ボッティチェリの「地獄図」とダンテの『神曲』

インフェルノ(Inferno)と地獄

 

映画『インフェルノ』にも登場した
サンドロ・ボッティチェリ地獄図(地獄の見取り図)

 

元々この「地獄図」は
ダンテ神曲地獄篇をモチーフにして描いたと言われています。

 

・・・

「地獄の見取り図」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

「地獄の見取り図」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

サンドロ・ボッティチェッリ地獄の見取り図(1490年)

見るからに漏斗状の奇妙な形にも見えるけれど…
でもこれはダンテの描いた地獄を正確に再現しているというのです。

 

ここでCheck!
ダンテの『神曲』って何!?

著者はダンテ・アリギエーリで、
イタリアの都市フィレンツェ出身の詩人で哲学者だった人物。

この『神曲』は長編叙事詩…
つまり長編の””なのです。

物語はダンテ自身が主人公となり、
詩人ウェルギリウスに案内されながら地獄の門をくぐり”地獄界”へ。
そして煉獄、天国へ巡り歩く話になっています。
(このウェルギリウスは実在した人物です。)

はボッティチェリの「地獄図」を挙げながら、
ダンテの書いた地獄の様子について話していこうと思います。

 

 

地獄とはどんな場所なのだろう!?

インフェルノ(Inferno)と地獄

ダンテは『神曲』地獄篇の中で”地獄”を描いていますが、
これを正確に再現したのがこの「地獄図(地獄の見取り図)」と言われています。

・・・

「地獄の見取り図」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

「地獄の見取り図」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ

 

見て分かる通りこの地獄は全部で9つの階層から構成されています。

罪を犯した者はその罪に応じて
それぞれの階層の地獄へ振り分けられる仕組みになっているそうです。

下へ行くほど重い罪の者が行く地獄になっていて、
一番最下層が最も重い罪”裏切者”が行く地獄になっていると言います。

・・・

(地獄界)

第一圏…”辺獄”洗礼を受けなかった者が行く地獄。
第二圏…肉欲の罪を犯した者が行く地獄
第三圏…”貧食”大食いの罪を犯した者が行く地獄
第四圏…ケチで浪費の激しい者が行く地獄
第五圏…怒り狂った者が行く地獄
第六圏…異端者が行く地獄
第七圏…暴力の罪を犯した者が行く地獄
第八圏…悪意を持って罪を犯した者が行く地獄
第九圏…裏切りをした者が行く地獄

ギュスターヴ・ドレの挿絵を見ながら、
それぞれの地獄の様子を垣間みようと思います。

 

一番最上階に位置する地獄は、
”辺獄(へんごく)”と言われる場所…

第一圏辺獄(リンボ)
…洗礼の恵みを受けなかった者が行く地獄とされています。
ここでは特に叱責もなければ希望もない場所で、永遠と時を過ごす事になるそうです。

ちなみにキリストが生まれる以前に居た人間は洗礼の恵みを受けていないので、
例えば詩人ウェルギリウスやソクラテス、
それからプラトンはここの住人とされています。

 

・第二圏…愛欲者の地獄
…ここは肉欲の罪を犯した者が行くとされている地獄。

「Inferno Canto5(105-106」(1857年)ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto5(105-106」(1857年)ギュスターヴ・ドレ

肉欲…つまり性欲愛欲と言ったものでしょうか、
歴史上の人物で言えば”クレオパトラ”がここに居るそうです。

この”愛欲者の地獄”では
休むことなく地獄の暴風が吹きすさんでいる。

荒々しい地獄の暴風によって
愛欲者たちはあちこちへと吹き流され、そして互いにぶつかり合っている。

想像するだけであちらこちらからうめき声や鳴き声が聞こえてきそうですね。

 

・第三圏…貧食者(どんしょくしゃ)の地獄
…”大食いの罪を犯した者が行くとされている地獄。

「Inferno Canto6(24-26」ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto6(24-26」ギュスターヴ・ドレ

ここには3つの頭部を持つ犬”怪物ケルベロス”がいて、
罪を犯した者はケルベロスによって引き裂かれ牙で噛み砕かれるそうです。

そして食われた後もまた糞となって排出され再生し、
またケルベロスによって食いちぎられるという永遠の地獄が待っているのです。

つまり永遠にケルベロスによって噛み砕かれ、喰いちぎられるわけですね…。

 

・第四圏… 貪欲者の地獄
…ここはケチで浪費の激しい者が行くとされる地獄。

「Inferno Canto7(65-67)」ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto7(65-67)」ギュスターヴ・ドレ

節度を持ってお金を使う事が出来なかった者は、
重い袋を転がし互いに罵声を浴びせあっているそうです。

 

・第五圏… 憤怒者の地獄
…怒り狂った者が行く地獄。

「Inferno Canto8(27-29)」ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto8(27-29)」ギュスターヴ・ドレ

傲慢で怒り狂った者たちが沼に漬け込まれ、互いに責めたてている。
現世で怒り狂っていたものは、この地獄でも怒り狂い続けるのだそうです。

 

・第六圏… 異端者の地獄
…ここは異端者が行くとされている地獄。

「Inferno Canto9(124-126)」ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto9(124-126)」ギュスターヴ・ドレ

ここでは異端者は炎が噴き出ている墓に葬られているそうです。
炎によって灼熱の如く赤熱した墓からは
異端者のうめき声が聞こえてくる。
灼熱地獄に近い悲痛な様子が想像できると思います。

 

・第七圏… 暴力者の地獄
…暴力の罪を犯した者が行くとされている地獄。

「Inferno Canto14(37-39)」ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto14(37-39)」ギュスターヴ・ドレ

人の血を流し力ずくで財産を奪った暴力者は、
煮えたぎる血の川で茹で上げられて悲痛な声を発していたり…

自ら命を絶った者は、自殺者の森で灌木と化し、
ハルピュイアによって葉をついばまれ血と悲痛な声を上げていたり…
(ハルピュイアとは半人半鳥の怪鳥の事)

また神を蔑(さげす)んだ者には
火を発する熱砂と上からは火の雨が降り注いでいたりと、
暴力の行いによって様々な拷問が待っているのでした。

 

・第八圏… 悪意者の地獄
…悪意を持って罪を犯した者が行くとされている地獄。

 

・第九圏… 裏切者の地獄

…裏切りをした者が行くとされている最下階の地獄。
ここは別名”コキュートス”とも言われています。

「Inferno Canto32(97-98)」ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto32(97-98)」ギュスターヴ・ドレ

ここでは裏切りの罪を犯した者は永遠に氷漬けにされるという末路が待っています。

辺りを見渡すとあちらこちらに凍り付いた裏切り者たちの姿が…。
分厚い氷に浸かった身体と、
頭だけが出ている様はまさに寒さに悶える様子が見えてくると思います。

 

「Inferno Canto34」(1861~1868年)ギュスターヴ・ドレ

「Inferno Canto34」(1861~1868年)ギュスターヴ・ドレ

そんな最下層”裏切者の地獄”には、
堕天使ルシファー(別名”サタン”)がいます。

このルシファーは元は天使の長だったそうです。
でも神に謀反を企てるという裏切りによってこの地獄に堕ちたとされているわけです。

 

考え…・思い…
このダンテの『神曲』で書かれている”罪”を見ていくと、
今の法律や常識とはかなり異なる価値観だったのが分かりますね。

”愛欲”や”貪食”が罪になる事からも
当時の宗教や倫理の違いが見えてくると思いませんか!?

 

ちなみにダンテの叙事詩『神曲』の作品には、
”聖書”や哲学、倫理学など様々なものからの引用も多く、
現在世界的に評価が高い文学作品とされているのです。

 

この話を少しでも知っていると、
映画『インフェルノ』の内容もより深く味わえると思います。

映画『インフェルノ(Inferno)』

映画「ダヴィンチ・コード」シリーズの第3作目。
※”インフェルノ(inferno)”は地獄という意味になります。
日本公開は2016年10月28日
(ストーリー)
主人公のロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)は、
大富豪で生物学者のゾブリストのある恐ろしい計画に気付きます。
それは学者ゾブリストがダンテの『インフェルノ(時獄篇)』になぞり、
人類の半数を滅ぼすためのウイルス”インフェルノ”を生み出し、
人口増加に歯止めをかけようとするものだったのです。
ラングドン教授はダンテの『神曲』
そしてボッティチェリの「地獄の見取り図」から、
隠された暗号の秘密に挑むのでした…。

 

ちなみに
「インフェルノ(inferno)」は”地獄”という意味になります。

もちろん映画上でダンテの”地獄篇(インフェルノ)”をモチーフとした
ボッティチェリの「地獄の見取り図」が登場してきます。

気になる方は映画もご覧くださいね!

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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