カラヴァッジョの影響を受けた画家”カラヴァジェスキ”と、彼らの作品

カラヴァッジョの追随者たち(Caravaggisti)

 

度重なる喧嘩に暴力、さらには殺人まで犯してしまったバロック期の画家”カラヴァッジョ”。

でもカラヴァッジョの人間性はどうあれ、作品の素晴らしさが本物だった事は、追随者”カラヴァジェスキ(Caravageschi)”たちが証明していると思います。

 

如何せん経歴だけ見ると、素行の悪さばかりが目に付いてしまいます。正直言って経歴だけでは、本当のカラヴァッジョの人間性は分からないわけですが…。ちなみに私の印象としては、強烈過ぎる明暗対比と写実性が特徴のカラヴァッジョの作品は、少なからず彼の性格を表わしているかな?とも思っています。でもその強烈さが多くの追随者を生んだのは間違いのない事実!

 

今回は、カラヴァッジョに影響を受けた画家たちについて話していこうと思います。

 

 

カラヴァッジョの追随者”カラヴァジェスキ”って?

ZOOM

絵画展でも頻繁に目にするカラヴァッジョの作品。宗教画や人物画が多い印象ですが、どれも強烈過ぎる写実性と明暗の対比は、何度見ても惹き付けられてしまいます。

写実性の高さで言えば、果物を描かせたら、どんな虫に食われているかまで分かるほどですし。強烈なスポットライトを当てた様な光の描写は、まるで演劇の一場面を描いた感じで、観る者を釘付けにします。

ここまで質の高い作品を描いたわけだから、影響された画家が多かったのも頷けますね。

 

カラヴァジェスキ(Caravageschi)

カラヴァッジオの様式に鼓吹された国際的な画家の一流派。暗色の背景、強烈な明暗対照、庶民的図像とリアリズムを特色とする。1600‐20年頃のローマを基点として、ナポリ、北イタリアおよび北方諸国にひろまり、バロック自然主義の国際的な伝播と隆盛の端緒(たんしょ)を開いた。ジェンティレスキ、マンフレーディ、サラチェーニ、プレーティ(Mattia Preti、1613‐99)、フランスのル・ヴァランタン、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、ユトレヒト画派の画家たち、ナポリのホセー・デ・リベーラ、カラッチオーロなどがその代表者。

出典元:「新潮 世界美術辞典」

※ユトレヒト画派…オランダのユトレヒトを中心に活躍した画家たちの事。

カラヴァジェスキを端的に説明するなら、カラヴァッジョの作品を研究し、作風を真似た画家たちを言います。他にはカラヴァジェスティ、カラヴァッジョ派と呼ぶ場合もありますが、同じ意味になります。

 

ここでCheck!
さて、ここで覚えてほしい画家がいます!

上の「新潮 世界美術辞典」で挙げた画家で、オラツィオ・ジェンティレスキ(Orazio Gentileschi)です。カラヴァッジョの良き理解者で友人だった人物です。カラヴァジェスキの作品が紹介される時は、必ずと言ってもいいほどジェンティレスキの作品も展示されます。

 

カラヴァッジョは喧嘩や犯罪を犯したりと悪行も多かったけれど、影響を与えた画家が多かったのも事実!日本だと素行が悪いと叩かれる傾向にある様だけど、当時のイタリアやフランスは、作品は作品としてちゃんと評価する考えがあったのかな?と思ってしまいます。

さて、次ではカラヴァジェスキの画家たちと、彼らの作品を見ていきましょう!出来れば、カラヴァッジョの作品と見比べてみると面白いと思います。

 

 

カラヴァジェスキを代表する画家と作品

カラヴァッジョの追随者たち(Caravaggisti)

38歳という若さでこの世を去ったミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ。多くの画家に影響を与えた事からも、彼の作品の素晴らしさが何となく分かると思います。

ちなみに、カラヴァッジョが30歳頃に描いた作品「聖マタイの殉教」と「聖マタイの召命」は、当時の若い画家たちにとって目標になっていたそうです。プロの画家が見本とする画家”カラヴァッジョ”。別に年齢は関係ないのが分かると思います。

では、カラヴァジェスキたちの作品をちょっくら見ていこうと思います。

 

オラツィオ・ジェンティレスキ(Orazio Lomi Gentileschi)

…バロック期に活躍したイタリア出身の画家
1563年生まれ~1639年没

このジェンティレスキはカラヴァッジョの友人だったそうで、
初期の頃のカラヴァジェスキといわれています。

「Young Woman with a Violin」(1621年頃)Orazio Gentileschi

「Young Woman with a Violin」(1621年頃)Orazio Gentileschi

 

対象物を写実的に描きながら、
光と影を明確に表現するという作風は
まさにカラヴァッジョに通じる部分があると思います。

 

実はカラヴァッジョという画家は、
生涯弟子を持たなかったともいわれているのです。
もちろんカラヴァッジョの素行悪さや、
人殺しによって逃げ回っていたという理由もあると思いますが、
直接的にカラヴァッジョから指導を受けた人がいなかったと言います。
それでもカラヴァッジョの作品から影響を受けた画家は結構いたと言われています。

 

 

バルトロメオ・マンフレディ(Bartolomeo Manfredi)
…イタリアの画家(1582年~1622年没)

「Prometheus chained by Vulcan」(1623年)Dirck van Baburen

「Prometheus chained by Vulcan」(1623年)Dirck van Baburen

 

写実的で明暗のはっきりした作風。
カラヴァッジョの作風に通じる部分があると思います。

 

「Carita Romana」(1620年)Bartolomeo Manfredi

「Carita Romana」(1620年)Bartolomeo Manfredi

 

タイトルは「Carita Romana
日本語にすると「ローマの慈愛」となるでしょうか。
このテーマの作品は度々目にする事があると思います。

 

 

ディルク・ファン・バブーレン(Dirck van Baburen)

オランダの画家(1595年頃生まれ~1624年没)

「Carita Romana」Dirck van Baburen

「Carita Romana」Dirck van Baburen

 

このディルク・ファン・バブーレンも
同じく「ローマの慈愛」という作品を描いています。

この絵は餓死の刑に処されている父キモンを助けるために、
娘のペローが自らの母乳を父に与えている場面を描いています。

父親に対する娘の慈愛を象徴するテーマとして結構有名な話です。
ぜひこの機会に知っておくといいと思います。

他にはバロックの時期に活躍した画家
”ピーテル・パウル・ルーベンス”もこの絵を描いています。

 

 

 

オラツィオ・ボルジャンニ (Orazio Borgianni)
…イタリアの画家(1574年~1616年没)

「St Carlo Borromeo」(1610‐1616年)Orazio Borgianni

「St Carlo Borromeo」(1610‐1616年)Orazio Borgianni

 

考え…・思い…
確かにカラヴァッジョの悪評はあるにせよ、
その後多くの画家に影響を与えた功績は凄いですね。

プロが認めるプロの画家、
カラヴァッジョは一流の画家と言っても過言ではないですね。

 

・・・

「Adoration of the Shepherds」(1622年頃)Gerard van Honthorst

「Adoration of the Shepherds」(1622年頃)Gerard van Honthorst

 

他には
ヘンドリック・テル・ブリュッヘン(Hendrick ter Brugghen)
…オランダの画家(1588年~1629年没)

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(Georges de La Tour)
…フランスの画家(1593年~1652年没)
※明暗のコントラストが特に特徴的で”夜の画家”とも言われています。

 

らには…

光の画家”の異名を持つバロック期のオランダの画家
レンブラント・ファン・レイン”も追随者の一人と言われています。

 

考え…・思い…
探していくとかなり追随者がいるのです。
相当の影響力があったのが分かりますね。

かし残念かな
カラヴァッジョが亡くなってから、
その名声は徐々に失っていったと言います。

確かに多くの追随者によって、
カラヴァッジョの画風や名声はある程度残せていたのかもしれないけど、
如何せん追随者はカラヴァッジョの2番手的存在

カラヴァッジョを超える事は出来なかったのかもしれないですね。

 

 

【 カラヴァッジョ関連の記事 】
「カラヴァッジョ展」~日伊国交150年~
カラヴァッジョと作風について
『エマオの晩餐』…エマオの意味とそして~

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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コメント

    • そら
    • 2016年 3月 18日

    逆です。カラヴァッジョという都市は昔からあり、カラヴァッジョはミラノ生まれですが、
    カラヴァッジョ村で育ったので、
    本名はミケランジェロ・メリージだけれど、カラヴァッジョと名乗ったのです。
    カラヴァッジョが大好きなので修正させて頂きました。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%B8%E3%82%AA

    • goro
    • 2016年 3月 19日

    コメント有難うございます。
    そしてご指摘有難うございます。
    絵画について伝えているサイトとして、間違った事実を書いてしまった事は恥ずかしい事ですね。
    改めて修正しました。
    有難うございました。

    • そら
    • 2016年 3月 22日

    @goro
    美術展に行くと、心が癒されますよね。
    私はイタリアもカラヴァッジョも大好きなのでついつい出過ぎた真似をしてしまい、
    申し訳ありませんでした。
    goroさんの書いた記事色々読ませて頂きましたが、絵画をとても楽しんでみていらっしゃるな!
    と思い、楽しく拝見しました。来週私はボッティチェリ展を見に行くので、自分はどんな感想を持つかな?
    と楽しみにしています。

    • goro
    • 2016年 3月 23日

    記事を読んでいただいてありがとうございます。
    コメントもそうですが、指摘は本当にありがたいものです。
    私が個人的に製作しているサイトだけに、
    どうしても間違いに気づかない事もあると思うので…。

    数年前になりますが、
    最初は無理やり美術館に連れて行かされた記憶があります。
    でも不思議なもので、
    今ではここまで絵画が好きになるとは思ってもいませんでした。

    私なりにあれこれ好き勝手に記事を書いていますが、今後も見てくれたら幸いです。

    「ボッティチェリ展」楽しんで下さいね!!
    おそらく好きな作品が見つかると思います。

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