「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡」を観てきました。

「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡 - 市民が創った珠玉のコレクション」…国立新美術館にて

 

ポップアートや表現主義、抽象絵画にシュルレアリスム…。

それからピカソの作品を多く抱えている点も、忘れてはいけないポイントでしょうね。まさにドイツのルートヴィヒ美術館は近代美術の宝庫と言っても過言ではないと思います。

 

国立新美術館
先日国立新美術館でスタートした「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡」は、そんな近代美術の宝庫と言われるルートヴィヒ美術館の一部が垣間見れる企画展です。今展は東京と京都の巡回開催になっています。リピーターが続出しそうな充実した内容になっているので、気になった人はぜひ行ってみる事をおススメします。

 

ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡 – 市民が創った珠玉のコレクション

・(東京開催)2022年6月29日(水)~9月26日(月)、国立新美術館にて
・(京都開催)2022年10月14日(金)~2023年1月22日(日)、京都国立近代美術館にて

 

絵画に写真、彫刻、映像とバリエーションに富んだ芸術の数々で、正直言って思った以上に充実していた内容でした。個人的には度肝を抜かれた感じでした。特に後半に見れた映像には衝撃的で、パフォーマンスもアートに成り得る!改めて現代アートの可能性にビックリさせられますね。^^

 

さて、当初私が期待していのはデザイン性に富んでいたり、色彩的に鮮やかな作品たちでした。

私的にマティスやデュフィは好きな画家で、鮮やかな色彩感だったり、ファッション性の感じられる作品は本当にイイですね!例えば、前半に見れたアレクセイ・フォン・ヤウレンスキーや、アウグスト・マッケの作品も心惹かれるものでした。

 

「扇を持つお伽噺の王女」(1912年)アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー

「扇を持つお伽噺の王女」(1912年)アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー

・65.5×54.0cm、カンヴァスに油彩、ルートヴィヒ美術館所蔵(ドイツ、ケルン)

これはアレクセイ・フォン・ヤウレンスキー(Alexej von Jawlensky)の人物画。実は人物画や肖像画はそこまで好きなジャンルではないのですが、こういった鮮明な色彩感や内面から感じられるパッションというか…。観ているだけで、気持ちも明るくなってきます。この色彩から感じられる内なる情熱は、まさに表現主義といった感じでしょうね。

 

「牛」(1913年)フランツ・マルク

「牛」(1913年)フランツ・マルク

・29.8×51.0cm、厚紙に油彩、ルートヴィヒ美術館所蔵(ドイツ、ケルン)

このフランツ・マルク(Franz Marc)はドイツを代表する表現主義の画家。”青騎士”と呼ばれる表現主義グループの中心的メンバーで、動物をこよなく愛した画家でも知られています。作品では馬や牛、ヒツジなど様々な動物を描いていて、しかもどれもが色鮮やかな点が特徴的です。

 

フランツ・マルク(Franz Marc)1880ー1916

動物画に表現主義的コスモロジーを導入したドイツの画家。ミュンヘンのアカデミーに入学後、1903年、07年のパリ訪問で印象派やゴッホの作品に接触。10年マッケ、カンディンスキーに接近、11年カンディンスキーとともにグループ「青騎士」を組織、ドイツをはじめフランス、ロシアの同時代の芸術家たちと積極的に交流。以後、ジンデルスドルフに居を構えて、重要な制作を続けるが、第1次大戦に召集され、16年ヴェルダンの戦場にたおれた。彼の主要作品の主題のほどんどは動物によって占められているが、これによって彼が追求したのは動物と自然、さらに宇宙との交感をキュビスムやドローネーの形態把握と独自の色彩をもって表現することであった。

※「西洋絵画作品名辞典」より

 

さて、表現主義の画家で忘れてはならないが”マックス・ベックマン(Max Beckmann)”です。今回マックス・ベックマンの作品が数点展示されていますが、どれも力強い輪郭線と荒々しい色遣いが印象的でした。

今回要チェックしてほしいマックス・ベックマン作品がこちら☟!
・「月夜のヴァルヒェン湖(1933年)
・「恋人たち(1940‐43年)

ちなみに、ベックマンは自身が戦争を経験しているだけあって、戦争の悲惨さを抽象的に描いた作品を多く残しています。そんな生い立ちを知っていると、どの作品も不安や苦痛といった暗いイメージが付きまとってしまうのです。

事実、表現主義の画家の多くは戦争に翻弄されていました。中には戦争で命を失った画家もいます。ドイツ表現主義の画家たちは、戦争の被害者でもあったわけです。

 

「陶酔の道化師」(1929年)パウル・クレー

「陶酔の道化師」(1929年)パウル・クレー

・50.5×35.5cm、カンヴァスに油彩、ルートヴィヒ美術館所蔵(ドイツ、ケルン)

 

「スプレムス 「スプレムス 38番」(1916年)カジミール・マレーヴィッチ38番」(1916年)カジミール・マレーヴィッチ

「スプレムス 38番」(1916年)カジミール・マレーヴィッチ

・102.5×67.0cm、カンヴァスに油彩、ルートヴィヒ美術館所蔵(ドイツ、ケルン)

 

さて、今回の「ルートヴィヒ美術館展」は、写真も多く展示されているのもポイント。

・ホルスト・パウル・ホルスト「マンボッシュのコルセット
・アレクサンドル・ロトチェンコ「水への跳躍」、「電線」、「ライカを持つ少女

どれも白黒写真だけれど、カラーでは決して表現できないモノクロならではの味わい!ぜひ実際に観て感じてほしいですね。

 

それから、ルートヴィヒ美術館はパブロ・ピカソの作品を多く所蔵している事でも有名!ピカソと言えば「ゲルニカ」が有名だと思いますが、このピカソも戦争の影響を受けた画家の一人。今展では約8点ほどが展示されていますが、特に目玉が「アーティチョークを持つ女」。今回の図録の絵柄にもなっている作品です。

「ルートヴィヒ美術館展」図録

アーティチョークは松ぼっくりの様な形をしている西洋野菜の一種です。実はこのアーティチョークは中世の武器”モルゲンシュテルン”をイメージさせているそうです。直接的に戦争を描いているわけではないけれど、でも作品からは戦争を連想させる要素が随所に描かれているわけです。例えば、左手の尖った爪や戦場に立ち込める煙を彷彿とさせる灰色の背景。明らかに戦争の悲惨さや様子を描いている様に見えませんか!?

 

表現主義やピカソの作品といい、グロテスクだったり暗い作品が多いのは、戦争という時代が大きく影響しているから。

個人的には明るく、美しいアートが好きな私にとって、戦争をイメージさせる暗い作品はどうしても抵抗があります。見ていると、心苦しくなってきますしね…。

もちろん作品に画家のメッセージや感情が表現されていると思えば、それはそれでアートとしては素晴らしいけれど。でも改めてアートも戦争の被害者かも?と思ってしまうのです。

 

「公園で詠む男」(1914年)アウグスト・マッケ

「公園で詠む男」(1914年)アウグスト・マッケ

・86.5×100.3cm、カンヴァスに油彩、ルートヴィヒ美術館所蔵(ドイツ、ケルン)

これはアウグスト・マッケの作品で、今回特に惹かれた作品でした。映える色彩感と、リズミカルな枝の線は素敵ですね。実はマッケという画家は戦争で命を失った画家の一人。27歳という若さの生涯だったのです。もし戦争がなければ、このマッケという画家はどれほどの作品を描いていただろうか??そう思ったら、本当に悔しいというか残念ですよね。表現主義の画家は戦争の影響を受けている場合が多く、このマッケの様に戦争で亡くなっている人もいます。例えば先ほど挙げたフランツ・マルクも戦争で命を落としています。

 

さて、そんなこんなで締めで度肝を抜かれたのがアンドレア・フレイザーの映像です。力強く説得力のあるスピーチ映像は見ていて引き込まれますが、最後に見せたパフォーマンスは実にビックリ!今の日本でこんな事をしたら、どんなバッシングが起こるか分からないけれど、パフォーマンスも一つのアートとして見たら、これはこれで有りなのかもしれないですね。

現在はカリフォルニア大学の教授を務めているそうですが、このパフォーマンス力とスピーチ力。見る価値は十分あると思います。30分ほどの映像として展示されていますが、おそらくあなたも引き込まれる事必至!!

 

そして追加として、今回私が魅了された作品を挙げてみると…

ジャン・デュビュッフェ大草原の伝説(1961年)
 …じっくり眺めていると、まるで人の顔や身体に見えてきてしまいます。

ジャクソン・ポロック黒と白 No.15
 …ポロックとしては珍しい黒一色のドリッピング作品。

ギュンター・ユッカー大きな螺旋l(黒)と大きな螺旋ll(白)
 …光と影の複雑な戯れは必見!

ルーチョ・フォンタナ空間概念、期待」 
 …カンヴァスに切り込みを入れた作品。ぜひLIVE感で味わってほしい作品です。

 

 

「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡 - 市民が創った珠玉のコレクション」の看板

今回の「ルートヴィヒ美術館展」の大きな魅力は、単に絵画だけに収まらないバリエーションの多さ!写真や彫刻、映像やオブジェ。まさに表現の可能性を感じてしまうのです。

1回では味わえないほどの濃さは、今回の「ルートヴィヒ美術館展」の醍醐味!おそらくリピートする人も続出するだろう企画展だと思います。ぜひ一度行ってみる事をおススメします。

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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