伊藤若冲の絵画がなぜ再評価されたのだろう?

相国寺承天閣美術館「Ito Jakuchu」

 

江戸時代の中期頃、
京で活躍した絵師”伊藤若冲(Ito Jakuchu)”

ここ最近になってまた再評価されました。

そのきっかけとなった立役者が、
日本画蒐集家のアメリカ人”ジョー・D・プライス”氏。

もちろん伊藤若冲が再評価された理由は、
”絵画が素晴らしいから!”に尽きると思います。

 

考え…・思い…
でも私が思う事ですが、
若冲は今の時代だからこそ評価されたと思っています。
というのも若冲の絵の凄さは
卓越した技法にあると思っています。

しかもそのほとんどは
科学的分析から分かる事ばかりだからです。

 

・・・

1、若冲の卓越した精密描写

まず伊藤若冲の凄さの1つがこの”精密さ”にあると言います。

例えば鳥の羽を描いたとしても
羽の線一本一本が精密に一寸の狂いもなく描かれている。

 

「南天雄鶏図」(1761‐1765年頃)伊藤若冲

「南天雄鶏図」(1761‐1765年頃)伊藤若冲

伊藤若冲南天雄鶏図(1761‐1765年頃)

羽一つ一つの描写もさることながら、
上画面の大部分を占めている南天の描写も凄い!のです。

実一粒一粒の明度を変えて描く事で、
全体的な奥行きを出していると言います。

 

考え…・思い…
普通に絵を見るだけでは気が付かない、
本当に小さな部分も精密に描いているのです。

この精密さを味わう一番の方法は、
近づいてじっくりと観察するに限ると思います!

これは普通に絵画展に行っても、
なかなか分かりにくいかもしれないですね。
(出来ればルーペが必要ですよ!!)

この精密ともいえる線や点の描写は
”若冲のこだわり”でもあり、
”若冲に卓越した技術の極み!”だとも思います。

 

 
私はこの原寸大の画集
若冲原寸美術館 – 100%Jakuchu!を見て実感した事ですが…。
(中身は見せられないので、言葉での説明になります。)

 

 

2、若冲の絵具へのこだわり

この絵具へのこだわりは、
今だからこそ分かる凄さ!だと思います。
現代の科学的な調査によるものが大きいと思います。

実は若冲は紙ではなく、
”絹地”など布に描くことも多かったといいます。

そこにはこんな理由が…
…顔料や染料を使い分けたから!

伊藤若冲は顔料と染料の性質を理解していた様です。

”顔料”は粉末状を液体にして絵具として使用するもの。
染み込ませるというより上に載せるイメージの絵の具です。

対して染料は日本伝統の着物でもある様に、
染み込む性質を利用して色を付けるもの。

「老松白鶏図」(1757‐1760年頃)伊藤若冲

「老松白鶏図」(1757‐1760年頃)伊藤若冲

伊藤若冲老松白鶏図(1757‐1760年頃)

まず気になるのが右上端に見える”太陽”です。
これには硫化水銀を成分とする赤色顔料辰砂”で描かれています。

辰砂(しんしゃ)…
硫化水銀からなる鉱物で、化学式はHgS
別名”賢者の石”と呼ばれています。

そして雄鶏の鶏冠もこの”辰砂”で描かれていますが、
柔らかい質感を表現するために上から染料の赤色を載せているといいます。

 

この色を載せるのと染み込ませるでは、
色合いや深さが微妙に違ってくると言います。

例えば色を染み込ませる事で、
葉っぱや花びらの薄く柔らかい感じを表現した。

逆に花粉などは色を載せる事で、
厚みや立体感を表現したとも言われています。

もちろんこれも”実物模写”を目指しての事だろうと思いますが、
普通の画家でもここまでこだわる事はそうはしないと思います。

思うに伊藤若冲は画家というより”研究者”的な要素が強かったのかもしれませんね!

 

 

3、若冲の技法の多彩さ!

絵具を使い分けていただけでもスゴイ事ですが、
描く技法や技術の多彩さも凄いと言われています。

例えば、
若冲はこんな技法までも使っています。

裏彩色”という技法です。

…裏彩色とは表からと裏から絵具を塗る事。
元々中国絵画などでよく使用された技法だそうですが、
若冲はこの”裏彩色”をより応用させていたと言います。

 

「老松孔雀図」(1757‐1760年頃)伊藤若冲

「老松孔雀図」(1757‐1760年頃)伊藤若冲

伊藤若冲老松孔雀図(1757‐1760年頃)

 

ポイント!
この絵で特に注目は鶴の描写です。

鶴を覆う白い羽の中に金色が透けて見えると言います。

ここには裏彩色で黄土が使われているから。
これによって白がより輝いて見えるわけです。

裏彩色で裏に色を施すことで、
表から絹の縫い目の隙間を通して裏面の色が見える様になるわけです。

これによって色の深みや微妙な色合い、
それから見る角度によって色合いも変わってくるわけです。

 

「梅花群鶴図」(1761‐1765年頃)伊藤若冲

「梅花群鶴図」(1761‐1765年頃)伊藤若冲

伊藤若冲梅花群鶴図(1761‐1765年頃)

この絵には計6羽の鶴が描かれていて、
そのうち顔を見せている鶴は4羽です。

鶴の描写には裏彩色の技法で胡粉黄土が使われています。

しかも凄い事にそれぞれ胡粉と黄土の配分を変え、
鶴ごとに裏彩色の色調を微妙に変えていると言います。

こういう普段見る事のない裏面にも、
若冲なりの見えないこだわりがあるのがスゴイ!

 

伊藤若冲の画集『100% Jakuchu!』
そして若冲がよく使っていた技法として
背景を全体的に薄暗くトーンを低めにして、
鳥や動物の描写は白を基調として描くというのがあります。

背景が薄暗いことで白がより際立って綺麗に見える
まるで浮かび上がってくる様な…

より立体的でリアルな描写を目指していたとも言われています。

 

 

私なりに分かりやすくかみ砕いて書いたので、
専門家の人から言わせたらちょっと違う!
って言われるかもしれませんが、
多少なりとも若冲の技法や
スゴさが分かってもらえたかと思います。

実はここまで挙げてきたどの技法も、
すべては”実物描写”を目指したからだと思いますが…。

でも若冲の凄い点は、
このリアルな描写だけではなかったのです。

時には”ユーモア溢れる絵”も描いていたのです。

 

若冲は実に様々なジャンルの絵を描いていたのです。

逆にここまで見ていくと、
若冲の目指した画風って何だったのだろう?と思うのです。

単に”絵が好きで、絵を極めたかったから”なのか…。

 

それは素人の私からは分からない事ですが~

でも一つだけ分かることは、
とにかく”絵に対するこだわりは尋常ではないこと”です。

普通に考えて、
羽や葉や実など一つ一つを実物の様に描こうと思いますか?

何百、何千とある葉っぱや実を、
そのまま一つ一つをリアルにこだわれますか??

普通なら妥協してしまう部分にも、
若冲はこだわり抜いたわけです。

そう思うと、

スゴイ!!”としか言いようがないのです。

 

出来る事なら若冲の絵はルーペなどを使って
じっくりと観察するのが一番イイのかもしれません。

でも若冲展はここ最近人気があるので、
落ち着いてじっくり見る事は難しいかもな~。

やっぱりコレクションできたら、
それに越したことはないのですが~。

 

実は今回再評価されたきっかけの一つが、
”プライス”という人物の影響が大きいと言われています。

よく”プライスコレクション”の名で見る事が多いと思います。

プライスはアメリカの芸術収集家で、
特に日本画を多く集めていたと言われています。

別に外国人だからと区別するわけではないのですが、
日本人が日本の作品の凄さをあまり評価できなかったなんて…

私が偉そうに言えたことではないのですが、
日本人として日本の絵や文化について
最低限知る事って必要なのかな~と思ったのです。

西洋画もイイですがやっぱり日本人として
日本の芸術も見てみようと思います。

そんなわけで私は
”京都へ行って『若冲展」を見に行こう!”…と。

あなたも若冲の絵が見れる機会に、
ぜひあなたの目で見る事をお勧めします。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Category

2020年4月
« 3月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  
ページ上部へ戻る