「オフィーリア」だけじゃない!ジョン・エヴァレット・ミレイについて解説!

ジョン・エヴァレット・ミレイについて解説!

 

ミレイジョン・エヴァレット・ミレイと言ったら、「オフィーリア」を代表作に挙げる人も多いと思います。

 

確かにその気持ちも分からないでもない。色々な本や解説書でも挙がるほどの作品ですから。でも自称”美術通”な私からすると、ちょっと違います。普段国立西洋美術館に行く身としては、「あひるの子」や「狼の巣穴」が真っ先に思い浮かんでしまいますね。

 

「あひるの子」(1889年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「あひるの子」(1889年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・121.7×76.0cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館

私の中では、ミレイと言ったら子供の絵を描く画家というイメージが強い。上の「あひるの子」を見ると分かりますが、物凄くリアルで可愛らしい!実際に間近で観れば、私が言った意味も分かると思います。

だから個人的に言いたいのは、ミレイと言ったら「オフィーリア」だけじゃない!と。他にもイイ作品がたくさんあるのです。

 

という訳で、今回はジョン・エヴァレット・ミレイについて私なりに解説していこうと思います。

 

 

 

まず、初めに…

前回もちょっと話しましたが、国立西洋美術館で小企画展「もうひとつの19世紀 ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」が開催します。個人的には”シブい所を突いてくるな~!”と。ある程度美術を分かってきた人間からすると、こういった画家に注目してくれるのは本当に嬉しいですね。西洋画の王道と言われる美術館だけあるな~と。

 

ジョン・エヴァレット・ミレイの「狼の巣穴」 ※国立西洋美術館「常設展」にて
ジョン・エヴァレット・ミレイの「狼の巣穴」 ※国立西洋美術館「常設展」にて

現在国立西洋美術館に所蔵されている作品は「あひるの子」と「狼の巣穴」の2点になるでしょうか。本当なら、もうちょっとあってもな~と思うのですが、今後増やしてくれる事を期待するしかないですね。

そういえば「狼の巣穴」を見た時の衝撃は今でも強く印象に残っています。数年前だったでしょうか、新収蔵作品として展示された時は、鳥肌が立ってしまった。思わず写真も撮ってしまいましたし、釘付けになって作品を観ていたのを覚えています。

国立西洋美術館に行った際は、ぜひ見てほしいですね。おそらく、あまりの素敵さに凝視してしまうでしょうから!^^

 

 

 

 

ジョン・エヴァレット・ミレイについて解説!

Story

それでは本格的にミレイについて話していこうと思います。

おそらく多くの人は、ミレイと言ったらラファエル前派の画家というイメージが強いでしょう。そしてその代表作はテートにある「オフィーリア」を挙げると思います。テートはイギリスを代表する美術館です。そんなテートに所蔵されている点からも、ミレイがいかに重要な画家なのかが分かると思います。

 

「オフィーリア」(1851-52年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「オフィーリア」(1851-52年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・76.2×111.8cm、カンヴァスに油彩、テート・ギャラリー所蔵

そういえば「テート美術館 光」展で、「オフィーリア」が展示されるのでは?という噂があった様です。どういった経緯でこの噂が出たのか分かりませんが、それだけテート美術館を象徴する作品という事でしょうね。確かにもし展示されたら、それはそれで嬉しいですが…。でも「オフィーリア」はテート美術館の至宝でもあるから、なかなか見れる機会ってないでしょうね。

 

て、ここで参考に『新潮 世界美術辞典』の解説も見てみようとおもいます。

ミレイ、ジョン・エヴァレット

Sir John Everett Millais 1829.6.8ー96.8.13

イギリスの画家。サウサンプトンに生れ、ロンドンで没。1840年、ロイヤル・アカデミーの美術学校に入学。1848年、ラファエル前派の創立に参加、高度の写実性と甘美な感傷に裏づけられた『オフェリア』(1852)、『両親の家でのキリスト』(1850、ともにロンドン、テート・ギャラリー)などを発表。1855年頃、ラスキンと不和となりラファエル前派からも離脱、その後はアカデミックな画家として制作を続け、名声を得た。肖像画にもすぐれる。1896年、ロイヤル・アカデミーの会長となったが、間もなく没。

・出典元:『新潮 世界美術辞典』

 

まずミレイを語る上で外せないのがラファエロ前派の画家という点!

ラファエロ前派は「Pre-Raphaelite Brotherhood」 、つまり「ラファエロ以前兄弟団」と訳される事が多い様です。

ルネサンス期の三大巨匠の一人”ラファエロ・サンティ”以前の芸術に立ち返ろう!そういった考えの元集まった芸術家の集団といったら分かりやすいでしょうか。当時のアカデミーは、ラファエロを模範としていたそうです。逆にそれ以外の新しい考えや画風は認めない風潮があったそうで、そういった考えを脱却しよう!という背景があったと言います。

 

そして当時の美術評論家ジョン・ラスキンの思想”自然をありのままに!”からも影響され、自然をありのままに!対象物を忠実に描こう!結果として写実性が高い作品が多くなったようです。もちろんミレイの作品からも、そんな写実性の高さは垣間見れると思います。

ただ『新潮世界美術辞典』にもありますが、ほどなくしてミレイはラファエロ前派から脱退。その後はアカデミックな画家として活動していきました。最終的にロイヤル・アカデミーの会長になっている点からも、土台としてアカデミックな画風が合っていたのかもしれませんね。

 

「いにしえの夢 ─ 浅瀬を渡るイサンブラス卿」(1856‐57年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「いにしえの夢 ─ 浅瀬を渡るイサンブラス卿」(1856‐57年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・125.5×171.5cm、カンヴァスに油彩、リバプール国立美術館所蔵

ちなみにミレイの作品でおそらく最初?に観た記憶があるのは、「過ぎ去りし夢 ― 浅瀬のイサンブラス卿」でした。作品的にも結構大き目で、しかも物凄く写実的だった。当時の僕の第一印象は”こんなに凄い絵があるんだ~”という感じでしたね。それだけ印象に残っている作品です。

他には「黒きブランズウィック騎兵隊員」も鮮明に残っていて、そういう意味でもミレイの作品はなぜか印象に残るものが多い!

 

「古来比類なき甘美な瞳」(1881年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「古来比類なき甘美な瞳」(1881年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・100.5×72.0cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵

それから忘れてはならないのが「スコットランド美術館展」で観た「古来比類なき甘美な瞳」。これはハッキリ言って、名画中の名画だと思っています。観た瞬間に一目惚れしましたからね。^^ この少女の絵は色んな意味で魅惑的で、しかも考えさせられる部分もあって、つくづくミレイは凄い画家だな~と思ったものでした。

 

「暇な時」(1864年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「暇な時」(1864年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・88.9×118.1cm、カンヴァスに油彩、デトロイト美術館所蔵

確かにダヴィンチやモネ、ルノワールもイイ。でも個人的にミレイ(ジョン・エヴァレット・ミレイ)も絶対に外せない画家です。有名な画家かどうかではなく、純粋に観てどう思ったかがすべて!そういう意味でも、ミレイは押し!ですね。

一昔前の僕だったら、モネやルノワールがイイな~と思っていたものの、今ではミレイがイイと思える様になった。皆が「オフィーリア」と挙げるところ、私は「あひるの子」や「狼の巣穴」の作品を挙げてしまう。コレって私の目が肥えてきたからなのか?それとも単に私がひねくれ者だから??

それは分かりませんが、とにかくミレイの代表作は「オフィーリア」だけではないって事だけでも知ってほしい!

コレだけでも分かってくれたら幸いですね。

 

 

 

なぜ?ミレイの作品は印象に残るものばかりなの?

なるほど!(We See!)

私の持論になりますが、有名な画家の絵は誰が観てもイイとは限らないと思っていて、別に有名な画家じゃなくてもイイと思う作品はたくさんあります。だから絵画は実際に観ないと分からない。これが美術のオモシロい所で、魅力でもあるわけですが。

 

「露に濡れたハリエニシダ」(1889‐90年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「露に濡れたハリエニシダ」(1889‐90年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

 

これまでジョン・エヴァレット・ミレイはいくつも観てきたけれど、本当に印象に残る作品が多い。思うにミレイの画風と僕の感性が合っているって事なのだろうか??先日「テート美術館 光」展で、見た作品「露に濡れたハリエニシダ」も本当に印象的でした。この絵はミレイには珍しい純粋なる風景画です。ミレイってこういった絵も描くんだな~と、ある意味新鮮な感じでしたね。とはいっても、実際ミレイは神話や風景画も描いていたわけで、別に目新しいことではない。でもここまでミレイの風景画が、僕の感性にピッタシハマったのも新鮮な感じがしたわけです。

 

「両親の家でのキリスト」(1850年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

「両親の家でのキリスト」(1850年)ジョン・エヴァレット・ミレイ

・86.3×139.7cm、カンヴァスに油彩、テート・ギャラリー所蔵

美術館に行くとこんな感じで、常に発見と出会いの連続だったりする。これまが僕が美術にハマる一つの要因かもしれませんね。とにかく国立西洋美術館で開催の小企画展「もうひとつの19世紀 ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」も、もしかしたら新たな発見があるかも!?そう思ったら待ち遠しいわけですね!

 

もうひとつの19世紀 ― ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち

・会期:2023年9月19日(火)~2024年2月12日(月)
・場所:国立西洋美術館(常設展示室の版画素描展示室にて)
・時間:9:30~17:30(金・土曜日は~20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
・休館:月曜 ※10月9日と2024年1月8日、2月12日は開館します。

 

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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