- 2020-12-27
- Artwork (芸術作品)
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印象派の巨匠クロード・モネはパリの”サン=ラザール駅”の作品に、一体何を描きたかったのだろう!?
モネは興味の惹かれた風景を何枚も描いた事で知られて、この”サン=ラザール駅”シリーズで言えば計12点も描いています。もちろん同じ景色であってもそれぞれが違った光の変化が表現されていて、モネらしい風景の傑作だと思っています。
戸外で絵を制作する事のすばらしさを知って、そして光の微妙を感じ取ってカンヴァスに描いた。自然の本質をしっかりと観ていたモネならではの連作シリーズ「サン=ラザール駅」。12点をまとめて観たら、おそらくあなたも釘付けになるでしょうね!!^^
・75×100cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
モネと言えば自然溢れる風景画が印象的だけれど、この「サン=ラザール駅」は実に対照的!!自然は全く描かれていなく、文明的で都会的です。自然をこよなく愛したモネは一体なぜ?この様な都会的な風景を描いたのだろう??考えれば考えるほど、不思議でならないのです。
・82×101cm、カンヴァスに油彩、フォッグ美術館所蔵(米、ケンブリッジ)
画面を覆いつくすかの様な薄汚れた汽車からの煙。そして薄汚れた煙から見える大きなビルや建物の数々。近代的な風景が描かれているのが分かりますね。
ちなみに、パリは1870年代になると鉄道など交通網が造られてきた頃。パリを象徴するエッフェル塔は1889年に完成して、当時のパリの近代化の勢いが感じられるのは私だけだろうか!?
・59.5×80cm、カンヴァスに油彩、シカゴ美術館所蔵
さて、ここに描かれている”サン=ラザール駅”は1837年に開業したパリでは最も古い歴史を持つターミナル駅です。
モネがこのサン=ラザール駅の連作を描いたのが1877年。この1年もない間に約12点の作品を描いているのです。モネはこの”サン=ラザール駅”をとても気に入っていたのが見て取れますね!
・53.5×72.5cm、カンヴァスに油彩、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵
そんなわけでモネは今ではちょっと考えられない様な事をやってのけます。
モネは描きたい風景を描くために駅長から許可を取ったのです。モネの要求通りの場所に列車を停車して、蒸気を充満させたり。さらにはホームから人々を立ち退かせていたり…と。いくら何でもやりすぎ!!と思えるくらいの大胆な行動に出たわけです。
初めてこの絵を観た時に感じた事ですが、
ここからの駅の風景って普通に考えたらオカシイですよね!?
明らかにホーム上からの景色ではないのです。
まるで鉄道作業員が働いている場所から描いた様な…
そういった最初に抱いた疑問も、
このモネの逸話を知りスッキリと解決したのを覚えています。
・64×81cm、カンヴァスに油彩、マルモッタン美術館所蔵
モネは空気感や光の機微を表現するのが上手い画家なだけに、まるでその場にいるかの様な臨場感を感じさせてくれるのです。その場の雰囲気を感じ取りカンヴァスに表現する能力。
思うにモネの最大の凄さは
この”目に見えない空気感の描写力”にあると思うのです。
・60×80cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
・60×72cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
・60×80cm、カンヴァスに油彩、ポーラ美術館所蔵
・60×80cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
・64×81cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
・64×81cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
これまで”サン=ラザール駅”の連作は何枚も観てきましたが、
見る度に思う事はどれもが凄い!の一言ですね。
何といってもその場の”臨場感”が凄いと思います!
特に必見は列車の煙の描写です。
モクモクと漂う煙の描写は本当に絶妙で、
見ていると薄汚れた感じが伝わってきませんか!?
まるで霧が立ち込めているかの様な…
そんな薄暗く汚れた空気で充満した駅の雰囲気が伝わってくるのです。
クロード・モネは”その時の風景の空気感”を表現する画家だと思っています。
その時、その時間帯、その場の空気感。
そんなモネが煙に塗れた列車の風景画を描いたわけですから、
これほどまでモネにピッタリのモチーフってあるだろうか?
おそらく最高の組み合わせだと思います。
ぜひ観る機会があったらお見逃しなく!!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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