- 2026-7-18
- Artist (画家について), Artwork (芸術作品)
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バックグラウンドが分かると、より作品への深みが増してくるというもの!
作品をより楽しむためにも、最低限の知識は必要だと思うわけです。
今回はそんな代表例として、横山大観の「屈原(くつげん)」を挙げてみたいと思います。
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【 今回の話の流れ 】 |
横山大観の「屈原」について解説!

「屈原」(1898年)横山大観
・厳島神社所蔵(広島県)
これは横山大観の代表作の一つ「屈原(くつげん)」です。
中国戦国時代の政治家で詩人”屈原”を描いた作品です。
伸びきった髭と腰ひものなびく描写から、追い風の中を決意を固めてしっかりと立ち尽くしている様子が描かれています。
見ようによっては、追い風の中を前進しているかの様にも見えます。
これは私の解釈になりますが、縦長の画面でもよかったろうに、あえて横長の画面に描かれているのがポイントだろうと思っています。
つまり大観は、単に”屈原”を描きたかったわけではなく、屈原という人物の生き様というか精神を描きたかったのだと感じられるからです。
屈原の背後に描かれた渦巻いた風?というか砂ぼこりから、追い風に負けじとする屈原の強い意志というか、憤怒が読み取れるからです。
もちろん屈原の表情からも読み取れますが、背後の空間を描く事でより強い感情が表現されている様です。
こういった画面構成からも、横山大観が並々ならぬ画家なのが分かると思います。
現在は広島県の厳島神社に所蔵されているので、東京ではなかなかお目にかかれない作品だったりします。
観た人もいるかもしれませんが、2018年の「横山大観展」で展示されたのが比較的最近でしょうか。

さて、今回大観の「屈原」を紹介しようと思った理由ですが、先日下村観山の「「闍維(じゃい)」について話したから。
「屈原」は1898年10月の第1回院展に出品され、観山の「闍維」と共に最大の評価を分け合った作品です。
1898年当時、横山大観も下村観山も互いをライバル視し、切磋琢磨していた頃だと思います。
そんな2人の作品が、共に”銀牌”という形で高く評価されたわけですから、両作品はある意味”対をなす作品”とも言えると思っています。
(ただ、観山はこの頃すでに売れっ子の画家だったので、大観の方が観山に対しライバル視していたのかもしれませんが…。)
「屈原」が描かれた時代背景…

五浦の日本美術院研究所(1909年) ※Public Domain画像
※手前から木村武山、菱田春草、横山大観、下村観山
ここでちょっと時代背景に触れますが、1898年は大観にとって大きな転換期でもありました。
この年、大観が師と仰ぐ岡倉天心は東京美術学校(現在の東京藝術大学)で学長の地位にありましたが、当時からかなり強烈な指導方針と考えがあり、周囲から疎まれる存在だったそう。
結局スキャンダルな一件などもあり、天心は排斥され辞職。横山大観や下村観山も天心に付き従い辞職し、共に日本美術院を発足させました。
天心の構想に賛同する形で発足させたものの、でも彼らの進もうとした道は決して追い風ではなかった。
ハッキリ言えば”強い向かい風”の状況だったわけで、そんな中で大観が制作したのが「屈原」という作品だったのです。
こういった背景があったのだと知ると、より作品に対する”想い”みたいなものが感じられるのは私だけでしょうか?
”屈原”とはどんな人物!?

「屈原の肖像」陳洪綬 ※Public Domain画像
”屈原(くつげん)”は、中国戦国時代の楚の政治家だった人物です。
屈原は非常に優秀な人物だったそうですが、周囲からの嫉妬や派閥争いなどによって、屈原はかなり厳しい立場へ追いやられてしまった。
秦の謀略を見抜き、楚の王”懐王”を諫めたものの結局は聞き入れてもらえず、終いには楚の将来に絶望し命を絶ったというわけです。
ここまでの話で、まるで天心たちの境遇と似ている様に思いませんか?
つまり、追い風の中を決意を固めて前進する屈原と、師と仰ぐ岡倉天心の境遇と重ね合わせて描いたというわけです。

どうでしょう!?
横山大観の描いた「屈原」ですが、一見するとちょっと強面な感じの人物が描かれた作品に見えるでしょう。
でも、当時の時代背景などが分かると、より作品に深みが増してくるから不思議です。
私個人の解釈になりますが、横山大観の天心に対する深い尊敬の念みたいなものが、作品から読み取れてしまうのです。
もちろん当時彼らが置かれていた厳しい状況を打破したい!といった意志みたいなものも作品に込められていたのかもしれない。
とにかく、この「屈原」という作品からは、想像以上に重い”想い”が感じられるのは私だけでしょうか!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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