- 2020-2-20
- Artist (画家について), Artwork (芸術作品)
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ムリーリョの描く少年の絵画は、
なぜここまで愛らしく魅力溢れるのだろう?
日本ではそこまで知名度はないかもしれませんが、
スペインでは知らない人はいないほど有名な画家。
というのもムリーリョという画家は
スペイン絵画の黄金期を支えた一人でもあるからです。
(他にはベラスケスやエル・グレコなどもいます。)
「自画像」(1660年頃)
”バルトロメ・エステバン・ムリーリョ”
1617年誕生~1682年没
17世紀のスペイン黄金時代を代表する
バロック期セビーリャ派の画家です。
セビーリャ派とはカラヴァッジョ(1571年~1610年没)を代表する
明暗の対比による劇的な表現技法を用いた写実的な絵画が特徴。
作品を観れば一目瞭然だと思いますが、
強い明暗の対比と写実的な絵画…
つまりメリハリがあってリアルな絵画が特徴的です。
ムリーリョの代表作といえば、
美しく純粋無垢な感じの聖母を描いた「無原罪の御宿り」
そして愛らしい少年の姿を描いた絵画が特に挙げられます。
もちろんどちらも魅力溢れるのですが、
個人的にムリーリョというと、
少年を描いた画家と言う印象が強いのです。
今回はそんなムリーリョの描く
少年の絵画の魅力に迫ってみたいと思います。
まず見てもらいたい作品がこちら
・・・

「物乞いの少年」(1645-50年頃)バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
これはムリーリョの代表作「物乞いの少年」という作品。
別名”蚤をとる少年”とも呼ばれています。
現在ルーヴル美術館に所蔵されている作品で、
以前国立新美術館で開催した「ルーヴル美術館展」で展示された事もありました。
実この絵は今でも記憶に残っていて、
それだけ衝撃的な作品だったのを覚えています。
まずこのリアルな描写の説得力が凄い!!
特に必見は少年の足もと周辺の描写です。
この少年の足の汚れた感じだったり、
周辺に散らばっている食べこぼしの残骸の様子。
実に貧しい感じを生々しく描いていると思います。
それでも必死に生きようとしているたくましさと
もちろん子供ならではの愛らしい表情も魅力的!
このありのままの姿を描いた感じが何とも言えないのです。
こういったリアルな姿を描けるのも、
ムリーリョの卓越した観察力と画力の賜物だと思います。
まさにムリーリョしか描けない名画だと思います。
・・・

「少年と犬」(1655-60年頃)バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
そしてこれはムリーリョ作「少年と犬」(1655-60年頃)
現在エルミタージュ美術館に所蔵されている作品です。
これは「物乞いの少年」と違って、
少年の笑顔が何とも言えず印象的ですよね!?
とはいえ決して裕福そうには見えませんが…。
…生きるために働いている少年の姿
そんな風に見えませんか?
ムリーリョの生い立ち
ここでムリーリョの生い立ちについて簡単に話したいと思います。
1617年…
ムリーリョはスペイン南部にあるセビーリャで14人兄弟の末子として生まれます。
比較的裕福な家の子として生まれましたが、
ムリーリョが幼い時に立て続けに両親を亡くすという不幸に見舞われます。
13歳の頃…
ムリーリョは親戚の画家の工房で働き始めます。
27歳の頃…
ベアトリスという女性と結婚します。
この頃にフランシスコ会修道院の装飾事業という大規模な注文が舞い込んできます。この時期に上で挙げた「物乞いの少年」(1645-50年頃)を制作します。
この頃からムリーリョは画家として評価を高めていき、
地元セビーリャでは名のある画家として地位を築いていきます。
1663年(46歳頃)…
妻ベアトリスが亡くなります。
実はムリーリョは約10人の子供を授かりますが、そのほとんどを早くに亡くしてしまうのです。当時セビーリャではペストという疫病が流行っていた頃で、
ムリーリョの子供の多くをペストで亡くしてしまいます。私生活の面では妻、子供の死と辛い出来事が起こりましたが、
画家としては常に注文も舞い込んでくる状態でした。
スペインのみならずヨーロッパにもムリーリョの名声は広まり、
画家として確固たる地位を築いていきます。
「無原罪の御宿り」(1678年)
この頃にムリーリョの代表作と言われる「無原罪の御宿り」を数枚制作します。
1682年…
セビーリャにて亡くなります。(64歳)
このムリーリョは画家人生としては成功を収めますが、
子供を早くに亡くすという辛い経験など
一人の人間としての見ると決して恵まれた人生ではなかったと思います。
さてこのムリーリョの生い立ちから、
作品を見てみるとこんな魅力が分かると思います。
・・・
ムリーリョの描く子供の絵画の魅力とは?
それではムリーリョの生い立ちを思い返しながら、
描いた作品の魅力に迫ってみようと思います。

「ブドウとメロンを食べている2人の少年」(1645‐46年)バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
この2人の少年を描いた作品もそうですが、
光が当たっている少年の肌と対照的に暗く描かれている背景。
それに着ているボロボロの服と果物籠のリアルな描写。
このメリハリある明暗の描き方とリアルな写実は
何度見ても印象深く心に残りますよね!
でも…

「果物売りの子供」(1670-75年頃)バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
これは現在ドイツの国立美術館”アルテ・ピナコテーク”に所蔵されている作品。
この「果物売りの子供」を観ていてい思うのは、
惹かれる理由は単に明暗や写実性だけではない様に思います。
ここまでムリーリョの描く子供が魅力的なのは、
ムリーリョの生い立ちからも分かる通り、
子供の絵画に自分の子供をダブらせていたからだと思うのです。
ムリーリョ自身幼くして両親を亡くし
ある意味孤児として生きていた経験もあるし、
何よりも自身の子供を若くして亡くすという辛い経験。
絵画に思いを込めて描くのも分かる気がしますね。
もちろんムリーリョの生い立ちを知れば知るほど、
ますます作品からの魅力も増してくるわけですが…。
とにかくムリーリョに子供の絵を描かせたら、
彼の右に出る者はいないんじゃないかと思います。
・・・

「窓枠に身を乗り出した農民の少年」(1675-80年頃)バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
ムリーリョ作「窓枠に身を乗り出した農民の少年」(1675-80年頃)
これはロンドンのナショナル・ギャラリーにある作品。
無邪気な感じと可愛らしい少年の笑顔
この表情はムリーリョにしか描けない魅力でしょうね!
さて実は上の作品「窓枠に身を乗り出した農民の少年」は
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で見る事が出来ます。
国立西洋美術館で開催するので、お見逃しなく!!
【 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 】 (東京開催) ・場所:国立西洋美術館 ・時間:9:30~17:30まで (大阪開催) ・場所:国立国際美術館 |
ともかくムリーリョが一体どんな気持ちで
こういった子供の姿を描いていたんだろう??
まずは実際に作品を観るのが一番だと思います。
そしてあなたなりにその魅力を感じ取って欲しいですね!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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