- 2016-3-24
- Artwork (芸術作品), Word (用語)
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美術館に行けば目にする事が多い”ダビデとゴリアテ”
彫刻ではミケランジェロの「ダビデ像」が有名ですが、
絵画でも多くの画家が描いているテーマでもあるのです。
そんなわけで
「ダビデとゴリアテ」を深く読み解くためにも、
描かれている背景や物語をするのが一番だと思います。
主要な絵画を挙げながら、
描かれた物語や意味を見てみたいと思います。
「ダビデとゴリアテ」 …旧約聖書の物語より
実はこの”ダビデとゴリアテ”は、
意外と言えば意外で旧約聖書に登場する物語の1つだったりします。
ここで旧約聖書の物語について話してみたいと思います。
紀元前10世紀頃…
イスラエル国の初代サウル王がペリシテ人との戦いの時。
その戦いに付き従った”ダビデ”という一人の青年がいました。対するペリシテ人には巨大な戦士”ゴリアテ”がいました。
巨人ゴリアテはイスラエル陣営に対し挑発しますが、
サウル率いるイスラエル軍は怖がり意気消沈の状態だったのです。
その時1人の青年が名乗りを上げたのです。
その名乗りを上げたのが羊使いの少年”ダビデ”だったのです。しかしダビデは剣を持っていませんでした。
そのためダビデは投石器を使いゴリアテに戦いを挑んだのです。
ダヴィデはゴリアテに向けて石を投げました。
※投石器は昔羊使いが使っていた道具。
羊を誘導したり、羊を襲う獣を追い払うための道具と言われています。するとその石がゴリアテの額に当たり倒れます。
すかさずダビデはゴリアテの剣を引き抜き、
ゴリアテの首を切り落としたのでした。
このペリシテ人との戦いでダビデは戦功を挙げ、一躍人気者となりました。
しかしその活躍に対して、
サウル王はダビデに嫉妬します。次第に嫉妬は、恨みへと変わり、
サウル王はダビデの命を狙うようになるのでした。そしてダビデはサウル王の追手から逃げ各地を転々とすることに…。
そんな時、
サウル王はまたペリシテ人と戦うことなります。しかしその戦でサウル王は
ペリシテ人により追い詰められ亡くなったのです。その話を聞いたダビデは嘆き悲しみます。
そしてダビデはサウル王の後を継ぎ、
イスラエル王国の2代目大王となったのです。
この話を聞いてから、
ミケランジェロの制作した『ダヴィデ像』を見て下さい。
左手に持っている道具があると思います。
… 実はこの道具が”投石器”なのです。
つまりこの『ダヴィデ像』は
ゴリアテに向けて投石器を使い
石を投げようとしている場面を表しているのです。
『ダビデ像』を何も知らないで見ると、
スゴイ作品だな~くらいしか思わないかもしれません。
でもその人物の歴史や背景が分かってくると、
より興味も深まると思うし感動も味わえると思います。
画家が描いた様々な「ダビデとゴリアテ」
”ダビデとゴリアテ”と言えば
どうしても戦いのシーンばかりが注目されがちです。
でも様々な絵画を見ていくと、
戦い以外にも様々な場面が描かれているのが分かります。
例えば
戦いの場面一つをとっても様々…

「ダヴィデとゴリアテ」(1605‐07年頃)オラツィオ・ジェンティレスキ
オラツィオ・ジェンティレスキ「ダヴィデとゴリアテ」(1605‐07年頃)
・186×136cm、カンヴァスに油彩、アイルランド国立美術館所蔵
これは投石器でゴリアテを倒し
ダビデが剣でとどめを刺そうとしている場面です。

「ダヴィデとゴリアテ」(1616年頃)ピーテル・パウル・ルーベンス
ピーテル・パウル・ルーベンス「ダヴィデとゴリアテ」(1616年頃)
・123×99cm、カンヴァスに油彩、ノートン・サイモン美術館所蔵
このルーベンスの描いたダビデは、
羊使いの青年というよりも
戦い慣れした戦士という感じですね。
画家によってダビデの描かれ方が違うのがオモシロイですね!
そして
ダヴィデがゴリアテ倒した後のシーンも…

「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(1680年)カルロ・ドルチ
カルロ・ドルチ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(1680年)
これはダヴィデがゴリアテの首を持っている場面を描いた作品。
ここまでくるとちょっと不気味さやグロさも出てきます。

「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(1621年)シモン・ヴーエ
シモン・ヴーエの「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(1621年)
下手をしたら”R指定”が付きそうなくらい、
絵から生々しさと不気味さが感じられますよね。
ダヴィデのこの力強そうで凛々しい姿と、
それとは対照的に生気の失った黒ずんだゴリアテの首。
この対比で生々しく描かれているのが印象的!
それからダヴィデがゴリアテを倒し、
凱旋する場面の作品も多数あります。

「ダヴィデの凱旋」(1620年)マッテオ・ロッセリ
マッテオ・ロッセリの「ダヴィデの凱旋」(1620年)
画家によってダビデの姿が違うのですが、
ある共通点があるのが分かると思います。
ダヴィデが鎧を着ていない事と青年だという事。
でも勝利した事でダヴィデがより男らしく
そして凛々しく描かれている様に感じますね。

「ダビデの勝利からの帰還」(1671年)ヤン・ステーン
ヤン・ステーン「ダビデの勝利からの帰還」(1671年)
・107×159cm、カンヴァスに油彩、コペンハーゲン国立美術館所蔵
ダヴィデとゴリアテは絵画ではよく描かれるテーマだけれど、
でも画家によって様々なシーンが描かれたりしています。
特に神話や宗教画は画家によって解釈が分かれる部分も多く、
好みが分かれる点だと思いますがこれも絵画の愉しみ方の1つ!!
”ダヴィデとゴリアテ”をストーリーとして知っていると、
より鑑賞も深く愉しめると思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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