まるで宝石みたいな絵画! 画家”アダム・エルスハイマー”を解説!

アダム・エルスハイマーってどんな画家!?

 

巨匠と言われるルーベンスやレンブラントが、一目置く画家”アダム・エルスハイマー(Adam Elsheimer)

プロが認めるほどですから、相当素敵な絵を描く画家なのは容易に想像できると思います。実際に観れば分かりますが、”まるで宝石の様!”です。タイトルを”宝石絵画”としたのは、こういう理由だったわけです。

 

さて、言葉でどんなに説明したとしても、実際に作品を見ない事にはわからないと思います。以前日本でも展示された作品を元に、私なりに解説していこうと思います。

 

 

アダム・エルスハイマーの作品は、まさに宝石の様です!

「聖ステパノの石打ち」(1603‐1604年頃)アダム・エルスハイマー

「聖ステパノの石打ち」(1603‐1604年頃)アダム・エルスハイマー

・34.7×28.6cm、メッキした銅板に油彩、スコットランド国立美術館所蔵

これはアダム・エルスハイマーの「聖ステパノの石打ち(The Stoning of Saint Stephen)」という作品。現在はスコットランド国立美術館に所蔵されています。

ちなみに聖ステパノ(ステファノ)はキリスト教における最初の殉教者で、石打ちの刑によって命を落とした人物です。赤と金で装飾された衣を着た人物が”ステパノ”で、その後ろには石を持った人物が描かれています。これから石打ちの刑が執行される直前を描いた作品なのが分かると思います。

画像だとどこまで伝わるか分からないけれど、宝石のように綺麗だと思いませんか!?本音を言えば、間近で実物を観てほしいけれど、如何せん日本ではなかなか見る機会がない。2022年に東京都美術館や神戸市立博物館で展示されましたが、出会えた事自体が本当に貴重だったと思っています。

 

 

アダム・エルスハイマーの作品は、”何が宝石の様”なのか!?

何が凄いの!?

言葉でいくら説明したとしても、実物を観ないとなかなか分からないと思います。宝石の輝きや美しさは、本物を観ないと分からないのと同じで、アダム・エルスハイマーの宝石絵画だって同じです。

とはいっても、なかなか見る機会がないのも事実。逆にチャンスが訪れたら絶対に逃してほしくないですし、思う存分に作品を味わってほしいと思います。そのためにも、最低限の知識は必要だと思います。

 

は、何が宝石みたい!なのか?
私なりに分かりやすく解説しようと思います。

 

1つ目、宝石みたいに鮮やかで、光沢感があるから!

「聖ステパノの石打ち(detail)」(1603‐1604年頃)アダム・エルスハイマー

「聖ステパノの石打ち(detail)」(1603‐1604年頃)アダム・エルスハイマー

・34.7×28.6cm、メッキした銅板に油彩、スコットランド国立美術館所蔵

「聖ステパノの石打ち」は34×28cmと小さいサイズながら、物凄く細密に描かれています。しかも独特な光沢感があります。銅板の上に鮮やかな色彩で描かれているからです。塗装にちょっとでも詳しい人なら分かると思いますが、下地によって光沢感って大きく変わりますよね。それと同じ要領です。例えば、聖ステパノの衣の装飾は実に圧巻!!私も観ましたが、本当に宝石みたいな作品でしたね!^^

宝石の美しさは、実物を観てこそ分かる事!このアダム・エルスハイマーの作品も、実際に本物を観るに限るわけです。もし出会える機会があったら、絶対に見逃してほしくないですね。もちろんその時は、ルーペ(単眼鏡)は必須ですよ!!

 

2つ目、作品の数が、宝石みたいに少ないから!

「聖家族と洗礼者ヨハネ」(1599年頃)アダム・エルスハイマー

「聖家族と洗礼者ヨハネ」(1599年頃)アダム・エルスハイマー

・37.8×24.4cm、銅板に油彩

現在分かっている限りですが、作品数は約40点ほどだそうです。

短命で遅筆だったのが大きな理由と言われています。アダム・エルスハイマーは32歳という若さで亡くなりますが、画家としての人生で言えば約10年くらいでしょうか。しかも完璧主義で、妥協を許さない性格だったそうです。もう少し長生きしていれば、もっと作品が残せていたかもしれないけど…。

本当に悔やまれるというか、残念というか。

 

 

 

画家”アダム・エルスハイマー”の生い立ちと作品

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アダム・エルスハイマー(Adam Elsheimer)はドイツ出身の画家。同時代の画家で言えばルーベンスやカラヴァッジオがいます。ちょうどバロック期に活躍した画家です。実はこれから説明する生い立ちの部分でもちょっと触れますが、ルーベンスとも非常に仲が良かった事でも知られています。

 

「自画像」(1606‐1607年)アダム・エルスハイマー

「自画像」(1606‐1607年)アダム・エルスハイマー

 

エルスハイマー・アダム(Adam Elsheimer)1578ー1610

ドイツの画家。フランクフルト出身で、ローマで没。はじめウッフェンバハ(Philipp Uffenbach、1566ー1636)に師事したが、そのころフランクフルトに来ていたネーデルランドの画家コニンクスローおよびファルケンボルヒの影響を強く受け、のちヴェネツィア(1598ー1600)、ローマ(1600ー1610)で創作活動を送り、ティントレット、カラヴァッジオの影響を受ける。自然描写を得意とし、牧歌的な風景画の創始者の一人としてリュベンスにも感化を与えた。夜景画にすぐれ、作品には銅板油彩の技法による小品が多い。代表作は「大洪水」(フランクフルト、シュテーデル美術館)、「エジプトへの逃避」(ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク)

※「新潮世界美術辞典」より

 

1578年3月18日、アダム・エルスハイマーはドイツのフランクフルトで仕立て屋の家に生まれる。

フィリップ・ウッフェンバッハ(Philipp Uffenbach)に弟子入りし、本格的に画家としての道を歩み始めました。その後程なくして、エルスハイマーはヴェネティア、ローマへと旅をします。結局亡くなるまでの約10年をローマで過ごす事となります。

 

「創世記の大洪水」(1599‐1600年頃)アダム・エルスハイマー

「創世記の大洪水」(1599‐1600年頃)アダム・エルスハイマー

・26.5×34.8cm、銅版に油彩、シュテーデル美術館所蔵(フランクフルト)

これはアダム・エルスハイマーの代表作の一つ「創世記の大洪水

旧約聖書の『創世記』に登場する大洪水の様子を描いた作品です。皆さんもご存知だと思いますが、ノアの方舟(はこぶね)の話です。

 

「十字架高揚」(1603‐1605年頃)アダム・エルスハイマー

「十字架高揚」(1603‐1605年頃)アダム・エルスハイマー

・48.8×36.2cm、銅板に油彩、シュテーデル美術館所蔵

小さな銅板に、一体どれほどの人間が描かれているのだろう!?

エルスハイマーが描く群衆画には1つの特徴があります。手前の人物にはしっかりとスポットライトが当たり、細部まで細密的に描かれている。それとは対照的に奥の人物は、まるで背景の一部の様に描かれる。小さな銅板に人がてんこ盛りに描かれているのに、でも遠近感やバランスはちゃんと保たれているわけです。

 

「トロイの炎上」(1604年頃)アダム・エルスハイマー

「トロイの炎上」(1604年頃)アダム・エルスハイマー

・36×50cm、銅版に油彩、アルテ・ピナコテーク所蔵(ミュンヘン)

そしてもう一つ大きな特徴は、極端とも言える明暗の描き方!です。この絵を見るとレンブラントにも影響を与えたのが分かると思います。

 

「アポロンとコローニス」(1606‐1608年頃)アダム・エルスハイマー

「アポロンとコローニス」(1606‐1608年頃)アダム・エルスハイマー

・12.6×17.4cm、銅板に油彩、The Walker Art Gallery所蔵(イングランド)

さて、エルスハイマーが若くして亡くなった理由の一つに、経済的な問題があったそうです。確かに多くの画家から一目置かれていたけれど、生前中は画家として大成しなかったと言います。

ちなみに巨匠ルーベンスがエルスハイマーを高く評価していたのは有名な話。というか、仲が非常によく友人関係だったので、実際どれほど評価していたのかは分かりませんが。少なくともこんなエピソードは残されています。

偉大なる画家の死によって、絵画そのものが喪に服さなければならない

 

「エジプトへの逃避」(1609年)アダム・エルスハイマー

「エジプトへの逃避」(1609年)アダム・エルスハイマー

・31×41cm、銅版に油彩、アルテ・ピナコテーク所蔵(ミュンヘン)

アダム・エルスハイマーの一番の代表作が、この「エジプトへの逃避(The Flight into Egypt)」。

イエス・キリスト降誕後、ヨセフは当時の支配者ヘロデ大王の幼児虐殺の脅威を避けるため、マリアと共にエジプトに逃れている場面を描いています。

31×41cmという小さな作品でありながら、1,200を超える星が描かれていると言われています。肉眼では認識する事が難しいくらい小さい星が1つ1つ描かれている!完璧主義な性格のエルスハイマーを象徴する作品だと思います。細密な描写で、しかも遅筆なわけですから、この1枚を描くのに一体どれほどの時間がかかったのか…。考えただけでも、ちょっと末恐ろしい画家ですよね。

 

現在アダム・エルスハイマーの作品の多くは、海外の美術館に所蔵されています。しかも作品数も非常に少ないわけですから、日本で目にする機会はなななかない。出会える事自体が、とても貴重です。もしチャンスが巡ってきたら、見逃してほしくないですね。

なにせ、”宝石みたいな絵画”ですから!

 

 
 
 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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