デューラーの「自画像」から見える、当時の芸術家の地位

芸術館の彫刻

 

ドイツを代表する画家と言えば、真っ先に”アルブレヒト・デューラー”の名が挙がってくると思います。

私が思うに、ほぼ満場一致でデューラー一択かもしれませんね。それだけ他の追随を許さないくらいレベルの高い作品が多いから。別にドイツに主立った芸術家がいないというわけでもないのにです。

 

「名画は嘘をつく」※著者:木村泰司
実は先日木村泰司さんの著書「名画は嘘をつく」を読み返していた時ですが、ふとデューラーの自画像に目が向いてしまったのです。

その時その瞬間の心境によって、同じ絵を観ても印象が変わってくるのと同じで、本もその時その瞬間で違った感想を持ったりします。たまには以前読んだ本を読み返すのもイイかもしれませんね!^^

 

「自画像」(1500年)アルブレヒト・デューラー

「自画像」(1500年)アルブレヒト・デューラー

・67.1×48.9cm、カンヴァスに油彩、アルテ・ピナコテーク所蔵

アルブレヒト・デューラー(Albrecht Durer)はルネサンス期に活躍した偉大なる画家で、当時としては珍しく自画像も多数描いています。時には貴族っぽい感じだったり、はたまたキリストっぽい感じの自画像だったりと、少なからず自分自身を高く見せているのかな?と思う感もあります。専門家から言わせれば自尊心(プライド)の高い性格だったという解釈もあるけれど、それはデューラーの生い立ちや当時のドイツ社会からも、何となく分かってくるもの。

 

アルブレヒト・デューラー

~ 1490ー94年ライン上流地域などに修業時代を送り、また活版本の木版挿絵画家として活動。1494年いったん帰国して結婚後直ちにヴェネツィアへ赴き、イタリア版画のほか、ルネサンス美術を研究、95年帰郷して工房活動を開始、ザクセン選挙候ほかのため祭壇画などを制作。1498年連作木版画集『黙示録』により汎欧的名声を得、イタリア美術などにも多大な影響を及ぼした。 ~

~ イタリア盛期ルネサンス美術の古典的人体美の理想を、単なる模倣に陥ることなく、完全にドイツ美術の伝統のなかに生かした点で、いかなる北方画家の追随をも許さない。ドイツ最大の美術家とみなされている。 ~

・出典元:新潮「世界美術辞典」より一部抜粋

これは新潮「世界美術辞典」の一部分ですが、当時からデューラーの活躍ぶりが伺えますね。

さて、肝心の「名画は嘘をつく」に触れていきますが、当時のドイツでは芸術家の地位は非常に低いものでした。社会の底辺に属するような職人として見られていたそうです。そんな時代のドイツで生きていたデューラーにとって、イタリア滞在はかなり居心地のイイものだったのかもしれませんね。

 

「自画像」(1493年)アルブレヒト・デューラー

「自画像」(1493年)アルブレヒト・デューラー

・56.0×44.0cm、カンヴァスに油彩、ルーヴル美術館所蔵

1494年にデューラーは初めてイタリアの地に足を踏み入れます。当時のイタリアはルネサンス期のピーク時で、芸術家の地位は相当高かったといいます。どれくらい高かったかというと、「名画は嘘をつく」では”文化人貴族”として表現されていました。芸術家を底辺の地位に見ていたドイツと、対照的に貴族として見ていたイタリア。同じヨーロッパなのに、全くと言っていいほど対照的なまでの社会的地位。当時のデューラーはどういった心境だったのでしょうね。

 

「自画像」(1498年)アルブレヒト・デューラー

「自画像」(1498年)アルブレヒト・デューラー

・52.0×41.0cm、カンヴァスに油彩、プラド美術館所蔵

こういったデューラーの生きていた時代を知ると、性格的にプライドが高かったというのも納得してしまいます。自画像を貴族らしく描いたのも、何となく理解できますよね。もしくは、芸術後進国のドイツを変えていきたい!そういった強い意志の表れから描いたのかもしれない。実際にデューラーに会った事のない私たちからすると、推測するしか出来ないわけですが、少なくともデューラーが偉大なる画家なのは間違いのない事実。

 

本のレビュー
一枚の自画像から画家の性格を伺い知る事ができ、さらには当時の社会状況までも見えてくる。本当に絵って素晴らしいものですよね。以前は「名画は嘘をつく」を読んでも、ここまで深くは考えなかったけれど、今読んだらこういった深い部分まで感じられるようになった。私の芸術を観る目がより養ってきた証拠なのだろうか??…

ふと、そう思った今日この頃でした。^^

 

 

 

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