神と人間の恋物語「アモルとプシュケ(前編)」を詳しく解説!

クピドとプシュケの恋愛物語(前編)

 

絵画でもよく描かれるロマンチックな恋愛物語アモルとプシュケ(Amour and Psyche)

 

人間の娘”プシュケ”が神”アモル(クピド)”を探すために、命を賭けて試練を乗り越える冒険劇に、随所に描かれる人間模様。もちろんロマンチックな結末もあったりと、様々な要素が盛りだくさんの物語!それゆえ、知れば知るほど面白いわけです。

前回では超簡単解説と称して、手短に物語のあらすじを話しましたが、実は話せばもっと長くなります。今回は「アモルとプシュケ」の恋愛物語を、絵画作品を挙げながらもうちょっと詳しく話していこうと思います。

(前回の話)
ジェラールの作品を見ながら、物語「アモルとプシュケ」を簡単解説!

 

 

「アモルとプシュケ」を絵画作品と一緒に読み進めよう!

アモルとプシュケ

「アモルとプシュケ」の物語は、読めば読むほどその魅力にハマると思います。そしてストーリーを知った上で絵画を見ると、さらなる魅力的な世界観に引き込まれると思います。

ただ、ちょっと話が長くなってしまったので、今回は”前編”と称し絵画作品を見ながら、ストーリーを読み進めていこうと思います。

 

物語に登場する人物を紹介!

プシュケ(Psyche):人間の娘で、あまりの美しさにウェヌスが嫉妬するほどだったとか。
クピド(Cupido):愛の神と呼ばれ、日本ではキューピッドでお馴染み。他には”アモル(Amor)”や”エロース”など、様々な名を持っています。
ウェヌス(Venus):愛と美の女神ヴィーナス。クピドの母。
ゼピュロス(Zephyros):西風の神、春の訪れを告げる豊穣の風と言われています。

 

アモルとプシュケの恋愛物語前編

とある国に、3人の王女を持つ王様がいました。中でも末娘のプシュケ(Psyche)は飛び切り美しく、愛と美の女神”ウェヌス(Venus)”の妬みを買うほどでした。そこでウェヌスは子のクピドを呼び、「プシュケを誰かつまらない男と結婚させなさい!」と命じます。さすがの女神も、プシュケの美貌に対して快く思っていなかったわけです。嫉妬に燃えるウェヌスに目を付けられてしまったプシュケ。さて彼女の運命はいかに!?

 

命じられたクピドは、持っている弓矢でプシュケに呪いをかけようとします。

ところが、過って自分に矢を刺してしまったクピド。クピド自身がプシュケに恋をしてしまったのです。

 

「アポロに相談を持ちかけるプシュケの両親」(1695-97年頃)ルカ・ジョルダーノ

「アポロに相談を持ちかけるプシュケの両親」(1695-97年頃)ルカ・ジョルダーノ

・56.2×69.2cm、カンヴァスに油彩、イギリス王室コレクション

さて、一方プシュケの王様はなかなか結婚が決まらないプシュケを不安に思っていました。プシュケは万人から称えられる美しさを持ちながら、誰一人として婚約を望む者がいなかったのです。そこで王様はアポロンに相談を持ち掛ける事にしたのです。しかし神から受けた言葉(神託)というのが、何ともショッキングな内容だったのです。

「プシュケの結婚相手は人間ではない。恐ろしい怪物だ!」と。この言葉にさすがの王様も悲観に暮れてしまうのでした。当のプシュケは覚悟を決めたのか?神託に従い、一人山に残る事を決意したのでした。

 

「西風によってさらわれるプシュケ」(1808年)ピエール=ポール・プリュードン

「西風によってさらわれるプシュケ」(1808年)ピエール=ポール・プリュードン

 

一人山に残されたプシュケ。そこに風の神”ゼピュロス”がやってきました。ゼピュロスは風を巻きおこし、プシュケを遠くへと運んで行ってしまったのです。

 

眠りから目を覚ましたプシュケですが、そこにはこの世とは思えない光景が広がっていました。美しく煌びやかな宮殿が目の前に建っていたのです。人間の手によって造られたものとは到底思えない。神による仕業としか考えられない豪華な宮殿がそこにあったのです。プシュケは一瞬で目を奪われ、夢中になって宮殿中を見て回ります。

 

すると、こんな声が聞こえてきました。「ここは、あなたの宮殿だから自由にしてください。たくさん寝て、気が向いたらお風呂に入って、豪華な食事を召し上がってください。後は召使が何でもしますから。」と。確かに、御馳走は次から次へと出されてきます。でも召使など、誰一人姿がありません。

そして夜になると、見えない姿の夫が現れ、プシュケを妻として労ります。ところが明るくなる前に夫はまたどこかへ行ってしまう。見えない姿の夫は、プシュケの願いを色々と叶えてくれるけれど、でも一向に姿を見せてはくれないのです。この奇妙な結婚生活に最初は不気味に思っていたプシュケですが、さすがに毎日続くと慣れてきます。そして日に日に、こんな気持ちが湧き上がってきたのです。”声の主は、一体誰なのだろうか?”と。

日増しに、見えない姿に興味を持ちはじめたプシュケに、クピドはこんな約束をします。「決して私の顔を見てはいけないよ!」と。クピドは翼を生やした神です。自分の姿がバレるわけにはいかなかったわけですね。

 

「ランプと短剣を渡すプシュケの姉妹」(1695-97年頃)ルカ・ジョルダーノ

「ランプと短剣を渡すプシュケの姉妹」(1695-97年頃)ルカ・ジョルダーノ

・57.5×69.9cm、カンヴァスに油彩、イギリス王室コレクション

ところがプシュケは好奇心旺盛な性格。居ても立っても居られなくなります。そしてプシュケは2人の姉たちに、この奇妙な生活について相談を持ち掛けてしまうのでした。しかし2人の姉はプシュケの優雅な生活に嫉妬し、こんな事を言うのでした。「夫が化け物かもしれないから、一度姿を確かめるべきよ!」と。姉たちはプシュケに、ランプと短剣を渡したのでした。

 

「寝ているクピドの姿を見てしまったプシュケ」(1695-97年頃)ルカ・ジョルダーノ

「寝ているクピドの姿を見てしまったプシュケ」(1695-97年頃)ルカ・ジョルダーノ

・57.2×68.6cm、カンヴァスに油彩、イギリス王室コレクション

プシュケはランプと短剣を持ち、クピドの寝ている寝室に向かいます。そしてランプでそっと照らし、寝ているクピドの顔を確かめようとしました。すると、クピドは驚くほどの美青年だったのです。白い翼を生やした、それはそれは美しく、凛々しい姿がそこにありました。

 

「飛び立つクピドを引き止めようとするプシュケ」(1645年頃)ヤーコブ・ヨルダーンス

「飛び立つクピドを引き止めようとするプシュケ」(1645年頃)ヤーコブ・ヨルダーンス

・79.3×103.3cm、カンヴァスに油彩

プシュケはもう少し近づいて見ようとしますが、過ってランプの熱い油を落としてしまった。これに気付き、クピドは目を覚ましてしまいました。さすがのクピドも約束を破ったプシュケに対し怒り、プシュケの元を去ってしまうのでした。

 

ここでCheck!
ここまでの話を振り返ってみましょう!

女神ウェヌスからは嫉妬され、姉たちからも妬まれる。さらには愛する夫クピドにも逃げられるという始末。ここまでの話を見る限り、ハッピーエンド的な感じはしてこないと思います。しかも、後半はもっと大きな試練が待っていたりします。さて、どんな試練が??そしてどうやってプシュケとアモルは結ばれるの??それは後半のお楽しみ!!

 

 
 

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