- 2024-10-27
- Enjoy This (観てほしい絵画展)
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普段利用する駅にも、意外とアートは溢れているもの。
例えば上野駅では、”東洋のロダン”と称された朝倉文夫の「三相の像」を鑑賞できます。
俗にパブリックアートと呼ばれるものですが、これも正真正銘”美術館の芸術と同じ”です。
つまり展示されている場所が違うだけってわけですね。
【 話の流れ 】 |
朝倉文夫の「三相の像」が観れる場所
これは朝倉文夫の代表作の一つ「三相の像」です。
現在はJR上野駅構内に展示されています。
上野駅の中央改札から入り、16‐17番ホームの周辺に立っているのですぐに分かると思います。よく構内での待ち合わせ場所として使われる場合もある様ですね。
ただ作品自体が周りの背景と上手い具合に調和している感じなので、多くの人は素通りしているかもしれませんが…。
でも日本を代表する彫刻家の作品を上野駅で観れるって、これは考えようによってはお得!だと思いませんか?
それにしても、なぜ上野駅構内に「三蔵の像」があるのだろう!?
けっこう疑問に思う事だろうと思います。
実は彫刻家”朝倉文夫”を語る上で外せないエピソードでもあるので、この際に知ってほしいと思います。
まず答えを言ってしまうと、朝倉文夫の誕生と上野駅の開設年が同じだからです。
歴史をさかのぼると、1883年(明治16年)7月28日に木造の仮駅舎として開設。その2年後の1885年に、煉瓦造りの本駅舎が完成したという流れです。
実は”東洋のロダン”と称された朝倉文夫は、1883年(明治16年)3月1日に大分県で誕生しました。
大分県と東京で場所は違うにせよ、同じ誕生日だからという縁で「三相の像」が寄贈されたわけですね。
だから誕生年という共通点がなかったら、この場所に「三相の像」が設置される事はなかったかもしれない…。
そう思うと、何とも”運命”的なものを感じませんか!?
もし普段上野駅を利用する人なら、この彫刻の存在はぜひ知っておいてほしい!
毎日通勤(通学)のついでに芸術鑑賞が出来るって、これほどお得な事ってないから!です。
「三相の像」と黒田清輝の「智・感・情」の関係性
芸術に興味のある人なら、「三相の像」を目にした瞬間に”ある疑問”を持つ人もいるでしょう。
まるで、黒田清輝の「智・感・情」に似ている!?と。
実は私なりに調べてみたものの、実際に共通点があるかは分かりませんでした。
でも私の解釈では、少なからず影響は受けていると思っています。
ちなみに「三相の像」の”三相”ですが、これは”智・情・意”を表わしているそうです。
この点からも、黒田清輝の「智・感・情」との共通点を感じませんか??
朝倉文夫が「三相の像」を発表したのが1950年(昭和25年)。
黒田清輝の「智・感・情」は1899年に制作されているので、約50年後に「三相」が完成した感じになります。
しかもどちらも女性の裸婦ですから、影響を受けているのは間違いないだろうと思うのです。
・180×99.8cm、カンヴァスに油彩、黒田記念館所蔵
それに黒田清輝の生い立ちを見ると、東京美術学校(現、東京芸術大学)の教授に就いていた過去があります。直接的な指導は受けているかどうか分かりませんが、朝倉文夫は1903年(明治36年)に東京美術学校に入学。
生い立ちや作品の構成などから、意外なほど共通点があるのが分かります。
私なりの解釈になりますが、黒田清輝の影響を受けたのは間違いないだろうと思うわけです。
黒田清輝と言えば、日本の芸術界に裸体美を広めた立役者。
例えば代表作「朝妝(ちょうしょう)」は、まさにそれを象徴するかの作品です。日本で裸体画を展示するかどうかの論争を巻き起こした程ですから。
本来「三相の像」を女性の裸婦にする必要はなかったかもしれない。そこをあえて女性3人の裸婦で構成する点からも、黒田清輝の影響は間違いないでしょうね。
駅や公園に立っている彫刻も、素通りしようと思えば簡単に素通りできます。
でもちょっと立ち止まってじっくりと観るのもオモシロイ。意外な発見があるからです。
例えば今回紹介した「三相の像」の様に!!
上野駅を利用した際は、ぜひ今回の話を参考に立ち止まって魅入ってほしいと思います。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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