「ハマスホイとデンマーク絵画」を観てきました。(後半)

「ハマスホイとデンマーク絵画展」東京都美術館にて

 

ハマスホイとデンマーク絵画展
…それでは後半へいきたいと思います。

 

前半ではデンマークの黄金期の絵画と
スケーイン派の作品を取り挙げてみましたが、
この3章からはデンマーク絵画の変化と
その流れから登場したハマスホイについて見ていきたいと思います。

 

・・・

3章… 19世紀末のデンマーク絵画

 

19世紀末
つまり1880年代頃になると
デンマーク絵画に変化が出てきたと言われています。

 

ちょうどこの頃フランスでは
印象派が人気を博してきた時期でした。
もちろんデンマークでも
印象派の影響を受けた作品が出てくるわけです。

 

「晩秋のデューアヘーヴェン森林公園」(1886年)ティーオド・フィリプスン

「晩秋のデューアヘーヴェン森林公園」(1886年)ティーオド・フィリプスン

これはティーオド・フィリプスンの風景画です。

 

絵を見て感動!
この絵を見てどう思います!?
まさに印象派の作品という感じがしませんか?

ちょっと前のデンマークの風景画は
写実に近い感じだったかと思います。
それが徐々に作風に変化が出てきている様ですね。

 

実はこのフィリプスンは
ゴーガンと出会った事があったそうです。

ゴーガンといえばあの印象派で有名な画家ですが、
この出会いがきっかけとなり
フィリプスンは印象派の理論や技術などを実践していったわけです。

 

考え…・思い…
さて、先ほど19世紀末頃から
デンマークの絵画に変化が出てきたと話しましたが、
その1つの変化が今回紹介した”印象派”だったわけです。

これまで絵画の常識とされていたアカデミーの考えに対して、
徐々に反発の動きが出てきたわけです。

つまり画家たちが自由に描くようになったわけです。

そしてこういった流れの中で
今回の主役でもある”ハマスホイ”が登場してくるわけです。

 

ういえばこの3章で
素敵な絵があったので紹介したいと思います。

・・・

「きよしこの夜」(1891年)ヴィゴ・ヨハンスン

「きよしこの夜」(1891年)ヴィゴ・ヨハンスン

ヴィゴ・ヨハンスンきよしこの夜(1891年)

 

絵を見て感動!
作品自体はうす暗い感じの場面なのですが、
でもとても温かみや楽しさが現れているのがとても素敵ですね!

ちなみにこの絵の様に家族や友人たちが集まり、
クリスマスツリーの周りで手をつなぎ踊ったり歌ったりするのは、
今でもデンマークで続いている伝統的風習だそうです。

 

してこの3章でもう1点
観てほしい作品があります!

ユーリウス・ポウルスンの「夕暮れ」(1893年)

ほんのりと淡い光と
ぼんやりと見える2本の木の様子。
まるで自分が目の前で見ている光景の様で、
これは個人的に非常に惹かれるイイ作品でした。

 

考え…・思い…
ここまで見てきて思うデンマーク絵画の共通点は
身近な風景や身近な家族や生活を描いたものが多い様に思います。

デンマークの人の家族への接し方が
こういった絵画からも垣間見れる感じがしますね。

 

 

4章… ヴィルヘルム・ハマスホイ ‐首都の静寂のなかで

 

そしてここから
今回の主役でもあるハマスホイの作品が登場してきます。

一般的にハマスホイは室内の風景画ばかり注目されますが、
実はそれ以外でも屋外の風景画や人物画など多く描いているのです。

 

・・・

「ライラの風景」(1905年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「ライラの風景」(1905年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

 

・・・

「農場の家屋、レスネス」(1900年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「農場の家屋、レスネス」(1900年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

 

ハマスホイの特徴は良く言えば
シンプル”で”落ち着いた作品”が挙げられると思います。

しかも「農場の家屋、レスネス」について言えば、
色的に白と黒しか使っていない様に思います。

 

さてここで、
ハマスホイが白黒を多用したこんなエピソードが…

ハマスホイのパレットをみると、
そこには灰色と白の4つの絵の具の塊が載っていた。
それぞれが注意深く区別されていた。

 

・・・

「クレスチャンスボー宮廷礼拝堂」(1910年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「クレスチャンスボー宮廷礼拝堂」(1910年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

 

・・・

「聖ペテロ聖堂」(1906年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「聖ペテロ聖堂」(1906年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

 

白と黒、灰色とある程度決まった色を好んで、
ハマスホイは風景画を描いていたって事だろうけど…。

 

考え…・思い…
でもなぜここまで明るさを抑えて描いたのだろう?
ふと疑問に思ったりするわけです。

白い色でも明るい白だったり、
光に近い白も表現できただろうに~

そこをあえてくすんだ白や
霧に包まれたような薄暗い色を使っていたわけです。

でもこういった独特な色遣いが
ハマスホイの魅力でもあるわけです!

 

もちろんこの薄暗い白黒の色彩感覚は、
室内の風景画でも存分に見られるのです。

・・・

「背を向けた若い女性のいる室内」(1903-04年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「背を向けた若い女性のいる室内」(1903-04年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

これは今展の看板作品になっている作品です。

 

・・

「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」(1910年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」(1910年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

 

・・・

「室内-開いた扉」(1905年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「室内-開いた扉」(1905年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

そしてこの人も描かれていない
室内だけを描いた作品もハマスホイの独特な魅力です。

 

考え…・思い…
それにしても本当に疑問ですが…
どんな意図でこのありきたりの室内を描いたのか?

 

そのヒントは
ハマスホイのこの言葉から分かる気がします。

 

マスホイのエピソードその1

たとえそこに誰もいなかったとしても、
古い部屋には独特の美しさがあると思っている。

 

マスホイのエピソードその2

モティーフを選ぶときに私が特に重要視するのはその線で、
それは絵画における調和した構造美と呼ぶべきもの。

もちろん光も大切であり、
色彩もどの様に見えるか?調和した色彩になる様に務めていますが、
何よりもまずモティーフを選ぶ際に何よりも重要なのはその線なのです。

 

考え…・思い…
何気ない部屋にも、
ハマスホイなりの美”を感じていたって事だろうけど、
この美は”建築美”に近いものかな~とも思います。

部屋は壁やドア、窓など色々な線から構成されていて、
こういった”部屋の構造美”に
ハマスホイなりの美を感じていたのかもしれませんね。

 

・・・

「カード・テーブルと鉢植えのある室内」(1910-11年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

「カード・テーブルと鉢植えのある室内」(1910-11年)ヴィルヘルム・ハマスホイ

 

こうやってハマスホイの作品と彼のエピソードから、
なぜ室内を描いたのか??
なぜ薄暗くトーンを抑えた絵画を描いたのか??
その理由が何となくですが分かった気がします。

 

 

とめとして…

「ハマスホイとデンマーク絵画展」東京都美術館にて
今展を総じて言うなら、
久々にスケーインの作品を観れたのも良かったですが
ハマスホイの絵が一堂に観れるのもとても貴重だったと思います。
(なかなかここまで見れる機会ってないですしね…)

 

デンマークの絵画はフランスに影響されている部分もある反面、
デンマークならではの独特な感性も魅力の1つと思います。

ぜひ行ける機会のある人は、
行ってみるのもイイと思います。

 

最近ではコペンハーゲンの雑貨も頻繁に日本で目にしますが、
どれもがオシャレでカワイイものばかりですよね。
(コペンハーゲンはデンマークの首都)

でもデンマークの美術展は
なかなか日本で開催していないのが現実です。
それだけにこの絵画展はかなり貴重な機会だと思います。

 

東京都美術館
ぜひあなたも「ハマスホイとデンマーク絵画展」へ!

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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