ヴァン・ダイク「メアリー王女」の落札額と、肖像画の役割を解説!

絵画(ART)

 

バロック期に活躍した宮廷画家アンソニー・ヴァン・ダイクを知っていますか!?

歴史的に見て、最も成功した画家の一人で、オークションでも高値を落札する画家だったりします。とはいえ、日本での知名度は思ったより高くない様で、同時期に活躍したルーベンスやレンブラントと比べるとどうしても落ちてしまう。

個人的にヴァン・ダイクと聞けば、”オオッ!!”と思うほどの画家なだけに、思ったほど知られていない現状にちょっと残念に思ったりもします。

 

【 目次 】

1、ヴァン・ダイクの肖像画「メアリー王女」の落札額は?
2、ボストン美術館が所蔵する、もう1枚の「メアリー王女」
3、当時、宮廷内で肖像画の果たした重要な役割って!?
4、余談:ヴァン・ダイクの肖像画で、ちょっと気になる話!

 

さて、前置きは置いておいて…、

実は、先日テレビを見ていた時の事、ヴァン・ダイクの作品の落札額について紹介されていて、ついつい驚いてしまったので話してみたいと思います。

 

 

1、ヴァン・ダイクの肖像画「メアリー王女」の落札額は?

オークション

テレビ番組「中丸雄一のまじっすか美術館」を見ていた時の事です。

これは東京都美術館で開催の「ボストン美術館展」の魅力を伝える番組だとは思いますが、その見所作品としてヴァン・ダイクの「メアリー王女の肖像画」が紹介されていました。ヴァン・ダイクと言えば、宮廷画家として成功した、特に身分の高い人物を描いた事で知られています。でも、個人的なイメージとして、特定の人物を描いた肖像画ってなかなか高値が付きにくいのでは?と思ったりしています。(調べれば、高値のついて肖像画もあるんですけどね。)

 

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

・158.2×108.6cm、カンヴァスに油彩、個人蔵

さて、これが今回紹介するヴァン・ダイクの肖像画「メアリー王女(チャールズ1世の娘)」。

2018年のクリスティーズのオークションで落札された作品です。では、一体いくらで落札されたと思いますか??

 

・・・

・・・

その額…5,858,750GBP日本円にして約8億4,000万円

つまり8億円超えの落札額だったわけです。

 

確かに誰が見ても上手い!と思う作品で、リアルな描写は凄いの一言!ですが、でも如何せん個人の肖像画です。それで8億円超えは凄いと思いませんか??やっぱり巨匠”ヴァン・ダイク”の作品だからでしょうか。

ちなみにこの作品はメアリー王女が9~10才頃の肖像画です。シルバーの刺繍やリボンで飾られたピンク色のドレスが印象的で、特に圧巻は衣装の質感表現!決して細密に描いているわけではないですが、軽やかな筆づかいで質感を表現する技術は、歴史的に見てもなかなかいないだろうと思います。肖像画の巨匠ヴァン・ダイクのなせる業と言ったところでしょうか。

 

 

も話はここで終わりではありません。

実はこの”メアリー王女”ですが、描かれたのは上の1枚だけではなかったのです。

 

 

2、ボストン美術館が所蔵する、もう1枚の「メアリー王女」

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

・132.1×106.3cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

これはボストン美術館に所蔵されている肖像画「メアリー王女、チャールズ1世の娘」です。見ての通り構図はほとんど同じです。違うのは着ているドレスくらいでしょうか。番組内では、ほぼ同じくらいの価値だろうとの事。もしオークションに出品されたら同じくらいの値がついても不思議ではないって事でしょうね。そんな作品が東京都美術館の「ボストン美術館展」で展示されたというわけです。(見逃してしまった方は、上の画像で我慢してほしいですね。)

 

ころで、なぜ同じような作品があるのだろうか??気になりませんか??

実はヴァン・ダイクはメアリー王女の肖像画を多数描いていたそうです。理由は当時の宮廷で、肖像画がとても重要なものだったからです。

と、肝心な理由を話す前に、ヴァン・ダイクについて気になる話をしたいと思います。宮廷画家として成功したアンソニー・ヴァン・ダイクですが、時として大きな賛否を呼ぶことがありました。それは実物と肖像画が似ていない!という話です。肖像画の方がより優雅で、美しく盛って描いていたというのです。当然チャールズ1世など、当時の権力者であれば自身の功績を残したいと美化する事はあるでしょう。でも今回のメアリー王女の様に子供の肖像画を描く際に、果たして美化する必要ってあるのだろうか!?

 

実は美化して描く理由は、同じ肖像画を多数描いた理由とも重なってくるのです。当時の肖像画の果たした役割が大きく影響しているわけですね!それは、以下で解説したい思います。

 

 

3、当時宮廷内で肖像画の果たした重要な役割って!?

何が見所!?

なぜ?ヴァン・ダイクはメアリー王女の肖像画を多数描いたのだろうか??

実は当時王室で、肖像画の果たしていた重要な役割が理由にあります。

 

ちなみに、メアリー王女は本名”メアリー・ヘンリエッタ・ステュアート”(1631‐1660)

チャールズ1世とヘンリエッタ・マリアとの間に誕生した長女。彼女は10歳頃にオラニエ公ウィレム2世と結婚しますが、その際に肖像画が利用されていたそうです。

 

「結婚当時のウィレム2世とメアリー王女」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

「結婚当時のウィレム2世とメアリー王女」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

・182.5×142cm、カンヴァスに油彩、アムステルダム国立美術館所蔵

つまり、国家間の同盟や自国繁栄のために、結婚目的のために肖像画が使用されたというわけです。今で言うお見合い写真の様なものですね。ヴァン・ダイクの肖像画が、実物よりもより優雅で美しく、そして大人びて描かれる事が多い理由は、結婚のためのお見合い写真として描かれたものだったから。こういった当時の背景を知ると、少なからず盛って描いていたのも頷けますね。(私たちが合コンに行く際に、多少なりおめかししたり、イイ格好をしていくのと同じ感覚だと思います。)

ちなみに、上の絵画「結婚当時のウィレム2世とメアリー王女」は、オラニエ公ウィレム2世との結婚当時の肖像画です。1641年なので、メアリー王女10歳の頃の様子です。対して、ウィレム2世はこの時15歳。当時2人とも10代ではありながら、でも作品を見る限り大人びて見える。この作品も多少なり盛っているのかもしれませんね。

 

 

 

余談:ヴァン・ダイクの肖像画で、ちょっと気になる話!

ヴァン・ダイクはチャールズ1世の宮廷画家として活躍した画家です。チャールズ1世だけでも約40点ほど描いたと言われています。当然ながら他にも、例えば王妃や子供たちの肖像画も多く描いています。その中に、ちょっと気になる作品があったので、紹介したいと思います。

 

「チャールズ1世の3人の子たち」(1635‐1636年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

「チャールズ1世の3人の子たち」(1635‐1636年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

・133.8×151.7cm、カンヴァスに油彩、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵

これは、チャールズ1世の子供たちを描いた作品です。

左から
チャールズ2世(1630~1685年)、後にイングランド国王
ジェームズ2世(1633~1701年)、後にイングランド国王
メアリー・ヘンリエッタ・スチュアート

 

ここでCheck!
さて、ここでちょっと気になるポイントが!

男の子2人に対して、女の子1人のはずが、なぜか描かれているのは女の子の格好をした子供が2人!!本来なら、真ん中の子供はジェームズ2世で男の子のはず。でも、女の子のような格好をしている。なぜだと思いますか??

 

実は、昔は幼少期に亡くなる割合が高かったからだそうです。特に男の子の死亡率は高かったと言います。そのため、ある程度の年齢まで女装させて育てていた。そういった背景が作品に描かれているわけですね。

時として王室の人生に関わる肖像画を描いていた画家”アンソニー・ヴァン・ダイク”。同時に、現在に当時の社会状況を伝えてくれる大事な資料としての役割も持っている。当時肖像画家の果たした役割が、相当大きかったのが分かってきますね。

肖像画は一見すると、なんてことはない作品かもしれないけど、実は観方によってはとても面白くもある!

どうです??今度肖像画を見る愉しさも増してくると思いませんか?

 

 
 
 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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