『神曲』に登場する”パオロとフランチェスカ”の悲恋について解説! 

ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカとパオロ(shutterstock画像)

 

パオロとフランチェスカの切なく悲しい恋愛話

これまで様々な芸術作品に描かれてきた題材で、それだけ多くの人に好まれてきたって事でしょうか。確かにストーリーを知ると、現代のサスペンスドラマにもなりそうな内容で、もし私が画家だったら間違いなく描いていたかもしれない!そういった悲劇と純愛の話なのです。

 

先日開催した「ルーヴル美術館展 愛を描く」でも展示され、今後も様々な場面で見る機会があるだろう”パオロとフランチェスカ”の話。ぜひ、この機会に”パオロとフランチェスカ”のストーリーは押さえてほしいと思います。

 

 

「パオロとフランチェスカ」は、現代でも通用するドラマ

何が見所!?

実に切ないというか、悲しいというか…。

「パオロとフランチェスカ」は、現代でもサスペンスになりそうな話です。純愛ではあるんだけれど、ストーリー的には本当に悲惨です。文学や芸術作品の題材として選ばれる理由も分かる気がしますね。もし私が画家だったら、間違いなく”パオロとフランチェスカ”をモチーフに絵を描いていたでしょう。それだけ、心揺さぶられる話だし、何よりも制作の衝動に駆られると思います。

絵画でもよく描かれる話なので、ぜひこの機会にストーリーだけでも押さえてほしいと思います。

 

「パオロとフランチェスカ」(1819年)ドミニク・アングル

「パオロとフランチェスカ」(1819年)ドミニク・アングル

 

まず、参考として『西洋美術解読事典』から、どういった話なのかを見てみようと思います。

パオロとフランチェスカ Paolo and Francesca(ダンテ『神曲』地獄篇5)

フランチェスカ・ダ・リミニ(1288頃没)はリミニの城主で不具のジャンチョット・マラテスタに嫁した。フランチェスカは義弟のパオロと恋に落ち(それは一緒に本を読んでいたときだという)、離れ難い仲となる。ジャンチョットはある日2人が一緒にいたところを不意打ちし、恋人たちを刺し殺した。ダンテはパオロおよびフランチェスカの兄弟を知っていたので、恋人たちを『神曲』に登場させたのである。2人は他の史上名高い悲劇の恋人たちと共に、地獄の第二圏を風に吹かれて永遠に漂うという罰を受けている。この主題は19世紀のロマン主義の画家に愛好された。恋人たちは坐って読書しているか、あるいは本をなげうって抱き合っている。2人が地獄の中にいて、ダンテとウェルギリウスがこれを見ているという表現もある。

・出典元:西洋美術解読事典

どうです??

何とも切ないというか、悲しい話ですよね。

政略結婚させられた女性フランチェスカですが、どうしても相手の男性を好きにはなれなかった。逆に義弟パオロと恋に落ちてしまったのです。結果的に、不倫にはなるけれど、でも純愛だから仕方がないと言えば仕方がないのかも。

人を好きになるって、どうしようもできないですからね…。(経験談になりますが)

 

「パオロとフランチェスカ」(1887年)ガエターノ・プレヴィアーティ

「パオロとフランチェスカ」(1887年)ガエターノ・プレヴィアーティ

・98×227cm、カンヴァスに油彩、アッカデミア・カッラーラ美術館所蔵

そして不倫がバレて夫ジャンチョットによって、フランチェスカとパオロは殺されてしまう。

でも話はここで終わりません。『神曲』の著者ダンテは少なからず2人と接点があったそうで、この悲劇の恋人を『神曲』に登場させてしまいます。しかも愛欲の罪によってフランチェスカとパオロは、吹きすさぶ暴風の渦で一生苦しめられる地獄へと堕とされてしまうです。

 

簡単に話すと、こういったストーリーになります。何ともやるせない気持ちになってきますよね。純愛ではあるんだけど、当時の倫理観で言ったら、不倫は良くないですし…。(もちろん今も良くありませんが)

さて、美術作品、特に絵画はドラマの一場面を切り取った形で表現される事がほとんど。ストーリーの一場面が絵画に描かれるわけです。ここまでの話で、一連の流れでストーリーは把握できたと思うので、今後絵を見る際、どういった場面を描いたものなのか??より深く作品を楽しめるのではないかと思います。

 

 

ダンテの『神曲』と”パオロとフランチェスカ”

絵画の筆

さて、パオロとフランチェスカの悲恋話は、これまで多くの作品に描かれてきた題材です。

先ほどちょっと触れましたが、絵画はドラマの一場面を切り取った形で描く事がほとんど。つまり、どの場面を描くのかは画家次第なわけです。パオロとフランチェスカがキスをしている場面が描かれていたり、時には殺されているシーンもあるでしょう。はたまた、地獄で抱き合っている場面かもしれない。

実は、パオロとフランチェスカはダンテの『神曲』とセットで描かれる事も結構あります。例えば、「ルーヴル美術館展 愛を描く」で展示されたアリ・シェフェールの作品だってそうです。

 

「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」(1855年)アリ・シェフェール

「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」(1855年)アリ・シェフェール

・171×239cm、カンヴァスに油彩、ルーヴル美術館所蔵

作品名「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊

画の左側で抱き合っている男女が、パオロ(男)とフランチェスカ(女)です。そして右側に描かれている赤い衣装を着た人物が『神曲』の著者でもあるダンテ、奥に描かれているのがウェルギリウスになります。画にダンテとウェルギリウスが描かれている時点で、地獄が舞台なのが分かると思います。

パオロとフランチェスカは死んで地獄へ堕ち、地獄の暴風の渦に巻き込まれても…、それでも2人は強い愛で結ばれている。暗がりからダンテとウェルギリウスは、そんな強い絆で結ばれた2人を見つめている。

こういった場面を描いているわけですね。

 

「パオロとフランチェスカ」(1872年)ジョージ・フレデリック・ワッツ

「パオロとフランチェスカ」(1872年)ジョージ・フレデリック・ワッツ

・152.4×129.5cm、カンヴァスに油彩、Watts Gallery所蔵

確かに地獄に堕とされたパオロとフランチェスカですが、でも地獄の拷問によって苦しめられている表情は読み取れない。どちらかと言えば、愛し合う2人が強調されている感じがします。本来、地獄を描くなら拷問で苦しむシーンを描くのが通常かもしれない。そこをあえて、地獄に居ながら強い愛で結ばれた2人を描いているわけです。あの世でパオロとフランチェスカが結ばれてほしい!そういった願いが込められている様に感じませんか??

もちろん、ダンテも同じ気持ちだったのかもしれませんね。『神曲』地獄篇を読んでみても、地獄の拷問で苦しむ描写はほとんど書かれていないからです。

 

ここでCheck!

実は私がパオロとフランテェスカの話を知ったのは、以前『神曲』を読んだのがきっかけでした。とは言っても、原文で読んだわけではないですが…。というか、原文で読もうにもかなり難しいですしね。

ダンテ『神曲』が分かる!おススメの本は?
『神曲』は歴史的傑作とまで言われる文学作品です。絵画でも描かれる事が多いだけに、ぜひ一度は読んでほしいと思っています。最近は分かりやすく書かれた本もいくつもあるので、ぜひ参考に読んでみてもイイと思います。

 

「パオロとフランチェスカ」(1863年)ギュスターヴ・ドレ

「パオロとフランチェスカ」(1863年)ギュスターヴ・ドレ

・279.4×194.3cm、カンヴァスに油彩

改めて思いますが、絵画は画家の解釈がモロに表れると思っています。悲惨な状態で描かれる事もあれば、時にはチョイハッピーな感じで締めくくられる事もある。画家の解釈や想いで、いかようにも表現できるのが絵のオモシロさで魅力!でしょうね。もちろん、観る側にとっても同じことが言えます。観る人によって様々な解釈がされるからです。

 

回のまとめとして

絵画でも描かれる事が多い”パオロとフランチェスカ”の話ですが、個人的には地獄で抱き合うシーンが一番好きですね。確かに殺され地獄に堕とされるという悲惨な結末になってしまった2人ですが、でも最後だけでもハッピーエンド的にさせてあげたい!そういう気持ちはあります。悲惨なままで終わってほしくないですからね。

それに、地獄へ堕とされても愛し合っている恋人。この描写って、何だか素敵にも思えませんか?別に”愛”に飢えているというわけではありませんが、どんな形であれ純愛はイイものですよね。^^

 

ちなみに、ちょっと余談になりますが…
今回使用しているトップ画像(アイキャッチ画像)ですが、味のあるイラストだと思いませんか!?

ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカとパオロ(shutterstock画像)
画を思わせる、コメディテイストな画風は、実にオモシロイと感じ使用してみました。これはshutterstockの画像で、私がよく使用しているイラストや画像を扱っているサイトです。料金は多少かかりますが、結構アーティステックな素材が多いので、私は好んで愛用しています。もちろん利用規約や使用範囲を考慮した上で、扱っていますが、興味のある方は参考にどうぞ!

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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