- 2022-4-30
- Impression (絵画展の感想)
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ラファエロにルーベンス、ベラスケス、それにレンブラント…
名前を見ただけでも豪華で、嬉しくなってきませんか!?
先日上野の東京都美術館で「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」を観てきました。今回は個人的レビューを交えて、いくつか作品を挙げてみたいと思います。
確かに名のある巨匠たちの作品も注目ですが、でも個人的にはレイバーンやウィリアム・ダイスなどスコットランド出身画家も見逃せない!
実際に行けば分かりますが、画家の知名度と作品の良し悪しって関係ないのです。日本ではあまり知られていない画家でも、イイ作品って結構たくさんあるんですよね。
ちなみにこの「スコットランド国立美術館展」は上野の東京都美術館開催後は神戸、北九州と巡回開催します。
【スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち】 ・東京開催:2022年4月22日(金)~7月3日(日)まで、東京都美術館にて |
今展では随所に要チェックの画家が何人も登場します。ぜひ今後行く参考にしてほしいと思います。
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・97×141cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
さて、まずはイタリアの画家”パリス・ボルドーネ(Paris Bordone)”から。
中央と右に描かれている2人の女性は共に娼婦で、美しい肌とブロンドの髪が特に魅力的です。今回のタイトルにもなっている”美の巨匠たち”にピッタリな作品だと思います。
このボルドーネは時代的にルネサンス期の画家です。豊満で肉感があって、それでいて美しい!!そして豪華で装飾的な衣装の描写も魅力的で、これもボルドーネの特徴と言われています。
ボルドーネ・パリス(Paris Bordone)
1500ー1571、1、29. イタリアの画家、トレヴィーゾに生れ、ヴェネツィアで没。ティツィアーノに師事。初め肖像画家として知られ、1538年フランソワ一世に招かれてフランスに赴き王の肖像画を制作、アウクスブルグでフッガー(Fugger)家のためにも仕事をした。他に宗教画、神話画、寓意画があり、代表作は「聖マルコの指輪を総督に呈上する漁夫」。
※「新潮世界美術辞典」より
ぜひパリス・ボルドーネという画家もチェックしてほしいと思います。
・73×56.5cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
エル・グレコらしい作品だと思います。この作品で特に惹かれたポイントは、”キリストの目”。優しさと慈悲深い感じの目が何とも言えないですね。
・34.7×28.6cm、メッキした銅板に油彩、スコットランド国立美術館所蔵
これはアダム・エルスハイマーの「聖ステパノの石打ち(The Stoning of Saint Stephen)」。
私が思うに今回の隠れた名画だと思っています。ルーベンスやベラスケスが注目されがちの今展ですが、このエルスハイマーも要チェック!釘付けになる事間違いなしです。実はルーベンスも認めた画家だったのは、覚えてほしいポイントだと思います。
※参考)⇒まるで宝石絵画! ”アダム・エルスハイマー”ってどんな画家!?
・100.5×119.5cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
宮廷画家となる前の若かりし頃のベラスケスの作品。これはスペイン語で”ボデゴン”と呼ばれるジャンルの作品です。英語では静物画(Still life)に相当。
台所や厨房の様子を描いた静物画で、風俗画の要素が混じったスペイン風静物画という感じでしょうか。ベラスケスの場合は、風俗画的要素が特に強いのが特徴で、一見すると風俗画の様に見えるのが特徴的です。
・52.9×47.9cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
これはオランダ、レイデン(Leiden)生まれの画家ヤン・ステーンの作品。
・143×168.3cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
これはウォルドグレイヴの3姉妹を描いた作品。左から長女シャーロット、次女エリザベス、三女アンで、ギリシア神話における美の女神”三美神”を暗示していると言われています。
レノルズはロイヤル・アカデミーの初代会長だった人物で、”グランド・マナー(古典的絵画様式)”を重要視した画家です。どうしても立場的に保守的な作風が多いと言われているけれど、イギリスの絵画史においては重要な人物です。
・31.5×37.6cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
・100×125cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
個人的に注目している画家がこの”デイヴィッド・ウィルキー(David Wilkie)”です。早くして才能を開花して、主席宮廷画家の地位に就くほど!ドイツなど他国でも相当評価が高かった様です。
※参考)⇒スコットランドの画家”デイヴィッド・ウィルキー”ってどんな画家?
・144.5×122cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
これはコンスタブルの生れ故郷”サフォーク”の田園風景を描いた作品。イギリスの風景画家というと、ターナーばかりが注目されがちです。ジョン・コンスタブルはどうしても遅咲きの画家というイメージがありますが、忘れてはならない画家の一人。もちろんターナーの作品「トンブリッジ、ソマー・ヒル」も観れますが、個人的にはコンスタブルの「デダムの谷」がお気に入り!!
・34.3×49.5cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
ウィリアム・ダイス(William Dyce)はスコットランドを代表する画家の一人。日本での知名度はあまりないですが、今回特に気になっていた画家です。宗教画的な風景画で、写真の様な写実さは本当に絶賛だと思います。今回「荒野のダビデ」という作品もありますが、こちらもぜひ注目して欲しい作品ですね。
・122×265cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
・100.5×72cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
この少女は女優ベアトリス・バックストンがモデルになっています。
最初は「スミレの花を持つ少女」というタイトルだったそうです。「古来比類なき甘美な瞳」は2番目のタイトルで、エリザベス・バレット・ブラウニングの詩「カタリーナからカモンイスへ」からの引用です。
個人的にミレイの作品は好きで、以前観た作品「過ぎ去りし夢 - 浅瀬のイサンブラス卿」は今でも印象深く心に残っている作品です。特に少女を描いた作品は本当に素敵で、出来る事なら「ジャン・エヴァレット・ミレイ展」を盛大に開催してほしいですね。
・257.5×227.3cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
そして締めは、アメリカの風景画家フレデリック・エドウィン・チャーチの作品。
スコットランド美術館にある数少ないアメリカ絵画だそうです。今回はエピローグという形で最後に展示していました。大きなカンヴァスに描かれたダイナミックなナイアガラの滝。豪快な水の落下や水しぶきの様子。見ていると滝の音がしてくる様で、本当に圧巻の作品だと思います。これはぜひ間近で観て、感じてほしい作品だと思います。
今回の「スコットランド国立美術館展」は、予想以上にイイ作品が多かった印象です。特にスコットランド出身の画家は注目して欲しいと思います。
この展覧会は東京開催後は神戸、北九州と巡回開催します。ぜひ行ってみては!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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