サンドロ・ボッティチェリの「地獄図」とダンテの『神曲』

インフェルノ(Inferno)と地獄

 

地獄(Hell)”ってどんな場所なのだろう!?

 

実際には行きたくはない場所だけれど、
でも不思議と興味も湧いてしまう未知なる地。

だから今でも多くの人を魅了するんでしょうね。

・・・

「地獄図(地獄の見取り図)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

「地獄図(地獄の見取り図)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

サンドロ・ボッティチェリ地獄図(地獄の見取り図)
・1490年、32×47cm、ヴァチカン教皇庁図書館に所蔵。

 

絵を見て感動!
漏斗(ろうと)状の奇妙な形をした地獄の世界

一度入ったら二度と出る事が出来ない様な…
まるで”蟻地獄”の形にも見えませんか!?

このボッティチェリの「地獄図」は、
ダンテ神曲地獄篇を正確に再現していると言われています。

実際に誰も地獄へは行った事がないので
本当の所どのような場所なのかは分かりませんが、
ただ現在の地獄という概念はこの『神曲』が基になっていると言います。

地獄という世界観を創造したダンテと、
その『神曲』地獄篇を正確に再現したボッティチェリの画力。
この「地獄図」は2人の存在なくして成立しない名画なんですね!!

 

そしてこの「地獄図」は
細部まで見る事でその凄さを味わえると言います。

この絵は32×47cmという比較的小さいサイズ。
そんなサイズにも関わらず
細部まで精密に地獄の世界を描いている点も注目してほしいのです。

「地獄の見取り図(detail)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

「地獄の見取り図(detail)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

これは地獄篇の第八圏の地獄”悪意者の地獄”を描いた部分。

・・・ここにはマレボルジェと呼ばれる10の嚢(ふくろ)があり、
それぞれが罪人たちで埋め尽くされていた。

そこには悲惨な光景が広がっていた。

第一の嚢には金のために婦女を売った者たちがいた。
そして角を生やした悪魔たちが手にした鞭で罪人たちを容赦なく鞭打っているのが見えた。

その中に見覚えのある姿を見つけた。
それは侯爵に妹を差し出したヴェネーディコ・カッチャネミーコという男だった。

そして次の嚢では人々が糞尿に漬けられている姿が見えた・・・
(地獄篇第18歌の内容より)

 

「地獄の見取り図(detail)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

「地獄の見取り図(detail)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

そしてこれは”第七圏の地獄”にある3つ目の環を描いた部分。
ここでは男色者たちが炎に振りかけられて悶えているのが見えます。
※当時キリスト教では同性愛は”罪”として考えられていたそうです。

 

・・・堤に沿ってやってくる一群の群れを目にします。
その中に見覚えのある顔を目にします。

その人物は顔が焼けただれていたが間違いなく
ダンテの先生ブルネット・ラティーニだったのです・・・
(地獄篇第15歌の内容より)

 

 

ダンテの『神曲』って何なの!?

ダンテ(Dante)の像

 

「神曲」の著者はダンテ・アリギエーリ(1265年~1321年)。
イタリアの都市フィレンツェ出身の詩人で哲学者だった人物です。

この『神曲』は全14,233行で構成された長編叙事詩
(つまり長編の””の様なもの)です。

物語はダンテ自身が主人公となって、
詩人ウェルギリウスに案内されながら地獄の門をくぐり”地獄界”へ。
そして煉獄、天国へ巡り歩く話になっています。
(このウェルギリウスは実在した人物です。)

ボッティチェリの「地獄図」から分かる通り、
地獄の世界は上から順に計9つの圏から成っているのです。

第一圏…”辺獄”洗礼を受けなかった者が行く地獄。
第二圏…肉欲の罪を犯した者が行く地獄
第三圏…”貧食”大食いの罪を犯した者が行く地獄
第四圏…ケチで浪費の激しい者が行く地獄
第五圏…怒り狂った者が行く地獄
第六圏…異端者が行く地獄
第七圏…暴力の罪を犯した者が行く地獄
第八圏…悪意を持って罪を犯した者が行く地獄
第九圏…裏切りをした者が行く地獄

 

地獄
下に行くほど罪は重くなっていき、
最下層は”裏切り者が行く地獄(コキュートス)”があります。
※ちなみに”裏切者の地獄”には、
堕天使ルシファー(別名”サタン”)がいるとされています。

※(参考)それぞれの地獄については
”地獄”ってどんな場所!? …ギュスターヴ・ドレの挿絵より

 

 

ここでCheck!
ダンテの『神曲』は”3”の数字で構成されている!

『神曲』を語る上で忘れてはならないのが””という数字。
この詩は全体が””を基に構成されている点もポイントです!

『神曲』は地獄篇、煉獄篇、そして天国篇の3部構成になっているのですが、
それぞれの篇が33歌で構成されているのです。(地獄篇のみ34歌で構成)

また詩行全体が3行で1つのまとまりとなる韻文で構成されて、
つまり”三韻句法(テルツァ・リーマ)”という形式が用いられています。

この様に”3”の倍数を基に詩が構成されているのです。
これはキリスト教の”三位一体”という教義からきていると言われています。
※キリスト教における”三位一体”とは
父(神)と神の子”イエス”と、精霊の3つは一体であるという教え。
3つ別々のものが1つのものとして密接に結びついているという意味。

 

誰もが行った事のない地獄の世界を創造し、
そして綿密な計算の基構成された長編の詩。

この『神曲』は1304年から執筆し1321年に完成したそうで、
ここまで長い歳月がかかっているのも頷けますね。

 

このダンテの叙事詩『神曲』の作品には、
”聖書”や哲学、倫理観など様々なものを引用していると言います。

もちろん文学作品としても評価の高い作品ではあるけれど、
当時の価値観が読み取れるのも面白味の一つだと思います。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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