何て読む!? 青木繁の「大穴牟知命(大国主神)」を解説!

出雲大社

 

神話画の作品名は、時として読めない様な難しい字を使う場合がありますよね。

 

現在アーティゾン美術館(元ブリヂストン美術館)に所蔵されている、青木繁の代表作大穴牟知命もその一つです。これまで何度もこの作品は目にしてきたけれど、正直言って今でも覚えられない。というか、読めないわけです。どういった場面を描いた作品なのかは分かってはいても、如何せん漢字が苦手なだけあって読めない。(苦手というか、単に覚えが悪いと言えばそれまでですが。)

ころで、この記事を読んでいるあなたはどうですか?

大穴牟知命を読めますか??

 

「大穴牟知命」(1905年)青木繁

「大穴牟知命」(1905年)青木繁

・カンヴァスに油彩、アーティゾン美術館所蔵

振り仮名を付けると、「大穴牟知命(オオナムチノミコト)」。倒れている男性(大穴牟知命)を、2人の女性が自分の乳を差し出し助けようとしている場面が描かれています。大穴牟知命は別名”大国主神(オオクニヌシノカミ)”と言い、日本国を創った神様とされています。知っている人も多いと思いますが、出雲大社や大神神社の祭神にもなっています。

日本国を創った神様という意味でも、日本人なら知っておきたい神様でしょうか。

 

さて、神話画はただ作品を見るだけでもイイですが、ストーリーを理解した上で観た方が断然面白い!!より作品を深く味わえるからです。次では大国主神の神話について解説していきますが、ぜひある程度のストーリーは知ってほしいですね。

 

 

「大穴牟知命」の神話を分かりやすく解説します!

そういえば、私が初めて「大穴牟知命(オオナムチノミコト)」を観た時の印象ですが、まるで西洋画の「ローマの慈愛」に似ているな~と思ったものです。「ローマの慈愛」は獄中で餓死しそうになっている父キモンを救おうと、娘ペロが自分の母乳を与える話。孝行の道徳的模範になっているほど有名な話です。実は「大穴牟知命」の神話を知ると、意外にも「ローマの慈愛」と似ているのが分かってきます。案外元となる部分は同じなのかもしれないですね。

 

日本最古の歴史書『古事記』は、神々の天地の始まりから推古天皇の時代に至る出来事を記載した書物。この中に今回登場する大穴牟知命(オオナムチノミコト)の神話が記載されているわけですね。『古事記』は学校の授業で学んだ人も多いと思いますが、内容まで深掘りして学んだ人ってあまりいないと思います。

今回せっかくなので、私なりに分かりやすくストーリーをまとめてみました。ぜひ、作品を見る際の参考にしてみてもイイと思います。歴史書といっても、意外とストーリーは昔話の様で面白い内容になっていますから。

 

古事記大国主神因幡の白兎~八十神の迫害

 

(登場人物)

大穴牟知命(オオナムチノミコト):別名”大国主神”、他には大穴牟遅(オオアナムジ)と呼ばれたりします。日本国を創った神様で、神話上では非常に女性からモテた神様だったようです。
八十神(やそがみ):大国主神の兄弟神。八十は「80」ではなく、「多くの、たくさんの」という意味。大国主神にはたくさんの兄弟神がいたって事ですね。
蚶貝比売(キサガイヒメ)蛤貝比売(ウムキヒメ):大国主神を救った2人の女性。

 

因幡の白兎

大国主神(オオクニヌシノカミ)には、たくさんの兄弟神(八十神)がいました。八十神は八上比売(ヤガミヒメ)という美しい神様に求婚をしようと考えていました。そこで皆で稲羽(因幡:いなば)へ出掛ける事にしたのです。しかし、大国主神は八十神たちからとても嫌われていたため、全員の荷物持ちをさせられる羽目に。

さて旅の途中、気多(けた)に差し掛かった時、裸で倒れ込んでいる兎(ウサギ)と出くわします。兎は先に通りかかった八十神に「塩水を浴びて、風と日光に当たりながら横になっていなさい。」と言われ、その通りにしたら体中が傷だらけになってしまったというのです。この話を聞いた大国主神は「真水で体を洗い、そこに生えている蒲(がま)の穂の花粉を体に付ければ良くなる。」と話します。兎は言われた通りにすると、体は元通り治ったのでした。

これが稲羽の素兎(しろうさぎ)です。

さて、稲羽の素兎は最後にこんな予言をします。「八十神は八上比売(ヤガミヒメ)を妻に娶る事はできない。大国主神は荷物持ちをされてはいるけれど、選ばれるのはあなたですよ!」と。

 

八十神(やそかみ)の迫害

稲羽の素兎の予言通り、八上比売(ヤガミヒメ)は八十神の求婚を退け、大国主神を婚約者として選びます。

当然これに対し八十神は大穴牟遅(オオアナムジ)に嫉妬し腹を立ててしまいます。そして大穴牟遅を殺そうとある計画を立てるのでした。

ある日、伯耆(ホウキ)国の手間山の麓に来た時、八十神は大穴牟遅にこんな話をします。「この山には赤い猪がいる。私たちが上から猪を追い落すので、下で受け止めて捕らえてくれ!」と。八十神は猪に似た形の大岩に火を付け真っ赤に焼き、そして山頂から焼けた石を転がしてしまったのです。

下にいた大穴牟遅は、転がってきた焼けた大石によって死んでしまったのでした。

これを知った母の刺国若比売(サシクニワカヒメ)は嘆き悲しみます。何とか大穴牟遅を助けようと神産巣日命(カミムスビノミコト)に頼み込みにいきます。そして神産巣日命は大穴牟遅を助けるため、蚶貝比売(キサガイヒメ)蛤貝比売(ウムギヒメ)の2人の女性を遣わします。

蚶貝比売(キサガイヒメ)は貝殻を削って粉を作り、そして蛤貝比売(ウムギヒメ)は蛤(はまぐり)の汁で溶いて母乳の様にして大穴牟遅に塗ります。すると大穴牟遅の火傷が癒え生き返ったのでした。

 

「大穴牟知命」(1905年)青木繁

「大穴牟知命」(1905年)青木繁

 

いかがです!?ストーリーも神話の話も、何も知らないで見たら「なぜ、女性は胸を出しているのだろう?」としか見えないかもしれない。でも話が分かってくると、よりも深みが増してくる感じがしませんか??これが神話画の一番の楽しみ方かな~と思うのです。やっぱり作品の背景を知るって、大事だと思いませんか??

 

ぜひ参考にしてみては??

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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