- 2023-11-12
- Impression (絵画展の感想)
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先日、皇居三の丸尚蔵館で、開館記念展「皇室のみやび」を観てきました。
以前から近くを通る度に、工事中だったのは知っていて、”いつ開館かな?”と気にはなっていました。しかも最近はニュースでも大々的に取り上げられるほどですから、そりゃあ行きますよね。
そして何より気になるのは、どういった作品が展示されるのか?
伊藤若冲の『動植綵絵』や『蒙古襲来絵詞』など、国宝を豊富に所蔵している三の丸尚蔵館ですから、誰もが展示作品には興味があるでしょう。
今回は私の感想を交えながら、見所などについて話していこうと思っています。これから行こうと考えている人も、ちょっとは参考にしてもらえると嬉しいですね。
【 目次 】 ・開館記念展「皇室のみやび(第一期)」の私的レビュー |
開館記念展「皇室のみやび(第一期)」の私的レビュー
何度聞いてもイイですね。この”開館記念展”という響き!
「皇居三の丸尚蔵館」のリニューアルオープンですから、楽しみにしていた人も多かったと思います。
もちろん私も、ひそかに楽しみにしていた人間の一人です。
自分では”流行には左右されないぞ!”と心に誓っていたものの、でもフタを開けたらオープンしてすぐに行ってしまう。こういった所は、まだまだ”ミーハー心”は抜けていないと感じてしまいます。
数日前からニュースでも取り上げられる程だったので、予想通り人は多かったですね。
前もって事前チケットは購入していたものの、それでも入口付近は行列を作っていました。それでも待っている最中もワクワクしてしまう!これも新しい美術館の一つの楽しみでもあると思っています。
もちろん館内の様子や雰囲気も新鮮です。
手探り状態で歩きながら、作品を見て回る。ある意味”冒険”をしている感じを味わえるのも、オープンしたばかりの美術館のオモシロさだろうと思います。
そんなオープンしたばかりの「第1期」展の展示作品がまたイイ物揃いだったのです。
まずは国宝の『春日権現験記絵巻(巻十二)』
『春日権現験記絵巻(巻十二)』(鎌倉時代、延慶2年頃)高階隆兼 ※「皇居三の丸尚蔵館」より
鎌倉時代後期に活躍した絵師”高階隆兼(たかしなたかかね)”による、春日権現(春日神)の霊験を描いた絵巻物。「霊験」を分かりやすく言えば、神様から得られた不思議な利益や体験の事。
「やまと絵」の集大成とも言われる逸品で、当時の風俗が垣間見れる点でも非常に貴重と言われています。
『春日権現験記絵巻(巻十二)』(鎌倉時代、延慶2年頃)高階隆兼 ※「皇居三の丸尚蔵館」より
現在『春日権現験紀絵巻』は全部で20巻(他に目録1巻がある)あり、その内の1巻。
ちなみに三の丸尚蔵館が所蔵しているのは原本で、絹や金泥など高価な材料を使用してそうです。当時の技術が凝縮されていると考えると、国宝になるのも頷けますね。
欲を言えば20巻全部を一堂に見たいけれど、さすがにこればっかりは難しいでしょうか。
それにしても、いきなり『春日権現験記絵巻』が観れるなんて…。^^
※『春日権現験記絵巻』は、前期(11月3日~11月26日)と後期(11月28日~12月24日)で展示替え有り。
・前期は「巻十二」、後期は「巻十九」が展示されます。
またも国宝!『蒙古襲来絵詞(後巻)』
『蒙古襲来絵詞(後巻)』(鎌倉時代、13世紀) ※「皇居三の丸尚蔵館」より
言わずと知れた教科書にも載るくらい有名な作品です。
当時使っていた武器(蒙古軍はすでに鉄砲を使用していた)や戦法などが描かれているというわけで、史料的価値も高い巻物。
今回展示された部分には鉄砲(てつはう)の部分は描かれていないですが、それでもこうやって目の前で観れられるのは、何だか嬉しくなってきますね。
※『蒙古襲来絵詞』は、前期(11月3日~11月26日)と後期(11月28日~12月24日)で場面替えがあります。
伊藤若冲の『動植綵絵』
伊藤若冲の『動植綵絵』は、期待していた人も多いのではないでしょうか。
国宝に指定されていて、「皇居三の丸尚蔵館」の看板的作品でもあるから、当然展示されるだろうと予想はしていました。欲を言えば”30幅すべてが一堂に展示されたらな~”と願ってはいたけれど…。
現実はそう甘くなかったですね。
さすがに4点だけの展示は、個人的に物足りない。
そして予想はしていましたが、『動植綵絵』の周辺は当然の如く人だかりでしたね。さすがに人が多いと、ゆっくり鑑賞するのも難しい…。この混雑ぶりは何とかならないかな~と思いつつ。
ちなみに撮影も可能なので、迷惑の掛からない程度に撮るのもイイと思います。
※伊藤若冲の『動植綵絵』は前期(11月3日~11月26日)と後期(11月28日~12月24日)で展示替え有り。
・前期は「秋塘群雀図」、「南天雄鶏図」、「老松白鳳図」、「菊花流水図」が展示。
・後期は「梅花群鶴図」、「棕櫚雄鶏図(しゅろゆうけいず)」、「貝甲図」、「紅葉小禽図」が展示。
今回の一番の見所作品かも!? 小野道風の『屏風土代』
『屏風土代』(平安時代、延長6年)小野道風 ※「皇居三の丸尚蔵館」より
文字だけなので一見”見栄え”はしないですが、でも実は超貴重な逸品『屏風土代(びょうぶどだい)』。
他の『蒙古襲来絵詞』や『動植綵絵』が”映える”だけに、悲しいかな…
思いのほか行列を作っていなかった作品でした。
屏風土代(びょうぶどだい)
屏風の色紙形の下書き11首11枚を継いだ巻子本1巻。「土代」とは下書きの意。平安中期、延長6年(928)11月の書写。詩の作者は大江朝綱(886ー957)。下書きであるから書き直した文字が少なくない。字形は端正、点画は豊潤温雅で、落着いて、入念に書いている。巻末に別紙を継いで、藤原定信が、小野道風の書であることを記している。22.6×438.7cm。御物。
・出典元:「新潮 世界美術辞典」
↑上の解説にある”豊潤温雅(ほうじゅんおんが)”ですが、意味としては豊かで潤いがあり、それでいて上品という感じでしょうか。”書”に疎い私からすると、ちょっと理解に苦しむ部分ですが、分かりやすく言えば”書の達人”という事でしょうね。
余談ですが、小野道風を加えた藤原佐理と藤原行成は平安時代に活躍した書の名人で、「三跡(さんせき)」と称されています。
一見地味に見えて、でも実は歴史的に超貴重!
小野道風の『屏風土代』は、文字だけで構成されている書なので、一見地味です。他の屏風に比べると、如何せん”映え”はしませんよね。でも「国宝」に指定されていると言う事は、何かしらの理由があるから。
どうして「国宝」になったのか?
その理由を調べると、作品の深みや凄さが分かってくると思っています。どうしても映える作品に目が向きがちですが、こういった一見地味に見えて実は超逸品に目を向けられるようになってこそ、実は”美術通”になる第一歩かと思っています。
という訳で、第1期「皇室のみやび」展の見所!として挙げてみたのでした。
開館記念展「皇室のみやび」の開催概要とチケットは?
さて、今回は”皇居三の丸尚蔵館”のリニューアルオープンです。
それなりに混雑やチケット、展示期間はチェックしておいた方がイイかと思います。
【 皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび-受け継ぐ美-」 】 ・会期:2023年11月3日(金・祝)~2024年6月23日(日) ※第1期~第4期で、展示替えがあります。 ・休館日:月曜(月曜が祝日、休日の場合は開館し、翌平日は休館)、12月25日~1月3日、展示替え期間 ・時間:9:30~17:00(11月7日(火)は16:00に閉館)※入館は閉館の30分前まで ・入館料:一般1,000円、大学生500円 |
チケットは?
ニュースでも大々的に取り上げられるくらいですから、考えている事は皆同じ。行こうと思っている人も多いと思います。だからチケットに関しては、事前に購入しておく事をおススメします。
数日前からでも良い時間帯はすぐ埋まっている感じなので、出来るならお早めに!
いつ「皇居三の丸尚蔵館」に行くべき?
別に”今でしょ!”なんて言うつもりもなく、個人的には”晴れの日”に行くのをおススメします。
美術館入口の外で、雨の中行列を並ぶのも嫌ですが、他にも理由はあります。
これは私個人の楽しみ方ですが、美術鑑賞は館内で作品を観るだけがすべてじゃない!から。行く前の心の準備を作ったり、観終わった後の余韻を楽しむ事も大事な要素だと思っています。
「皇居三の丸尚蔵館」は”皇居東御苑”内にある美術館ですから、せっかく行くなら周辺も散歩して、+α(プラスアルファ)で楽しんで欲しいのです。
美術館に行く前、もしくは後に庭園や周辺をブラ~と散歩するのもイイと思いますよ。^^
皇居付近は本当に風情があって、散歩するだけでも気持ちがイイもの。作品を鑑賞した後の”余韻”を楽しむにも、最適な場所だろうと思います。
ぜひ今回の話を参考に、楽しい”美術館TIME”を味わってほしいと思います。
もちろん行く前は、事前予約は忘れずに!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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