛筆による素描は6月頃に描かれ、そして修正を繰り返しながら8月頃に完成。実に長い期間を要した作品なわけです。作品から読み取れる丁寧な描き方と、時間をかけて制作した点からも、黒田のモデルとなった女性への想いが感じられませんか?
黒田の師”ラファエル・コラン”からも賞賛され、1891年のサロンへ出品するに至り、そして入選。この「読書」はフランス画壇デビューを飾った記念すべき作品となったのです。
2、「舞妓(まいこ)」黒田清輝、1893年時の作品
・80.4×65.3cm、カンヴァスに油彩、東京国立博物館所蔵、重要文化財
京都を訪れた際、鴨川を背景に舞妓をモデルに描いた作品。1893年、つまり黒田がフランスから帰国した後に描いたもの。長年フランス留学していただけあって、日本らしい景色、日本の着物が新鮮に映ったのかもしれませんね。日本の景色を日本人が描いたのに、どことなく外国人画家が描いた様に見えるのは、そのためだと思うのです。
黒田は晩年まで水と女性の組み合わせを好んで描いたいたと言います。水は印象派では光の機微を表現するには最適な題材ですし、女性画(裸婦画)を好んで描いていた黒田にとって、”水”と”女性”の2つは格好な的だったのかもしれませんね。
3、「湖畔(こはん)」黒田清輝、1897年時の作品
・69.0×84.7cm、カンヴァスに油彩、東京国立博物館所蔵、重要文化財
これも黒田が好んで描いた水と女性の画です。1897年(明治30年)の夏、黒田清輝が箱根の芦ノ湖と彼岸の山を背景に、後に妻となる照子(当時23歳)を描いた作品。団扇を片手に持ち、浴衣姿で涼をとっている姿は何とも涼し気!黒田は約1ヵ月かけてこの絵を描いたそうです。
現在は”湖畔”で知られていますが、明治30年の第2回白馬会展では”避暑”の題名で出品。1900年のパリ万国博覧会には、「智・感・情」と共に出品した作品です。黒田記念館では、”スナップショット的な構図”というフレーズの解説がされていたけれど、まさにその通り!って感じしょうか。目の前に座っている照子と箱根の景色を、まるで写真に収め様な作風は印象的です。学校の教科書や切手のデザインに採用されたりと、黒田清輝を代表する作品と言ってもいいでしょうね。
4、「智・感・情」黒田清輝、1899年の作品
・各180.0×99.8cm、カンヴァスに油彩、東京国立博物館所蔵、重要文化財
右から「智(ち)」、「感(かん)」、「情(じょう)」を表現しています。1900年のパリ万国博覧会で”Etudes de Femmes” 、”女性習作”の題名で出品し、銀賞を受賞した作品。実は「黒田記念館」でも解説されている事ですが、一体何を意味しているのか?思想や哲学との関係性など、現在でも議論を呼んでいる作品だそうです。
とにかく「智・感・情」は等身大くらいの大きな作品です。”ちょっと離れて眺める様に観る!”これが私のおススメする鑑賞方法です。
※クリックして、大きなサイズで見てほしいと思います。
絵のモデルは日本人をモデルとしているのに、プロポーションは西洋的な感じがする。しかも背景に金地を使用しているのも気になる。一体どういった意図で金地なのか??これは私の解釈になりますが、日本人の画家として”金屏風”的な感じを表現したかったのかもしれませんね。画風は西洋的でも、日本人の画家として描きたかった!そういった想いがあったのかな?と私は思っています。
もちろん真相は描いた黒田清輝にしか分かりませんが、作品を観てどう解釈するかは人それぞれ!さて、あなたはこの「智・感・情」をどう解釈しますか?
これまで挙げた4点が、「黒田記念館」で勢ぞろいする!まさに夢の共演だと思いませんか??
黒田記念館 「特別室」開室日
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展示している「特別室」は、階段を昇って2階左側に位置する部屋です。日程を確認して、ぜひ行ってみてはどうでしょう!
もちろん、今回の話を参考にしてくれたら尚嬉しいですが。^^
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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