- 2016-10-9
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~ この時代だからこそ評価される”若冲の絵” ~
ここ最近になって
若冲の絵が再評価されました。
もちろんその理由は、
若冲の残した絵が素晴らしい!からだと思います。
実は私が思う事ですが、
若冲は今の時代だからこそ評価されたのだと思うのです。
というのも若冲の絵の凄さは
その”卓越した技法”にあるから!
それではその技法について
私なりに話していきたいと思います。
~ 若冲の評価される卓越した技術とは? ~
その1…
… ”若冲の精密描写”
これは絵画展に行っても、
なかなか分かりにくいかもしれません。
この精密ともいえる描写は、
近づいてじっくりと見ないことには分からないのでは?と思います。
私はこの原寸大の画集
『若冲原寸美術館 – 100%Jakuchu!』を見て思った事ですが~
(中身は見せられないので、言葉での説明になります。)
例えば鳥の羽を描いたとしても
羽の線一本一本が精密に一寸の狂いもなく描かれているのです。
普通に絵を見る限りでは気が付かない、
本当に小さな部分でも精密に描かれています。
なぜここまで線一本一本まで、
細かく精密に描いたのか…。
それは若冲の鳥や植物の絵は、
比較的”白”を基調としたものが多く、
逆に背景は全体的に薄暗く、トーンを低くしているから。
すると背景が薄暗いので羽や葉っぱ、
花が白いのでより際立って綺麗に見えるのです。
まるで浮かび上がってくる様な…
そんなリアルな描写を目指していたからとも言われています。
この精密ともいえる線や点の描写は
”若冲のこだわり”でもあり、
”若冲に卓越した技術の極み!”だとも思います。
これは見る価値が十分あると思います!
そして2つ目の凄さは…
(イメージです)
… ”絵具へのこだわり”
この絵具へのこだわりは、
今だからこそ分かる事だと思います。
現代の科学的な調査によるものもあると思います。
実は若冲は紙ではなく、
”絹地”など布に描くことも多かったそうです。
そこには
こんな理由があるようです。
…それは絵具に顔料や染料を使い分けたから。
顔料で色を塗り、
染料では染み込む性質を利用し色を付けた。
つまり絵具の性質を理解したうえで、
絵具を使い分けていたそうなのです。
この色を塗るのと、染み込ませるでは、
微妙に色合いや深さが違ってくる様です。
例えば色を染み込ませる事で、
葉っぱや花びらの薄く柔らかい感じを表現した。
逆に花粉などは色を載せる事で、
厚みや立体感を表現したとも言われています。
もちろんこれも”実物模写”を目指しての事だろうと思いますが、
普通に名のある画家でもここまでこだわる事はそうはしないと思います。
画家である前に、
ある意味”研究者”的な要素もあったのかもしれませんね。
そして3つ目が…
… ”技法の多彩さ!”
絵具を使い分けていただけでもスゴイ事ですが、
描いていく技法や技術の多彩さも凄いと言われています。
例えば、
若冲はこんな技法までも使っています。
”裏彩色”という技法です。
…裏彩色とは表からと裏から絵具を塗る事。
元々中国絵画などでよく使用された技法だそうですが、
若冲はこの”裏彩色”をより応用させていたと言います。
裏彩色で裏に色を施すことで、
表から絹の縫い目の隙間を通して裏面の色が見える様になるそうです。
これによって色の深みや
微妙な色合いまでも再現していたそうです。
また見る角度によって、
色合いが変わってくるとも言われています。
普段絵画展で見るとなると絵の表面しか見れないので、
まさか裏面にも色が施されているとは思いませんよね!?
こういう普段見る事のない裏面にも、
若冲なりの見えないこだわりがあるのがスゴイですね。
この様に若冲の技法を大きく3つに分けて話しました。
私なりに分かりやすくかみ砕いて書いたので、
専門家の人から言わせたらちょっと違う!
って言われるかもしれませんが、
多少なりとも若冲の技法や
スゴさが分かってもらえたかと思います。
実はここまで挙げてきたどの技法も、
すべては”実物描写”を目指したからだと思いますが…。
でも若冲の凄い点は、
このリアルな描写だけではなかったのです。
時には”ユーモア溢れる絵”も描いていたのです。
若冲は実に様々なジャンルの絵を描いていたのです。
逆にここまで見ていくと、
若冲の目指した画風って何だったのだろう?と思うのです。
単に”絵が好きで、絵を極めたかったから”なのか…。
それは素人の私からは分からない事ですが~
でも一つだけ分かることは、
とにかく”絵に対するこだわりは尋常ではないこと”です。
普通に考えて、
羽や葉や実など一つ一つを実物の様に描こうと思いますか?
何百、何千とある葉っぱや実を、
そのまま一つ一つをリアルにこだわれますか??
普通なら妥協してしまう部分にも、
若冲はこだわり抜いたわけです。
そう思うと、
”スゴイ!!”としか言いようがないのです。
出来る事なら若冲の絵はルーペなどを使って
じっくりと観察するのが一番イイのかもしれません。
でも若冲展はここ最近人気があるので、
落ち着いてじっくり見る事は難しいかもな~。
やっぱりコレクションできたら、
それに越したことはないのですが~。
実は今回再評価されたきっかけの一つが、
”プライス”という人物の影響が大きいと言われています。
よく”プライスコレクション”の名で見る事が多いと思います。
プライスはアメリカの芸術収集家で、
特に日本画を多く集めていたと言われています。
別に外国人だからと区別するわけではないのですが、
日本人が日本の作品の凄さをあまり評価できなかったなんて…
私が偉そうに言えたことではないのですが、
日本人として日本の絵や文化について
最低限知る事って必要なのかな~と思ったのです。
西洋画もイイですがやっぱり日本人として
日本の芸術も見てみようと思います。
そんなわけで私は
”京都へ行って『若冲展」を見に行こう!”…と。
あなたも若冲の絵が見れる機会に、
ぜひあなたの目で見る事をお勧めします。
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