牛の絵で知られる動物画家”コンスタン・トロワイヨン”を解説!

牛を描いた動物画家で知られる”コンスタン・トロワイヨン”を解説します。

 

”と”動物画家”で思い浮かぶ画家と言えば、私の場合はコンスタン・トロワイヨン(Constant Troyon)一択です。様々な西洋画家を見渡しても、おそらく唯一無二の存在ではないでしょうか。

 

バルビゾン派に属する画家だけに風景画も多く描いてはいますが、その多くの画には牛や羊と言った動物が描かれる事が多い。しかもどれも物凄くリアルで本物そっくり!よっぽど牛や動物を研究していないと、このリアルさは説明できませんね。

今回は動物を描く事に生涯を捧げた画家”コンスタン・トロワイヨン”について、私なりに分かりやすく解説していこうと思います。随所に作品も載せているので、絵画鑑賞気分で読んもらえたら幸いですね。

 

 

”コンスタン・トロワイヨン”の代表作を1つ挙げます!

考え

私の様にある程度美術が分かってきた人間からすると、どんな画家なのかは大体は分かるつもりでいます。一応ですが、自称”美術通”ですからね。でも始めての人からすると、変わった画家だな~と思うかもしれない。

風景画や風俗画、人物画などメインどころなジャンルがある一方、あえて牛や羊と言った動物を主役として描いているわけですから。もちろん私も最初の頃は、ちょっと変わった画家だな~って思ったりもしました。も、一度でいいからトロワイヨンの絵をじっくり観て下さい。ハッキリ言って、地味に凄い画家ですから!

 

「群れの帰宅」(1860年頃)コンスタン・トロワイヨン

「群れの帰宅」(1860年頃)コンスタン・トロワイヨン

・73.0×93.0cm、カンヴァスに油彩、ルーヴル美術館所蔵

おそらく上の「群れの帰宅」という作品は、トロワイヨンの一番の代表作だろうと思います。牛や羊たちと、おそらく動物を飼っているだろう人間も描かれています。でも動物画家と言われるだけに、動物(特に牛)が主役の様に見えてしまう。しかも、それらがまるで生きているかの様な描写!特に毛並みの描写は物凄くリアルですよね。

バルビゾン派の特徴でもある写実的な画風と、トロワイヨンを象徴する動物のリアル描写。動物と風景を描かせたら、おそらくトロワイヨンの右に出る者はいないのではないでしょうか!?

 

 

動物画家”コンスタン・トロワイヨン”について解説!

解説

さて、トロワイヨンがどういった絵を描く画家なのかが分かったところで、今度は画家の簡単な生い立ちなどに迫ってみようと思います。私がよく参考にしている辞書『新潮世界美術辞典』を元に、私なりに詳しく解説などを加えて話していこうと思います。

 

トロワイヨン・コンスタン

Constant Troyon 1810.8.28ー65.3.20

フランスの画家。父が働いていた国立磁器製作所があるセーヴルに生れ、パリで没。セーヴルの美術館長リオクルー(D. Riocreux)に師事した。自然を写生して研鑽し、バルビゾン派に仲間入りし、1833年のサロンでデビューした。1847年のオランダ旅行でポッテルの芸術に触れ、『白い牝牛』(1856、ルーヴル美術館)にみるように田園風景のなかに牛や羊の姿を導入するようになった。バルビゾン派中の動物画家。

・出典元:『新潮 世界美術辞典』

 

ず気になるワードがバルビゾン派でしょうか。このバルビゾン派は、名の如く”バルビゾン村に集まった画家たちの総称”をいいます。画風の特徴としては自然をありのままを描こうとした作風が特徴で、一言で言えば写実的が一番ピッタシくると思います。

 

ここでCheck!
ここで私のコメントを付け加えたいと思います。

バルビゾン派と一くくりで言っても、画家たちの個性は本当に多種多様!!同じバルビゾン派でも画家によって、それぞれ個性があるわけですね!ここがバルビゾン派のオモシロさでもあると思っています。

現在バルビゾン派の画家と言えば、これから挙げる7人が中心だったと言われています。コローミレーテオドール・ルソードービニーディアズデュプレ。そして今回の主役でもあるトロワイヨンの7人です。(バルビゾンの七星とも呼ばれています。)

 

「アプルモンの樫、フォンテーヌブローの森」(1850‐52年頃)テオドール・ルソー

「アプルモンの樫、フォンテーヌブローの森」(1850‐52年頃)テオドール・ルソー

・63.5×99.5cm、カンヴァスに油彩、ルーヴル美術館所蔵

ただ同じバルビゾン派とはいえ、それぞれ画家独自の個性や画風があります。例えばテオドール・ルソー(Theodore Rousseau)は目の前の現実をそのまま描いた風景画を特徴的と言われています。言うなれば”王道とも言える写実的風景画”と言ったところでしょうか。

対してコローに至っては、叙情的な風景画を多く描いていました。ひと昔前を思い懐かしむ様な…。ちょっと切なくもあり、感傷的と言った方がいいのか。ある意味ルソーとは真逆な感じにもなると思います。そしてミレーは神秘的というか、精神性がある画風が特徴。元々ミレーは農家の生まれだっただけに、農民や農村の人々に対してある種の崇高さを感じ取っていたのかな?と思っています。

 

「ノルマンディーの牧草地」(1852年)コンスタン・トロワイヨン

「ノルマンディーの牧草地」(1852年)コンスタン・トロワイヨン

・38.5×55.0cm、カンヴァスに油彩、シカゴ美術館所蔵

そんな中にあって、コンスタン・トロワイヨンは動物を好んで描いたわけです。これはこれで画家の個性であって、トロワイヨンならではの味わいでしょうね。それにしても、牛を描かせたら本当に上手い!!としか言いようがないですね。

 

ここでCheck!
は、なぜトロワイヨンは動物を描くようになったのだろう??

そのきっかけとなったのは、オランダの画家”パウルス・ポッテル”の作品だったと言われています。トロワイヨンは1846年から約1年間オランダに滞在します。そこで”パウルス・ポッテル”の牛や馬などの動物画に影響を受けたというわけです。

※”パウルス・ポッテル” 1625年ー1654年、動物画を多く描いた画家で写実的な作品が特徴。

 

「嵐の接近」(1849年)コンスタン・トロワイヨン

「嵐の接近」(1849年)コンスタン・トロワイヨン

・116.2×157.5cm、カンヴァスに油彩、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵

実のところトロワイヨンは最初の方、画家としてはあまり順調ではなかったそうです。

それが動物画家パウルス・ポッテルの作品によって、何かしら掴んだのかもしれませんね。トロワイヨン独自の画風が見えてきたって事でしょうか。ともあれ動物画家として歩むことになってから、トロワイヨンの名声は次第に各地へと広まっていったのです。

 

「草地の牛」(1852年)コンスタン・トロワイヨン

「草地の牛」(1852年)コンスタン・トロワイヨン

・93.0×75.0cm、カンヴァスに油彩、エルミタージュ美術館所蔵

ちなみに余談にはありますが、干支で使われる”(うし)”という漢字がありますが、実はこんな意味があるそうです。元々中国の漢字から来ているそうですが、芽が種子の中に生じていて伸びることができない状態を意味しているそうです。そんな事から「丑年」は、芽が出る発展の前触れの年とも言われるそうです。

つまりトロワイヨンにとって、牛はまさに発展の前触れ!だったというわけですね。^^

 

「体をこすりつける牛」(1859年)コンスタン・トロワイヨン

「体をこすりつける牛」(1859年)コンスタン・トロワイヨン

・113.0×145.5cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵

どんな経緯があるにせよ、牛を描かせたら天下一なのは間違いのない事実!!

今までにこれほどリアルな姿をした牛の絵を見た事ありますか!?

ゴツゴツとした牛の骨格や、本物そっくりな牛の毛並み!見れば観るほど生々しい!!今後トロワイヨンの牛の絵を見る機会があったら、ぜひじっくりと鑑賞してほしいですね!

もちろん、今回の記事も参考にしてもらえたら幸いですが。

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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