- 2022-8-7
- Artist (画家について), Artwork (芸術作品)
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印象派の絵画展で、よく見かける”ウジェーヌ・ブーダン(Eugene Boudin)”。カンヴァスの大部分が空で覆われた作品は、まさに”空の王者”と言われる画家にふさわしい逸品!おそらく空を描かせたら、ブーダンの右に出る者はいないでしょうね。
印象派の巨匠”クロード・モネ”の師匠的な存在で、モネに屋外で絵を描くすばらしさを教えた画家として知られ、印象派の画家たちとの親交も深かったウジェーヌ・ブーダン。でも、なぜだろう??印象派の画家と呼ばれる事が少ない様に思うのです。
・63×89cm、カンヴァスに油彩、国立西洋美術館所蔵
これは現在、国立西洋美術館に所蔵されているブーダンの代表作「トルーヴィルの浜」。個人的にこの絵はブーダンの中で一番好きで、そういえば初めてこの作品と出会った時は、見とれてしまいず~と魅入っていたほどでした。^^
今回はそんなモネの師匠であり、空の王者と称される画家”ブーダン”について、生い立ちや作品を見ていこうと思います。
ウジェーヌ・ブーダンの作品の特徴
・55.2×89.5cm、カンヴァスに油彩、デトロイト美術館所蔵
画面の大部分が空で覆われた風景画はまさに”空の王者”にふさわしい!
雲と何もない空の風景をここまで見事に描いた画家は、おそらくブーダン以外ではいないと思います。天候や時間帯によって変わりゆく空の様子に、広大な空の奥行。空に点在する絶妙な光の機微をここまで繊細に表現できるのは、ブーダンのなせる業でしょうね!
浜辺で寝そべって空を眺めている様な…。ブーダンの風景画はまさにそんな感じです。ず~と見ていても飽きないし、ず~と眺めていたくなる魅力!これこそブーダン最大の見所だと思っています。
ここまで画面いっぱいに空を描いている時点で、よっぽどブーダンは”空”を描きたかったのだろうか!?もちろん少なからず自負もあったとは思いますが、ここまで空にこだわった画家もそうはいないと思います。ぜひブーダンの作品を見る際は、”外で眺める感じ”で鑑賞するのもイイと思います。
ウジェーヌ・ブーダンの生い立ちと作品
印象派の絵画展でよく目にするけれど、でもなぜか印象派の画家と言われる事が少ないウジェーヌ・ブーダン。
では、私的にではどんな画家と問われたら…
間違いなくブーダンは”空の風景画家”と答えると思います。
ウジェーヌ・ブーダン(Eugene Boudin)1824ー1898
印象派に先駆ける風景画家。1844年に当時住んでいたノルマンディ地方の港町ル・アーヴルでミレーやトロワイヨンに刺激され、ほとんど独学で画家を志す。パリではアカデミズムを嫌い、ルーヴル美術館で巨匠の絵を研究。ル・アーヴルに戻ってノルマンディの海岸を転々としながら、明るい外光表現を大胆に採り入れた海風景を数多く制作し、ほとんどサロンで活躍、コローやボードレールに称賛される。天候につれて大気や光の動きを見事にとらえたその風景画は、バルビゾン派から印象主義の掛け橋となった。
※「西洋絵画作品名辞典」より
(ブーダンの生い立ち)
1824年7月12日…
フランス、ノルマンディー地方の港町オンフルールで生まれます。
・31.9×41.1cm、カンヴァスに油彩、サザンプトン市立美術館所蔵
ブーダンは海と空の風景画を多く描いている事でも知られています。もちろん動物や街並みを描いた風景画もありますが、大半の作品には海や空が描かれている事がほとんど!おそらく子供の頃に港町に住んでいたのも大きく影響しているとは思いますが、ブーダンにとって好きな風景だったのは間違いないでしょうね。
1835年…
ル・アーヴルに引っ越します。
父親はル・アーヴルで文具店を開業し成功。そして、その後ブーダン自身も画材店を開きます。この画材店を通してバルビゾン派のトロワイヨンやミレーとの交流が生まれます。この画家たちとの出会いと交流が、ブーダンにとって大きな転機となります。
1846年頃(ブーダン22歳)…
ブーダンは本格的に絵画の道へ進みます。
1851年…
奨学金を得た事で絵画勉強のためパリへ向かいます。ルーヴル美術館に出向いては過去の作品の模写していたエピソードは有名な話です。
1857年(ブーダン33歳の時)…
モネと出会い、戸外で絵画制作する事を教えます。
※この出会いによってモネと仲良くなり、後に「第1回印象派展」(1874年)に参加するに至ります。
・34.8×58 m、カンヴァスに油彩、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵
トルヴィル=シュル=メール(Trouville-sur-Mer)
…フランスのノルマンディー地域の港町。
・38×62.8cm、カンヴァスに油彩、プリンストン大学美術館所蔵
それにしてもブーダンの作品は、空の風景が本当に多い!でも同じ空は全くないのも凄いことです。一枚一枚違った色味や奥行きがあって、雲の形や色も、どれもが同じものがない。その日、その時間、その日の天候や光の移り変わりをしっかりと描き切っている様に思うのです。
ここで風景画家”ブーダン”のポイント!
この後ブーダンは画家として成功していくわけですが、ウジェーヌ・ブーダンの経緯で注目したいポイントは、実は本格的な絵の勉強をしていない点。確かに画家たちから指導を受けた事はあった様ですが、生い立ちを見る限りほぼ独学で絵を学んでいったようです。とは言ってもここで重要なポイントが!!ブーダンはルーヴル美術館で作品を模写していたエピソードはよく知られています。よく上達の近道は真似る事だと言われているけれど、ブーダンも作品の模写によって、しっかりと画家としての基礎を造っていったわけですね!
さて、この後ブーダンは画家として成功を収めていくことになります。
・55.5×89.5cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
・32×46cm、カンヴァスに油彩、フィッツウィリアム美術館所蔵(ケンブリッジ)
ブーダンはパリのサロンに参加し続け、1889年(65歳の頃)の展覧会で金賞を獲得。1892年(68歳の頃)にはレジオン・ドヌール勲章を授与されています。
・46×65cm、カンヴァスに油彩、スコットランド国立美術館所蔵
ブーダンは印象派の画家たちとの交流があっても、印象派に傾倒する事なく自分の描きたいものを貫いていった感があります。
現在”空の王者”とまで言われるほどになりましたが、それはブーダンが自身の画家の道を貫いたから。印象派の画家と言われる事が少ない理由は、おそらくこういった理由なんだろうと思います。独自の画家人生を歩んだ結果、後の印象派誕生の架け橋にもなったブーダン。印象派の誕生の立役者でもあると思っています。
さて、印象派の絵画展でよく見かける画家”ウジェーヌ・ブーダン”。ぜひ見かけた際は、眺める感じで鑑賞してはどうでしょう!?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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