”写実主義”とは? …代表する画家と絵画作品

Painter

 

今では当たり前の様にもなっている”写実主義”だけれど、
でも当時のフランス芸術からすると
かなりの衝撃的な出来事だったと言います。

 

それまでは多少なり”美化”して描くことが主流だっただけに、
生々しくありのままを描くという”写実主義”は
当時の絵画ルールからかなりかけ離れたものだったわけです。

 

もちろん当時”写実主義”は
全くと言ってもいいほど評価されなかったと言います。

 

「オルナンの埋葬」(1849年)ギュスターヴ・クールベ

「オルナンの埋葬」(1849年)ギュスターヴ・クールベ

ギュスターヴ・クールベオルナンの埋葬(1849年)

これはオルナンの墓地に集まる人々を描いたクールベの大作。
ちなみに”オルナン”とはクールベの生まれ故郷でもあります。

もちろんこのクールベの作品も
当時の評価は散々なものだったと言います。

実はこれはジャンル的には”歴史画”になるのですが、
この絵は当時の歴史画のルールを破ったものだったからです。

当時歴史画は古代の英雄や神々を美化して描く事が主流だったので、
この様に名もない人々を描いた作品を歴史画とするのは、
当時のルールからかけ離れたものだったわけです。

 

写実主義”とは!?

…英語では”Realism”、フランス語では”Réalisme”。
19世紀フランスの画家クールベがロマン主義に対抗し、
ありのままを正確に描く事を主張した「レアリスム宣言」が始まりと言われています。

【主な写実主義の画家】
・ギュスターヴ・クールベ
・ジャン=フランソワ・ミレー
・オノレ・ドーミエ
・エドゥアール・マネ

 

ここでCheck!
ポイントは美化する事なく生々しく描く事!

それまでのロマン主義は個人の感情や理想を追求した絵画運動で、
見る者の心を揺れ動かすようなドラマチックな表現が特徴的でした。

つまりロマン主義とは対象物を美化して描いていたわけです。

分かりやすく言えばロマン主義は
”大げさな表現”と言った方が分かりやすいでしょうか…。

でもこの写実主義は美化したりする事なく、
ありのままを生々しく描こうとしたわけです。

 

目の前にある現実をありのままに描く…

まさに写実主義はロマン主義とは相反するものなのです。

 

 

写実主義と代表作

風景を描く

画家クールベが「レアリスム宣言」を提唱したのが1855年の事。

実はこの年(1855年)はパリ万国博覧会があり、
クールベは10数点の作品を出品したといいます。

その中には大作「画家のアトリエ」と「オルナンの埋葬」があったわけですが、
この2作品は出展自体を拒否されてしまったと言います。
(当時の絵画基準からはかけ離れたものだったので、
仕方ないと言えば仕方のない事だと思いますが…)

 

クールベにとっての自信作が全く評価されなかった。
さすがにクールベはこれに激怒したと言います。

そしてクールベは博覧会の近くで個展を開くという暴挙に出たわけです。

この個展の目録に記された文章が
後に「レアリスム宣言」と呼ばれる様になったのです。

 

クールベの反骨精神というか、
信念の強さが見て取れるエピソードだと思いますね。

 

「画家のアトリエ」(1854‐1855年)ギュスターヴ・クールベ

「画家のアトリエ」(1854‐1855年)ギュスターヴ・クールベ

ギュスターヴ・クールベ画家のアトリエ(1854‐1855年)
・361×598cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵

 

ちなみにこの作品「画家のアトリエ」にはこんな副題が付けられています。
私の7年間の芸術生活を要約する現実的寓意

つまり描かれている人物全員に何かしらの寓意が込められています。

例えば絵の右側に描かれているのは、
友人や芸術愛好家といったクールベの支援者らしき人。

対して左側には貧しい人や乞食、民衆や商人などが描かれ
現実社会の悲惨さを表現されています。

社会の現実を生々しくリアルに描いているわけです。

本来”寓意画”(アレゴリーとも言います。)は、
抽象的な概念を擬人化したり抽象化して絵画で表現する事です。

寓意画は抽象的な概念を擬人化するものなのに、
これには当時クールベが生きていた時代の現実や悲惨さ描いているわけですね。

当時の絵画ルールを破っている点で、
クールベの作品が全く評価されなかったわけです。

 

でもこのクールベの運動は
後の近代絵画に大きな影響をもたらしたわけで、
例えばこの写実主義の流れがこの画家にも繋がってくるのです。

 

「落穂拾い」(1857年)ジャン=フランソワ・ミレー

「落穂拾い」(1857年)ジャン=フランソワ・ミレー

ジャン=フランソワ・ミレー落穂拾い(1857年)

この作品は収穫した後の田畑に落ちている稲穂を
農婦が一つ一つ拾っている場面を描いています。

これまで全く注目される事のなかった労働者の日常を、
ミレーはリアルにありのままに描いているわけです。

 

ジャン=フランソワ・ミレー(1814年~1875年)

バルビゾン派を代表するフランスの画家

ミレーは1849年に田舎町バルビゾンに移り住み、
ここで農民の生活や労働風景を積極的に描くようになりました。
(”バルビゾン派”と言われています。)

 

ここでCheck!
本当にミレーは写実主義なのだろうか?

このミレーの「落穂拾い」は
貧しい農村で働く人々をリアルに描いていて写実的とも言われています。

ただ私の解釈ではちょっと違う様にも思うのです。

実はミレーは農村で働く人達にある種の”偉大さ”を感じていたと言います。

元々ミレーは農家の家の生まれもあると思いますが、
農村の人々に対して特別な想いを込めていた様に思うのです。

”神聖さ”というか、”崇高さ”というか…

そのため労働風景をありのままに描いている様で、
でもミレーの作品からは”神聖さ”の様なものを感じてしまうのです。

 

本来”写実主義は対象物をありのまま描く事

でもミレーの作品は写実的でありながら、
でも”神聖”ともいえる奥深さが感じられるのです。

 

考え…・思い…
宗教的な神聖さというか…
単なる写実とは違う様に思うんですよね。

そういう理由で私の解釈では
ミレーは写実主義とは違う!と感じるのです。

 

解釈はそれぞれですが
あなたはどう思いますか?

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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