- 2020-12-27
- Artwork (芸術作品)
- コメントを書く

モネは同じモチーフの作品を何枚も描いた事はよく知られています。
例えば今回の”サン=ラザール駅”もその一つです。
モネと言えば”睡蓮”など自然の風景画を多く描いたイメージが強いかもしれません。
でも実は列車といった都会の風景画も数多く描いているのです。
・・・

「サン=ラザール駅、列車の到着」(1877年)クロード・モネ
クロード・モネ「サン=ラザール駅、列車の到着」(1877年)
・カンヴァスに油彩、82×101cm、フォッグ美術館(アメリカ)
画面を覆いつくすかの様な薄汚れた汽車からの煙。
そしてそんな薄汚れた煙から見える大きなビルや建物の数々。
自然とはかけ離れた近代的な風景が描かれているのが分かりますね。
※パリでは1870年代になると鉄道など交通網が造られてきた頃。
ちなみにパリを象徴するエッフェル塔は1889年に完成しています。
これまで”サン=ラザール駅”の連作は何枚も観てきましたが、
見る度に思う事はどれもが凄い!の一言ですね。
何といってもその場の”臨場感”が凄いと思います!
特に必見は列車の煙の描写です。
モクモクと漂う煙の描写は本当に絶妙で、
見ていると薄汚れた感じが伝わってきませんか!?
まるで霧が立ち込めているかの様な…
そんな薄暗く汚れた空気で充満した駅の雰囲気が伝わってくるのです。
この”サン=ラザール駅”は1837年に開業した
パリでは最も古い歴史を持つターミナル駅です。
モネがこの駅の連作を描いたのが1877年。
この1年もない間に約12点の作品を描いているのです。

「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」(1877年)クロード・モネ
クロード・モネ「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」(1877年)
・カンヴァスに油彩、64×81cm、マルモッタン・モネ美術館所蔵
これもカンヴァス全体を覆っている灰色の煙が印象的!
モネは空気感や光の機微を表現するのが上手い画家なだけに、
まるでその場にいるかの様な臨場感を感じさせてくれるのです。
その場の雰囲気を感じ取りカンヴァスに表現する能力。
思うにモネの最大の凄さは
この”目に見えない空気感の描写力”にあると思うのです。

「サン=ラザール駅、構外の線路」(1877年)クロード・モネ
クロード・モネ「サン=ラザール駅、構外の線路」(1877年)
・カンヴァスに油彩、60×80cm、ポーラ美術館所蔵
モネはこの”サン=ラザール駅”をとても気に入っていた様で、
今ではちょっと考えられない様な事をやってのけます。
モネは描きたい風景を描くために駅長から許可を取ったと言います。
モネの要求通りの場所に列車を停車され、蒸気を充満させたり。
ホームから人々を立ち退かせていたり…と。

「サン=ラザール駅」(1877年)クロード・モネ
クロード・モネ「サン=ラザール駅」(1877年)
・カンヴァスに油彩、75×100cm、オルセー美術館所蔵
初めてこの絵を観た時に感じた事ですが、
ここからの駅の風景って普通に考えたらオカシイですよね!?
明らかにホーム上からの景色ではないのです。
まるで鉄道作業員が働いている場所から描いた様な…
そういった最初に抱いた疑問も、
このモネの逸話を知りスッキリと解決したのを覚えています。
・・・

「サン=ラザール駅の外、列車の到着」(1877年)クロード・モネ
クロード・モネ「サン=ラザール駅の外、列車の到着」(1877年)

「サン=ラザール駅、外の光景」(1877年)クロード・モネ
クロード・モネ「サン=ラザール駅、外の光景」(1877年)
クロード・モネは”その時の風景の空気感”を表現する画家だと思っています。
その時、その時間帯、その場の空気感。
そんなモネが煙に塗れた列車の風景画を描いたわけですから、
これほどまでモネにピッタリのモチーフってあるだろうか?
おそらく最高の組み合わせだと思います。
あなたも一度観たら
モネの”サン=ラザール駅”には驚く事だろうと思います。
”その空気感と臨場感に!”…
ぜひ観る機会があったらお見逃しなく!!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。