ヴァン・ダイクの「メアリー王女」の落札額!と当時の肖像画の役割

絵画(ART)

 

肖像画が高値で落札!

実は先日、番組「中丸雄一のまじっすか美術館」を見ていた時の事です。番組内で取りあげられた作品「メアリー王女の肖像画」の落札額に衝撃を受けたのでした。確かにバロック期を代表する”アンソニー・ヴァン・ダイク”の作品もあるだろうけど、それでも肖像画で落札額8億超えは凄いですね。

さて、今回はヴァン・ダイクの「メアリー王女の肖像画」と、肖像画が果たした当時の役割について迫ってみました。

 

 

ヴァン・ダイクの肖像画「メアリー王女」の落札額

オークション

中丸雄一のまじっすか美術館」。これは東京都美術館で開催の「ボストン美術館展」の魅力を伝える番組だとは思いますが、それでもこういったエピソードは見ていて面白いものですね。絵画は美術館でLIVEで見るのが一番の醍醐味ではあるけれど、それに付随する豆知識もまた楽しい!!ものです。

 

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

・158.2×108.6cm、カンヴァスに油彩、個人蔵

これは2018年、クリスティーズのオークションで高値落札されたヴァン・ダイクの肖像画「メアリー王女(チャールズ1世の娘)」。落札額は5,858,750GBP(日本円にして約8億4,000万円)。つまり8億円超えの落札額だったわけです。

メアリー王女が9~10才頃の肖像画で、シルバーの刺繍やリボンで飾られたピンク色のドレスが印象的。アンソニー・ヴァン・ダイクの肖像画は、もちろん人物の描写も必見ですが、衣装の質感の表現技術はまさに凄いの一言!決して細密に描いているわけではないのに、軽やかな筆づかいで質感を表現する技術は、歴史的に見てもなかなかいないだろうと思います。肖像画の巨匠ヴァン・ダイクのなせる業ですね!

 

さて、ヴァン・ダイクはメアリー王女の肖像画を多数描いています。すでに「ボストン美術館展」に行った人ならお気づきだと思いますが、ボストン美術館のメアリー王女との違いに気付きましたか??実はオークションで落札された肖像画は、実はボストン美術館展で見れるのとはちょっと違うのです。

 

 

ヴァン・ダイクのボストン美術館所蔵「メアリー王女」

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

・132.1×106.3cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

見ての通り構図はほとんど同じです。違うのは着ているドレスくらいでしょうか。番組では、価値はほぼ同じくらいだろうとの事。もしオークションに出品されたら同じくらいの値がついても不思議ではないって事でしょうね。そんな作品が東京都美術館の「ボストン美術館展」で観れるわけです。

さて、肖像画家アンソニー・ヴァン・ダイクですが、時として大きな賛否を呼ぶことがあります。実物と肖像画が似ていない!というのはよくある話。肖像画の方がより優雅で、美しかったりと多少なり盛って描いていたと言います。当然チャールズ1世など、当時の権力者であれば自身の功績を残したいと美化する事はあるでしょう。でも今回の様なメアリー王女の様に子供の肖像画を描く際に、果たして美化する必要ってあるのだろうか!?

実は当時の肖像画の果たした役割も影響していると言われています。

 

 

当時、肖像画の果たした役割って何!?

肖像画

ヴァン・ダイクはメアリー王女の肖像画を多数描いています。しかも構図がどれも似たり寄ったりしています。実はこれには当時王室での子供の肖像画の果たしていた役割があったから。

 

ちなみに、メアリー王女は本名”メアリー・ヘンリエッタ・ステュアート”(1631‐1660)

チャールズ1世とヘンリエッタ・マリアとの間に誕生した長女。彼女は10歳頃にオラニエ公ウィレム2世と結婚しますが、その際に肖像画が利用されていたそうです。

 

つまり…

国家間の同盟や自国繁栄のために、結婚目的に肖像画が贈られていたと言います。つまり今で言うお見合い写真の様なもの。ヴァン・ダイクの肖像画は実物よりもより優雅で、美しく、そして大人びて描かれる事が多いと言いますが、こういった当時の背景を知ると、少なからず盛って描いていたのも頷けますね。(私たちが合コンに行く際に、多少なりおめかししたり、イイ格好をしていくのと同じ感覚だと思います。)

 

 

ヴァン・ダイクのその他「メアリー王女」の肖像画

ヴァン・ダイクはチャールズ1世の宮廷画家として活躍した画家です。当然チャールズ1世や王妃の肖像画を多く描いています。チャールズ1世だけでも約40点ほどだったそうです。その他にも、王妃や子供たちの肖像画も描いています。

 

「チャールズ1世の3人の子たち」(1635‐1636年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

「チャールズ1世の3人の子たち」(1635‐1636年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

・133.8×151.7cm、カンヴァスに油彩、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵

左から
チャールズ2世(1630~1685年)、後にイングランド国王
ジェームズ2世(1633~1701年)、後にイングランド国王
メアリー・ヘンリエッタ・スチュアート

さて、ここでちょっと気になる点が!!真ん中の子供はジェームズ2世で男の子にも関わらず、女の子のような格好をしているのに気が付きませんか??昔は幼少期に亡くなる割合が高かったそうです。特に男の子の死亡率は高かったと言います。そのためある程度の年齢まで女装させて育てていたそうです。おそらくこの作品もそういった背景があるのだろうと思います。 

 

「結婚当時のウィレム2世とメアリー王女」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

「結婚当時のウィレム2世とメアリー王女」(1641年)アンソニー・ヴァン・ダイク

・182.5×142cm、カンヴァスに油彩、アムステルダム国立美術館所蔵

これはオラニエ公ウィレム2世との結婚当時の肖像画です。1641年なので、メアリー王女10歳の頃の様子です。対して、ウィレム2世はこの時15歳。当時2人とも10代ではありながら、でも作品を見る限り大人びている様にみえるのは、多少なり盛っているのかもしれませんね。

 

宮廷画家として活躍したヴァン・ダイクは、時として王室の人生の岐路に関わる肖像画を描いています。今回の様に肖像画から当時の王室の背景も見えてくるのは、絵画の醍醐味の1つ!歴史画や宗教画もいいけれど、肖像画も見方によっては、結構面白かったりもします。ぜひ、肖像画のオモシロさが分かってくれたら幸いですね。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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