鑑定士が木米の”如意”を見た途端、涙を流す。私もそんな作品に出会いたい!

作品を見て、涙を流せるって…

 

鑑定士が青木木米の如意(にょい)を目にした途端、涙を流す

私もいつかそんな名品に出会いたい!って思いますよね。これまで色々と作品、もちろん名画と呼ばれるものも観てきましたが、さすがに涙を流すほどの”品”には出会えていません。私が生きている間に出会えるか?もしくは出会いないかもしれないけれど、美術好きな人にとっては夢の様な話だと思います。

 

さて、この夢の様なシーンは、先日”金曜プレミアム(フジテレビ)” 「今夜解禁!開かずの扉~超カギ開け師が眠れるお宝発掘SP」の番組内での話でした。この番組は、ある名家の家を訪問し、”鍵開け師”が開かずの扉と呼ばれる金庫や蔵を開ける。そして中に眠るお宝を発掘し鑑定するという話です。

今回は舞台は、昔”薬問屋”だった秋田県のとある名家でした。家にある様々なお宝らしきものが出されていくなか、家主が鑑定士にある物を手渡します。それは長方形の形で、いかにも歴史あるお宝らしきものが入っていそうな木箱でした。そして木箱を開けたら、中から姿を現したのが江戸時代の名工”青木木米(あおきもくべい)”が作った陶器製の如意だった!鑑定士の浜崎さんは木米の如意を見た途端、涙を流すというシーンだったのです。
※”如意”は僧侶が読経や説法の時に手に持つ仏具の事。

 

今思い返しても、本当にイイ話ですよね~。確かに番組ですから、多少感動的に見せるため編集しているかもしれませんが、私はこの涙は”本物”だと確信したのです。しかも鑑定士の本能的行動だったわけですから、この木米には心を揺れ動かす何か?があると、感じ取ったわけです。

 

さて、青木木米には、人の心を動かす何?があったのだろう?

 

 

陶工”青木木米”の、こんなエピソード!

陶芸

青木木米(1767年~1833年)は、江戸時代後期に活躍した絵師で京焼の陶工(陶芸家)。27、28歳から陶芸を志し、奥田頴川(えいせん)に師事し、主に煎茶器を制作。他には中国古陶磁、青磁、赤絵、染付なども制作しています。

陶芸家としては遅いスタートでしたが、血の滲むような努力と情熱によって、後に永樂保全(えいらく ほぜん)仁阿弥道八(にんあみ どうはち)らと並び”京焼の幕末三名人”の1人に数えられるまでになりました。

 

「青木木米像」田能村竹田

「青木木米像」田能村竹田

これは田能村竹田氏による”青木木米”の肖像画。陽気で優しく、それでいて物腰柔らかい。そんな人柄が垣間見えてきませんか?でも陶器を作る時の姿勢は、絵とは違っていたのかもしれませんね。

 

そんな陶工”青木木米”の、作品に対する真摯さを表わす有名なエピソードがあります。

青木木米は釜の温度を判断する際、自身の耳を高熱の釜に近づけ、釜の中の様子を観察していた。そのため木米の耳は常に赤く腫れていた。それがもとで耳が不自由になり、後に木米は音を失くしてしまったのです。木米はたとえ耳が聞こえなくなっても、それでも執念で作品を作り続けていった。

陶工としての真摯な姿勢、情熱と言ったものでしょうか。私的な言葉で言うなら”命をすり減らす思い”だったと思うのです。

ちなみに参考ですが、木米の代表作を下記に挙げてみました。もし機会があったら、見逃すことなく見てほしいと思います。

 

(青木木米の代表作)
・「兎道朝暾図(うじちょうとんず)…東京国立博物館所蔵(重要文化財)
・「山水図…(重要文化財)
・「渓山幽居図(けいざんゆうきょず)…出光美術館所蔵(重要美術品)
・「染付龍濤図提重(そめつけりゅうとうもんさげじゅう)…東京国立博物館所蔵(重要文化財)

「染付龍濤文提重」(江戸時代)青木木米 「染付龍濤文提重」(江戸時代)

 

 

作品を見て、涙を流す… 私もそんな名品に出会いたい!

涙

さて鑑定士と言えば、作品の価値を鑑定するのが主な仕事ですが、鑑定する上でその作品を作った芸術家の事を熟知していないといけません。もちろん制作方法や技術、制作に至る歴史。それから作品に対する芸術家の思いや背景もある程度知っていると思います。作品の価値を付けるに当たって、作品や芸術家の知識は必要不可欠だと思うのです。

今回の金曜プレミアム 「今夜解禁!開かずの扉~超カギ開け師が眠れるお宝発掘SP」では、鑑定士は木米の如意に対して900万円という高値を付けました。でも本当は数字では表せない価値をこの作品に込めていたと思うのです。だから””として表れたと思っています。

 

鑑定士として見たら、市場価値や作品の価値を冷静に判断するのが大事だと思うので、私情を挟むのは本来なら駄目なのかもしれない。でも鑑定士も人間だし、時には今回の様に作品を見て、涙を流す…という行動もあってもイイと思います。やっぱり素晴らしい作品なわけですから、感動されるのも当然だと思うからです。

作り手がどんな気持ちでこの作品を作ったかは分からないけれど、自分が作った物で人を感動させていたと知ったら…。芸術家冥利に尽きるのではと思います。

 

金曜プレミアム 「今夜解禁!開かずの扉~超カギ開け師が眠れるお宝発掘SP」を見て、僕もいつしか作品を見て、涙を流せる…、そんな名品に出会いたい!と心底思ってしまった。夢叶うなら、近い将来出会ってみたいものですね。

さて、あなたは今までにそんな名品に出会った事はありますか?もしあったら、共有してもらえると幸いですね。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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