まさに幻想静物画!? オディロン・ルドンの「グラン・ブーケ」を解説!

三菱一号館美術館

 

三菱一号館美術館で、一際異彩を放っている作品があります。オディロン・ルドンの「グラン・ブーケ(Grand Bouquet)」です。

 

大画面とパステル調の淡い美しさを醸し出した作品は、何度観てもイイものです。多少美術を知っている人なら、あのルドンが描いた作品なの??と思うかもしれないですね。幻想的で神秘的な画風は、おそらく他を見渡してもなかなかないでしょうから。

 

今回はルドンの幻想静物画グラン・ブーケ」を、私の視点で解説していこうと思います。

 

 

「グラン・ブーケ」は、まさに幻想静物画!?

何が見所!?

初めて三菱一号館美術館で、「グラン・ブーケ」を見た時の印象は今でも覚えています。

幻想的で神秘的で、でも何だか不気味で。しかも展示されている場所がムードたっぷりだったので、不思議な魅力にやられてしまいましたね。作品自体も大画面だったので迫力もさることながら、やっぱり独特な雰囲気はピカ一でした。

 

「グラン・ブーケ」(1901年)オディロン・ルドン

「グラン・ブーケ」(1901年)オディロン・ルドン

・248.3×162.9cm、カンヴァスにパステル、三菱一号館美術館所蔵

本当に何度見てもイイですね。^^ この雰囲気はルドンでしか描けない世界観だと思います。花を描いた作品なので、もちろん静物画の部類になるんでしょうけど、でも静物画とは思えない作風です。私的な言葉で言わせれば幻想静物画といった感じでしょうか。

個人的にオディロン・ルドンの”花”シリーズは好きだったのですが、この「グラン・ブーケ」は中でも群を抜いて好きな作品です。独特な鮮やかさと独特な雰囲気!パステル調だから表現できる味わいなんでしょうけど、もちろんルドンの画家としての生い立ちもあると思っています。

 

ルドン(Odilon Redon)1840-1916

~ 初めロマン主義的な油彩画などを描いていたが、やがて主に木炭画とリトグラフによる「黒」の世界に没頭、眼球、首、怪物等をモティーフにした幻想的、神秘的な作品を多数制作。印象派と同時代にあってルドンの作品を最初に評価したのは、、ユイスマンス、マラルメ、ヴェラーレンといった象徴主義の文学者・批評家であった。1890年頃からパステル、油彩等による色彩画を手がけはじめ、晩年には「黒」をほぼ完全に放棄、花々、女性、神話画などを豊麗な色彩で描き、穏やかで晴朗な作風を示すようになった。

出典元:「西洋絵画作品名辞典」の一部抜粋

私の持っている「西洋絵画作品名辞典」の一部を参考に挙げましたが、最初は黒い世界観の不気味な作品を多く描いていました。この頃の作品を観れば分かりますが、どれも本当に不気味で奇妙で、正直言ってサイコパス??と思う様な作品ばかり。

 

「泣く蜘蛛」(1881年)オディロン・ルドン

「泣く蜘蛛」(1881年)オディロン・ルドン

 

ルドンはこういった不気味な作品を数多く描いていました。確かにウケは良かったかもしれませんが、でもその後に描いた「花」シリーズとは本当に真逆な作風ですね。この先入観で作品「グラン・ブーケ」を観ると、本当にギャップが激しいわけです。本当に”あのルドン”が描いた作品なの??と。

 

「グラン・ブーケ」(1901年)オディロン・ルドン

「グラン・ブーケ」(1901年)オディロン・ルドン

・248.3×162.9cm、カンヴァスにパステル、三菱一号館美術館所蔵

だから、余計に神秘的で幻想的に見えてしまうんでしょうね。でもじっくりと観ていくと、幻想的ではあるんだけど…、ちょっと不気味にも見えてしまう部分もある。これもルドンの初期の作風が、先入観としてあるからでしょうか。

 

ここでCheck!
私が不気味とも思える理由をお話しします。

花びら1枚1枚に着目してほしい。よ~く見ていくと、まるで人の目の様にも見えませんか?元々奇怪で不気味な作品を描いてきた画家なので、幻想的な花びらの描写も不気味に見えてしまう。ルドン本人は意図して描いたつもりではないんでしょうけど、人の先入観って怖いですよね。

 

 

 

「グラン・ブーケ」が三菱一号館にやって来た背景

ZOOM

作品自体が非常に神秘的で不思議な雰囲気を醸し出していますが、この「グラン・ブーケ」が日本にやって来た背景も実に不思議です。

元々1897年にドムシー男爵に依頼されて制作した作品でした。ブルゴーニュのワイン畑にあるドムシー城の食堂に飾るため依頼された16点の内の1枚だったのです。

ちなみにドムシー男爵(ロベール・ド・ドムシー)は、ルドンの作品に惚れ込んだ熱狂的な蒐集家と知られています。

 

 

三菱一号館美術館

しかし、ルドンの蒐集家だったドムシー男爵は亡くなってしまいます。その後は子孫に引き継がれる形で、城に飾らる事にはなったのですが…。でも1988年に起こった相続問題で、食堂を彩っていた作品がオルセー美術館へと移ってしまったのです。

でも不思議な事に、「ブラン・ブーケ」だけがそのままお城に残る事に。普通なら16枚すべてがオルセーに行ってもおかしくないのに、なぜ「グラン・ブーケ」だけが1枚ポツンとお城に残ったのだろう??考えると、本当に不思議ですよね。

そして時代は流れ、2010年に三菱一号館美術館の高橋館長の目に留まり同美術館の所蔵作品となったと言います。

この経緯を見ると、本当に不思議な”縁”で日本の三菱一号館美術館にやって来たわけです。

 

三菱一号館美術館 三菱一号館美術館
美術館の手前に広がる美しい庭園と、洋風の雰囲気を持った煉瓦調の建物。ワイン畑に建っていたと言われるドムシー城にも通じるのかもしれませんね。(実際にドムシー城を見た事はありませんが。)そんな三菱一号館美術館で「グラン・ブーケ」が見れるわけだから、本当にイイ場所にあると思いませんか?

 

奇跡的な縁でやって来た「グラン・ブーケ」は、現在三菱一号館美術館に所蔵されています。ぜひ、ルドン独特な静物画”幻想静物画”を堪能してほしいと思います。

 

 

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメント

    • KAZUMI
    • 2021年 11月 04日

    私もこのグランブーケに魅了された1人です。初めて観た時の衝撃❣️「絵」を観る観点は、ただ「好き」かどうかの一点のみ!の私です。なので「どこに」「どう」衝撃を受けたかなんて説明できませんが、とにかく衝撃でした。ルドンの他に作品を観たくてオルセー美術館まで行ってしまったほどの衝撃でした。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Category

2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
ページ上部へ戻る