東京都美術館で「ボストン美術館展 芸術×力」を観てきました。

「ボストン美術館展 芸術×力」 …東京都美術館にて

 

先日、東京都美術館でやっと開催に至ったボストン美術館展 芸術×力を観てきました。

 

本来なら2020年に巡回予定の企画展でした。まさかコロナの影響で、2年遅れになってなってしまうとは…。そういう意味では本当に”やっと”という感じですね。

 

2022年7月後半の東京都美術館

私が行ったのは開催初日の7月23日。”夏真っ盛り”というだけあって、さすがにこの日も外の日差しと蒸すような暑さは辛いですね…。でも美術館内は冷房が効いていて居心地は最高!ついつい長居しがちになってしまいました。出来れば館内では1枚羽織るものがあるとイイと思います。

 

ボストン美術館展 芸術×力

・会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日)
・場所:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)

 

2022年7月後半の東京都美術館 「ボストン美術館展 芸術×力」 …東京都美術館にて

それでは、「ボストン展」の内容に迫りながら、私的にレビューしていこうと思います。

 

 

て、アメリカ、マサチューセッツ州にあるボストン美術館は、日本との関係が深い事でも知られています。浮世絵や巻物、刀剣など日本の美術品が豊富に所蔵されているのも特徴で、個人的には美術館というよりも博物館?に近いイメージだったりします。

今展は”芸術と力”をテーマにした日本の美術品が豊富に展示されていて、特に長船長光太刀銘長光吉備大臣入唐絵巻が個人的に印象的でした。正直言って、これだけでもヤバいくらい時間が経つのを忘れます。それだけ釘付けになってしまったのです。^^

 

もちろん絵画もイイものがあるので、まずはそこから見ていこうと思います。

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

「メアリー王女、チャールズ1世の娘」(1637年頃)アンソニー・ヴァン・ダイク

・132.1×106.3cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

これはアンソニー・ヴァン・ダイク(Anthony van Dyck)の作品「メアリー王女、チャールズ1世の娘」。肖像画家の巨匠というだけあて、実に人物の描写が上手い!人物や衣装の質感だったり、まさに本物そっくりと言った感じでしょうか。でも細密に描かれてはなく、流れる様な筆さばきでリアルに表現しているのが凄いですね。ルーベンスから”優れた弟子”と評価されたのも分かる気がします。

 

「祈る聖ドミニクス」(1605年頃)エル・グレコ

「祈る聖ドミニクス」(1605年頃)エル・グレコ

・104.7×82.9cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

 

「灰色の枢機卿」(1873年)ジャン=レオン・ジェローム

「灰色の枢機卿」(1873年)ジャン=レオン・ジェローム

・68.6×101cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

これは19世紀頃に活躍したフランスの画家ジャン=レオン・ジェローム(Jean-Léon Gérôme)の作品。「灰色の枢機卿」というちょっと意味深なタイトルも興味をそそられますね。もちろんも描かれている画も意味あり気な感じだったのです。

書を読みながら階段を降りている黒の衣を着た僧侶と、頭を深く下げている身分の高い者たち。中には枢機卿らしき人物がいるのも分かります。何だか意味がありそうですよね。^^
参考)⇒ジャン=レオン・ジェロームの「灰色の枢機卿」を解説!

 

「1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンドンデリー侯爵チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ボーモント」(1904年)ジョン・シンガー・サージェント

「1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンドンデリー侯爵チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ボーモント」(1904年)ジョン・シンガー・サージェント

・287×195.6cm、カンヴァスに油彩、ボストン美術館所蔵

 

「マクシミリアン1世の凱旋車(左)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー

「マクシミリアン1世の凱旋車(左)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー

・46×228cm、木版、ボストン美術館所蔵

これはアルブレヒト・デューラーの木版画。当時パトロンだったマクシミリアン1世の注文で制作した作品です。まるで装飾画の様な細密で緻密な描写のため、かなりの時間と手間がかかった作品と言われています。1519年にマクシミリアン1世は亡くなってしまい、その後も継続して制作していたそうです。

 

「マクシミリアン1世の凱旋車(中)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー

「マクシミリアン1世の凱旋車(中)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー

当時の統治者は自身の政治的功績、美徳を誇示するため、こういった大規模な連作版画を作らせていたそうです。当時としては有効な媒体だったそうですが、細かな注文が多かったそうで制作側デューラーにとってはかなり手間暇かかったといいます。

 

「マクシミリアン1世の凱旋車(右)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー

「マクシミリアン1世の凱旋車(右)」(1518‐1522年頃)アルブレヒト・デューラー

これまでデューラーの版画はいくつも観てきましたが、どれも精密かつ緻密。数学者としての側面もあったので、理系的思考も作品に表れているのでしょうね。

 

デューラー(Albrecht Dürer)、1471ー1528年

ドイツ・ルネサンスを代表する画家。金銀細工師の息子に生まれ、父に学んだのち、1486年よりM・ヴォルゲムートに師事し国際ゴシック様式の絵画、版画を学ぶ。90年、ショーンガウアーに師事するために修業に出るが、彼の死去により果たせず、ストラスブール、バーゼルなどを遍歴。94-95年と1505‐07年の2回ヴェネツィアへ旅行し、イタリア・ルネサンスに触れる。特に2回目の旅行では私淑するベッリーニと会った。以後、人体比例や遠近法を研究。これは没後刊行の『人体比例論』(1528年)に結実する。12年皇帝マクシミリアンの宮廷画家。20‐21年、皇帝後継者カルル5世に自己の地位を保証してもらうためネーデルランドを旅行。当時の画家たちに大きな影響を与えた。また版画を一つのジャンルとして確立し、数多くの木版画、銅版画の傑作を残している。

※出典元:「西洋絵画作品名辞典」

 

 

そして今回特に釘付け作品が吉備大臣入唐絵巻

普段あまり絵巻に惹かれる事はないのですが、なぜか今回に限っては魅入ってしまったのです。ユーモアと一連のストーリーが巻物に凝縮されている。この日本独特の絵画形式は、見ものだと思います。

この「吉備大臣入唐絵巻」は吉備真備が遣唐使として唐に向かった話を描いています。簡単なストーリーを交えながら、作品を見てみようと思います。

「吉備大臣入唐絵巻(巻第1)」

「吉備大臣入唐絵巻(巻第1)」

吉備真備を乗せた遣唐使の船が日本からやってきました。港では皇帝の使者たちが出迎えています。しかし才能を恐れた唐人たちによって、吉備は高楼に幽閉されてしまうのです。

 

「吉備大臣入唐絵巻(巻第2)」

「吉備大臣入唐絵巻(巻第2)」

高楼に幽閉された吉備の元に、鬼がやってきます。実はこの鬼はかつて遣唐使として海を渡り、没した阿倍仲麻呂の霊だったのです。

 

「吉備大臣入唐絵巻(巻第3)」

「吉備大臣入唐絵巻(巻第3)」

唐人たちは吉備に恥をかかせようと、難解な文の試練を課そうとします。そこで吉備と阿倍仲麻呂は飛行自在の術を使い、試験の盗み聞きをしに向かいます。

その後、難解の文の試練を課すためにやってきた使者は、すでに試練の内容を知っていた吉備に驚き退散。そして次なる試練として囲碁対決を課してきます。

 

「吉備大臣入唐絵巻(巻第4)」

「吉備大臣入唐絵巻(巻第4)」

囲碁の名人と真備の対決が始まりました。しかし勝敗はなかなかつきません。吉備は隙をついて黒石を一つ飲み込み勝利を収めます。唐人たちはこの吉備の勝利を怪しみ、下剤を飲ませますが…。真備は超能力で腹に石をとどめ、正真正銘”勝利”を手にしたのでした。

 

物語としてユーモアがあって、一連の流れでストーリーを追って見れる巻物。今で言う漫画に近い代物でしょうか。こういった娯楽的芸術が平安時代後期頃に制作されたと思うと、当時の文化的高さが垣間見れるわけです。

 

「ボストン美術館展 芸術×力」 …東京都美術館にて

本来ボストン美術館はアジアやヨーロッパ、アメリカ美術を始め、古代から現代と実に様々な作品を幅広く所蔵している美術館です。今回はその中から”芸術”と”力”に焦点を当てた作品がやって来たわけです。本音を言えば”もっと西洋絵画も観たいな~”と、欲を言えば本当にキリがないわけですが…。

このコロナのご時世でボストン美術館の一部でも観れただけでも、実に貴重な時間が過ごせたと思うのです。思いのほかイイ作品もありましたしね!^^

ぜひあなたも行ってみては!?

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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