- 2023-9-15
- Artist (画家について)
- コメントを書く
アカデミズムな画風で知られる画家”ブーグロー”。
本名”ウィリアム・アドルフ・ブーグロー(William Adolphe Bouguereau)”で、19世紀後半に活躍したフランスの画家です。
でも知っているとは言っても、「ヴィーナスの誕生」を描いた画家というイメージの人も多いでしょうね。実は世間的にブーグロー自体知らない人も多い様です。19世紀後半と言えば印象派が台頭してきた時代なので、印象派の陰に隠れる感じになってますからね。でもある程度美術が分かってきた人間からすると、”オオッ!”と嬉しくなってしまうものです。
ブーグローの代表作は「ヴィーナスの誕生」だけじゃない!
というわけで、今回は画家”ブーグロー”について解説していこうと思います。
まず、初めに…
実は国立西洋美術館で小企画展「もうひとつの19世紀 ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」が開催します。個人的には”シブい所を突いてくるな~!”という印象です。正直言って嬉しくなってしまいましたね。^^
それなりに大きな美術館となれば、人気どころの画家の作品が多く展示される傾向があるようです。今回の様にブーグローやミレイといった、知名度的に一歩下がった感じの画家を主役に持ってくるのは、本当にさすが!としか言えませんね。つくづく西洋画の王道と言われる美術館”だけあるな~と。
・45.5×38.0cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵
実は国立西洋美術館にはブーグローの作品がいくつか所蔵されています。上の「少女(Little Girl)」も所蔵作品の一つで、「常設展」などでよく観たりします。個人的にブーグローと言えば、少女(女性)や天使を描いた画家というイメージが強い。特に少女(女性)の絵を描かせたら右に出る者はいない!と思っています。
これからブーグローの作品を数点作品を挙げていきますが、私がそう思う理由も何となく分かってもらえるかと。そして今回の話でちょっとでも興味を持ってもらえたら、ぜひ足を運んで観に行ってほしいものです。
【 もうひとつの19世紀 ― ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち 】 ・会期:2023年9月19日(火)~2024年2月12日(月) |
アカデミーな画家”ブーグロー”について解説!
私が思うに西洋絵画の大きな分岐点は、19世紀頃に誕生した”印象派”がターニングポイントだと思っています。それまで伝統的な画風が主流だったものが、大きく変化したからです。ブーグローはそういう意味では本当に可哀そうな時代に生きた画家だと思うわけです。
・300.0×218.0cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
これはブーグローの代表作で知られる「ヴィーナスの誕生」です。見ての通り、物凄く写実的で美しい!!誰が見ても上手い!と言うでしょうね。でも悲しいかな…、1879年と言えばちょうど印象派が誕生し徐々に広まってきた頃です。印象派などモダンアートの誕生によって、伝統的な画風は陰に隠れる感じになってしまったから。
でも私が思うに、アカデミックな画風は絵画の基本(土台)だと思うので、実はかなり重要な画風だと思っているわけです。
さて、ここで参考に『新潮 世界美術辞典』の解説を見てみようと思います。
ブーグロー、ウィリアム
Adolphe William Bouguereau 1825.11.30ー1905.8.18
フランスの画家。ラ・ロッシェルに生れ、同地で没。1846年パリに出てピコ(François Edouard Picot、1786ー1868)に学び、エコール・デ・ボーザールに入学。1850年ローマ賞受賞、同年より4年間イタリアに学び、とくにラファエㇽロ、アンドレ―ア・デル・サルトを模写。1853年よりサロンに出品。1857年サロン第1席、76年エコール・デ・ボーザール教授。折衷的アカデミズムの画風で、大いに人気を得る。パリとラ・ロッシェルに半分ずつ住んだ。代表作『青春と愛』(1877、ルーヴル美術館)ほか。
・出典元:『新潮 世界美術辞典』
『新潮 世界美術辞典』の解説にもありますが、ブーグローはエコール・デ・ボーザールという美術学校で教鞭を執っていました。この学校は伝統的な芸術を重視する学校としても知られていて、もちろん現在も存在しているそうです。ちなみに当時のアカデミーな授業は”デッサンと模写”が基本だったと言われています。伝統と写実が特徴となるのも分かりますよね。
・390.0×210.0cm、カンヴァスに油彩、ラ・ロシェル美術館所蔵
個人的に特にポイント!と思っているのが”模写”という言葉。先ほどアカデミックな画風は絵画の基本(土台)だと話しましたが、まさにこの”模写”がすべてを象徴していると思っています。現在世界の名だたる画家と言われる多くは、若い頃に模写をして技術を磨いていたと言います。上手い人の絵を真似て描く!コレって絵の基本を学ぶ上では、超重要な事なのかもしれないですね。
こういった生い立ちを見ていくと、ブーグローの画風も何となく見えてくるかと思います。
”伝統と写実性!”まさにこの言葉に尽きますよね!
・45.7×38.1cm、カンヴァスに油彩、個人蔵
この「ガブリエル・コットの肖像」という作品も、伝統と写実性を特徴とするアカデミズムならではの画風だと思います。理想的な美を追求しようとした伝統さと、本物らしいリアルさ!女性の美しさばかりが強調されている様に見えるけれど、実は伝統と写実という言葉がピッタリとハマると思っています。そういった特徴が一番表現されているのが、少女(女性)や天使を描いた絵です。私が”ブーグローは少女と天使の絵を描いた画家”と言う理由も分かってもらえるかと思います。
・137.0×86.0cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵
良くも悪くも私の様に擦れてしまっている人間は、女性に対して綺麗な部分と、その半面そうでない部分があるのも重々承知しています。そんな人間にとって”擦れる前の綺麗な女性のイメージ”を思い起こさせてくれるのがブーグローの絵だったりします。
確かに印象派の風景画もイイですが、こういった理想的な美もやっぱりイイ!!
ある程度美術歴が長くなってきた私だからこそ、こう思うのかもしれませんね。
”ブーグロー”の絵は、年を重ねると良さが分かる!?
先ほどちょっと触れましたが、ブーグローの絵は”擦れる前の綺麗なイメージ”を思い起こさせてくれると。
おそらく若い頃の私だったら、ブーグローに興味を持たなかったからもしれない。でも徐々に興味が湧くようになったのは、年齢を重ねたからかもしれないですね。
・185.4×127.0cm、カンヴァスに油彩、インディアナポリス美術館所蔵
私が美術に興味を持ち始めたのは、30歳位で最初は印象派に興味を持ったのが始まりでした。本当に定番とも言える流れだったわけです。それから西洋画も一通り見て、分かる様になってきたから思う事ですが、アカデミーな絵もイイな~と。
・236.0×182.0cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
個人的にアングルやプッサン、ドゥカンも好きですが、彼らも比較的最近になって興味を持つようになった画家です。ある程度酸いも甘いも分かってきたからこそ、その良さが分かる様になったって事でしょうか。
伝統的というと、ちょっと古臭く感じる人も多いと思います。でも絵画において伝統はある意味”基本(土台)”だと思うので、絶対に外せないものだと思うのです。普段印象派や現代アートを観ている人は、たまにはアカデミズムな作品もイイものですよ!
【 もうひとつの19世紀 ― ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち 】 ・会期:2023年9月19日(火)~2024年2月12日(月) |
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。