- 2024-4-21
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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先日アーティゾン美術館で「ブランクーシ展 本質を象る」を観てきました。
日本でも度々見かける”ブランクーシ彫刻”ですが、意外にも今回が日本初の展覧会だそうです。
単純な形(フォルム)でありながら、でも心に深く刻まれる存在感もあるし、あの独特な作風は唯一無二じゃないでしょうか。
私の中では、男女がキスし合っている「接吻」が好きで、愛らしく不思議な魅力があって、つくづく何度見てもイイものですね。^^
今回はルーマニア出身の彫刻家”ブランクーシ(Brancusi)”の展覧会について、私の感想レビューと見所について話していこうと思います。
【 目次 】 |
「ブランクーシ 本質を象る」展のレビュー!
シンプルな造形でありながら、心に深く刻まれる存在感がある!
…これが私が思うブランクーシ彫刻の特徴というかイメージです。
抽象的でシンプル、洒落た言葉で表現するなら”洗練されたフォルム”となるでしょうか。
それにも関わらず、あれほど心に響いてくるのは不思議ですよね。こういった理由もあって、前々から「ブランクーシ展」に興味を持っていたわけです。
ちなみに展覧会名になっている”象る(かたどる)”ですが、意味としては”抽象的な物事を、形として表現する”になります。まさに私が思うブランクーシを象徴しているかの様ですね。
それでは、本題の「ブランクーシ」展のレビューをしていこうと思います。
日本初開催となった「ブランクーシ」展ですが、展示構成は彫刻約20点に写真や絵画などを加えた、計90点となっています。個人的にはもっと彫刻を観れたら嬉しいのにな~というのが本音ですね。
でも彫刻は単純に数だけで判断してはいけないと思っています。
というのも、観方によっては展示数以上の満足度が得られるから!
後半で私のおススメする彫刻作品鑑賞方法について話しているので、ぜひこちらも参考に!
それに今回の「ブランクーシ展」は、作風を配慮した洒落た展示方法になっているのもポイント。
作品に集中できる環境を作っている点には、私的には嬉しい!の一言ですね。^^
・高さ28.0cm、石膏、石橋財団アーティゾン美術館所蔵
さて僕にとってブランクーシと言ったら、「接吻(The Kiss)」は絶対に外せない作品の一つ。
初めてこの彫刻を見た時は、本当に心がシビレたものです。
(私が若かりし頃に愛した、あの女性を思い出してしまったからです。^^)
造形は非常に単純ながら、それでいて愛を感じる情熱さもある。もし小さな置物として売られていたら、部屋に飾りたいものですね。
・29.2×28.8×22.3cm、ブロンズ、アート・インスティテュート・オブ・シカゴ所蔵
これは1907年(ブランクーシが30歳頃)に制作した作品です。
ちょうどブランクーシがロダンの工房で1~2か月だけ働いていた頃ですね。この後に作風がより抽象化していったわけですが、思うに「苦しみ」という彫刻自体、非常にシンプルな感じもします。
ちなみに今回は、基本的に撮影がOKになっています。
後半の”ブランクーシの映像”は撮影不可ですが、彫刻作品を撮れるのは嬉しいですね。
彫刻は観る角度によって様々な表情が見れる!もちろん写真も角度によって色々な表情を収められるわけですから。これは”美術好きにはタマラナイ”ですね。^^
さて、ここまでいくつか写真を見てきて、ふと気づいた人も多いかと思います。
一般的に作品の横や下には、作品名や解説が記載されているのがほとんど。でも今回の「ブランクーシ」展では、作風のイメージを壊さないために解説が一切省かれているのです。
ブランクーシの作品は、基本的にシンプルなフォルムが特徴です。
言うなれば、”本質的な造形”がブランクーシの最大の特徴でもあり、オリジナリティーでもある。そんなブランクーシの作風を崩さないために、展示方法をシンプルにするなんて!!
私は展示室に入った瞬間、”オオッ!!アーティゾンも分かっているな~”と唸ってしまいましたね。^^
こういった洒落た演出は、個人的に凄く好きですね。美術を好きな人だったら、おそらく僕の気持ちも分かってもらえるかと思います。
~ モディリアーニ、ロッソ、アポリネールをはじめ当時の前衛作家たちと交わったが、常に自己の純粋でまた東洋的なオリジナリティーを損うことなく、ユニークな造形を進めた。その動物や物質の生命との共感に発する単純なフォルムは抽象に迫るもので、現代彫刻に与えた意味はきわめて大きい。 ~
・出典元「新潮 世界美術辞典」より一部抜粋
実はこういったシンプル過ぎる作風ゆえ、時として裁判沙汰になった事もありました。
これは結構有名なエピソードなので、知っている人も多いのではないでしょうか。
※「ブランクーシの略年譜」の一部 ※「ブランクーシ 本質を象る」展より
1926年、アメリカに彫刻作品「空間の鳥」を輸出した際、美術品と見なされずに高い関税をかけられてしまったのです。
結局裁判で争い勝訴したわけですが、作風が事件を巻き起こすって、実にオモシロイエピソードだと思いませんか!?
・132.4×35.5×35.5cm(ブロンズから十字形台座まで)、ブロンズ、豊田市美術館所蔵
これは今回展示されていた「空間の鳥(Bird in Space)」ですが、どうですか!?
私は観た瞬間、”鳥の羽”をイメージしてしまいました。ある意味”本質的”ではあるけれど、でもここまでシンプルだと”作品名”を言われないと、どういうものなのか理解にも苦しみますね。
芸術品なのか??果たしてそうでないのか??
この微妙な境目もブランクーシ作品ならでは。
ぜひ実際にあなたの目で観て、そして判断するのもオモシロいと思います。
楽しさ数倍!? 私のおススメ彫刻鑑賞方法!
という感じの「ブランクーシ 本質を象る」展ですが、ここで私がおススメする彫刻を数倍楽しむ鑑賞方法について話したいと思います。
今回彫刻作品は約20点程と、数でみたらちょっと物足りないと感じる人もいるかと思います。でも彫刻は観方によって、楽しさも満足度も数倍に上がります!
だから、彫刻作品はLIVEに限るわけですね!
・92.4×10.5×45.0cm、ブロンズ、豊田市美術館所蔵
この「雄鶏(The Cock)」は、まさに良い例です。
彫刻作品は展示方法にもよりますが、一般的に360度すべての角度から作品を鑑賞できます。
・92.4×10.5×45.0cm、ブロンズ、豊田市美術館所蔵
真正面から見たり、右や右下から、左や左下から…
しかも表面が金でピカピカに仕上がっていますから、角度によって光の反射も違って見えますし。本当に様々な表情を読み取れるわけです。
これぞ、彫刻の最大の醍醐味でしょうか。
だから彫刻作品は展示数以上の満足度を得られるわけですね。^^
まさに一石二鳥、一石三鳥…
否、それ以上でしょうか。
私が彫刻を鑑賞する時、絵画以上に時間を要してしまうのはこのため。
ちなみにもっと欲を言えば、手すり付きの足場みたいなものがあり、上から作品を見渡せたらより嬉しいですが。^^
「ブランクーシ」展の開催概要について
「ブランクーシ展 本質を象る」は、東京駅から歩いて5分程にある”アーティゾン美術館”の6階で開催しています。
興味のある方はぜひ足を運んでみるのもイイと思います。
【 「ブランクーシ 本質を象る」の開催概要 】 ・会期:2024年3月30日(土)~7月7日(日) ・開館時間:10:00~18:00(5月3日を除く金曜日は20:00まで)※入館は閉館30分前まで ・休館日:月曜(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日 ・入館料:一般窓口販売は2,000(ウェブ予約は1,800円) |
アーティゾン美術館の6階で「ブランクーシ展」、5~4階では「石橋財団コレクション選」が開催中です。
また特集コーナー展示として、”清水多嘉示”さんの作品も展示されているので、くまなく鑑賞してみるのもイイと思います。
これは5階の「石橋財団コレクション選」ですが、ブランクーシ彫刻に続く感じで、彫刻作品がズラ~と展示されているので、ココも必見!
先ほどの話になりますが、彫刻を様々な角度から味わってみるのもイイかと思います。
というわけで、洒落た演出のアーティゾン美術館で、ぜひ楽しいアート鑑賞を!!
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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