- 2022-7-24
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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2年遅れの2022年、やっと東京都美術館で開催するに至った「ボストン美術館展 芸術×力」
本来なら2020年に巡回予定だった企画展でしたが、まさかコロナの影響でこうなってしまうとは…。そういう意味では本当に”やっと”という感じですね。
さて、アメリカ、マサチューセッツ州にあるボストン美術館は、日本との関係が深い事でも知られています。浮世絵や巻物、刀剣など日本のものが豊富に所蔵されているのも特徴で、個人的には美術館というよりも博物館?に近いイメージだったりします。もちろん今展は日本の美術品が満載!という感じでした。
上野の東京都美術館で、7月23日からスタートした「ボストン美術館展」
暑さ真っ盛り!という時期の開催なので、さすがに外の日差しと暑さは辛いですね…。でも美術館内は冷房が効いていて居心地が良いので、ついつい長居しがち。出来れば館内では1枚羽織るものがあるとイイと思います。
【ボストン美術館展 芸術×力】 ・会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日) |
それでは、「ボストン展」の内容に迫りながら、私的にビューしていこうと思います。
この「ボストン美術館展 芸術×力」を一言で言うなら、
絵画好きにはちょっと物足りない…。
でも釘付けになる作品が満載な企画展!といった感じでしょうか。
実は今回の展示では、巻物や屏風など日本の美術品が目を惹きます。個人的に釘付けなったのが、長船長光の太刀”銘長光”と「吉備大臣入唐絵巻」。ここだけでもヤバいくらい時間を経つのを忘れます。それだけ釘付けになってしまっのです。^^
もちろん絵画もイイものがあるので、まずはそこから見ていこうと思います。

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク
・132.1×106.3cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵
肖像画家のイメージが強いヴァン・ダイクですが、この肖像画も実に上手い!と言った感じです。人物や衣装の質感だったり、まさにリアルそのもの!でも実は細密に描かれてはいなく、流れる様な筆さばきでリアルに表現しているのが凄いですね。ルーベンスから”優れた弟子”と評価されたのも分かる気がします。

「祈る聖ドミニクス」(1605年頃)エル・グレコ
・104.7×82.9cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

「灰色の枢機卿」(1873年)ジャン=レオン・ジェローム
・68.6×101cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵
ジェロームの作品はどれも意味あり気な印象で、気が付けば立ち止まって魅入ってしまいます。もちろんこの「灰色の枢機卿」も意味あり気なポイント満載です。ところで、書を読みながら階段を降りている人物は一体何者なのだろう?
参考)⇒ジャン=レオン・ジェロームの「灰色の枢機卿」を解説!

「1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンドンデリー侯爵チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ボーモント」(1904年)ジョン・シンガー・サージェント
・287×195.6cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

「マクシミリアン1世の凱旋車(左)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー
・46×228cm、木版、ボストン美術館所蔵
これはアルブレヒト・デューラーの木版画。当時パトロンだったマクシミリアン1世の注文で制作した作品です。まるで装飾画の様な細密で緻密な描写のため、相当手間がかかった作品。1519年にマクシミリアン1世は亡くなっていて、その後も継続して制作していたそうです。

「マクシミリアン1世の凱旋車(中)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー
当時の統治者は自身の政治的功績、美徳を誇示するため、こういった大規模な連作版画を作らせていたそうです。当時としては有効な媒体だったそうですが、細かな注文が多かったそうで制作側デューラーにとってはかなり手間暇かかったといいます。

「マクシミリアン1世の凱旋車(右)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー
これまでデューラーの版画はいくつも観てきましたが、どれも精密かつ緻密。数学者としての側面もあったので、理系的思考も作品に表れているんでしょうね。
デューラー(Albrecht Dürer)、1471ー1528年
ドイツ・ルネサンスを代表する画家。金銀細工師の息子に生まれ、父に学んだのち、1486年よりM・ヴォルゲムートに師事し国際ゴシック様式の絵画、版画を学ぶ。90年、ショーンガウアーに師事するために修業に出るが、彼の死去により果たせず、ストラスブール、バーゼルなどを遍歴。94-95年と1505‐07年の2回ヴェネツィアへ旅行し、イタリア・ルネサンスに触れる。特に2回目の旅行では私淑するベッリーニと会った。以後、人体比例や遠近法を研究。これは没後刊行の『人体比例論』(1528年)に結実する。12年皇帝マクシミリアンの宮廷画家。20‐21年、皇帝後継者カルル5世に自己の地位を保証してもらうためネーデルランドを旅行。当時の画家たちに大きな影響を与えた。また版画を一つのジャンルとして確立し、数多くの木版画、銅版画の傑作を残している。
※「西洋絵画作品名辞典」より
そして今回特に釘付け作品が「吉備大臣入唐絵巻」
普段あまり絵巻に惹かれる事はないのですが、なぜか今回に限っては魅入ってしまったのです。ユーモアと一連のストーリーが巻物に凝縮されている。この日本独特の絵画形式は、見ものだと思います。
この「吉備大臣入唐絵巻」は吉備真備が遣唐使として唐に向かった話を描いています。簡単なストーリーを交えながら、作品を見てみようと思います。

「吉備大臣入唐絵巻(巻第1)」
吉備真備を乗せた遣唐使の船が日本からやってきました。港では皇帝の使者たちが出迎えています。しかし才能を恐れた唐人たちによって、吉備は高楼に幽閉されてしまうのです。

「吉備大臣入唐絵巻(巻第2)」
高楼に幽閉された吉備の元に、鬼がやってきます。実はこの鬼はかつて遣唐使として海を渡り、没した阿倍仲麻呂の霊だったのです。

「吉備大臣入唐絵巻(巻第3)」
唐人たちは吉備に恥をかかせようと、難解な文の試練を課そうとします。そこで吉備と阿倍仲麻呂は飛行自在の術を使い、試験の盗み聞きをしに向かいます。
その後、難解の文の試練を課すためにやってきた使者は、すでに試練の内容を知っていた吉備に驚き退散。そして次なる試練として囲碁対決を課してきます。

「吉備大臣入唐絵巻(巻第4)」
囲碁の名人と真備の対決が始まりました。しかし勝敗はなかなかつきません。吉備は隙をついて黒石を一つ飲み込み勝利を収めます。唐人たちはこの吉備の勝利を怪しみ、下剤を飲ませますが…。真備は超能力で腹に石をとどめ、正真正銘”勝利”を手にしたのでした。
物語としてユーモアがあって、一連の流れでストーリーを追って見れる巻物。今で言う漫画に近い代物でしょうね。こういった娯楽的芸術が平安時代後期頃に制作されたと思うと、当時の文化的高さが垣間見れるわけです。
本来ボストン美術館はアジアやヨーロッパ、アメリカ美術を始め、古代から現代と実に様々な作品を幅広く所蔵している美術館です。今回はその中から”芸術”と”力”に焦点を当てた作品がやって来たわけです。本音を言えば”もっと西洋絵画も観たいな~”と、欲を言えば本当にキリがないわけですが…。
このコロナのご時世でボストン美術館の一部でも観れただけでも、実に貴重な時間が過ごせたと思うのです。思いのほかイイ作品もありましたしね!^^
ぜひあなたも行ってみては!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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