- 2019-1-6
- Impression (絵画展の感想)
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”エドヴァルド・ムンク”の代表作というと
どうしても「叫び」ばかりが注目されがちです。
でも他にも観てほしい作品がたくさんあります。
今回は2019年に東京都美術館で開催した企画展
「ムンク展 ー 共鳴する魂の叫び ー」
観た感想や展示作品を交えて話していきたいと思います。
【ムンク展 ー 共鳴する魂の叫びー】 ・2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)まで |
実を言うとこれまで私はあまりムンクを好きではなかったのです。
というのも比較的暗い作品が多いイメージだったから…。
精神的に病んでいた時期もあって画風が暗くなるのも分かるけれど
さすがに観ている方も暗くなるのはちょっとキツイものですね。
でも今展でそんな先入観は捨てないとだめだな~と思ったのです。
というのも「太陽」という予想外な作品の発見があったからなのです。
確かにムンクという画家は精神的に病んでいた時期があり、
それもこれも幼少期からの”悲劇”がその理由だと思います。
特に”家族の死”は相当なショックだったと思うのです。
事実ムンクは若い時に母や姉などの死に直面しています。
そんな経験もあってムンクの作品は
”死”や”苦悩”、”不安”と言った感情が滲み出た作品が多い様に思うのです。
エドヴァルド・ムンク「夏の夜、渚のインゲル」(1889年)
この作品に描かれている人物はムンクの妹インゲル・ムンク。
物思いにふけって座っている場面を描いている様だけど、
でもなぜかどことなく寂しげで不安な感じがしてならない…。
このインゲルは一体何を考えているのだろう??
直接的に不安や苦悩を表してはいないのに、
不安な様子を醸し出しているこの表現力はムンクの凄さなのかもしれませんね。
エドヴァルド・ムンク「別離」(1896年)
これは「別離」というタイトルの作品で、
見ての通り別離に傷心し、悲しみに打ちひしがれている男性の姿が描かれています。
悲しみというか憂鬱というか、
こういったメランコリックな作品を描かせたらムンクの右に出る者はいないと思いますね。
これは観ている私も深く共感してしまいますね。
昔自分が経験した”別れ”を思い出してしまうのです。
ムンクの作品の凄さだと思いますが、
観ている人へも影響を与えてしまうのです。
特に深い悲しみや不安といった作品は、
観ている私にも同じ気持ちにさせてしまうわけです。
ムンクは精神的に病んだ原因の1つに感受性の高さがあると思いますが、
そういった感受性の高さや繊細さがあったから
こそこういった深い作品が描けるのかな~と思いますね。
エドヴァルド・ムンク「自画像、時計とベッドの間」(1940‐1943年)
・・・
エドヴァルド・ムンク「叫び」(1910年?)
現在この「叫び」という作品は
人の抱える不安や孤独、絶望の象徴と言われています。
さすがに見慣れている絵とはいえ、
観ていると深い不安に駆られてしまうはなぜだろう??
そしてこの絵で特に注目して欲しい点が全体との一体感。
ここに描かれた人間の不安なり絶望が
空や海の背景と繋がっている様に見える事です。
まるですべてが一筆で描かれ繋がっている様に見えてしまうのです。
仮にムンクがキャンバスに描いた世界観が
そのままムンクの見ていた現実の世界観だったとすると、
ムンクという人物の感受性の深さが伝わってきてしまいます。
ムンクといえば”叫び”が特に有名だけれど、
こういった名画が生まれたのもムンクの繊細さ故だったのかもしれませんね。
改めてムンクという画家は、
彼の生きざまを知れば知るほど深いな~
そう思った今回の「ムンク展」でした。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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