尾形光琳の「燕子花図屏風」の凄さ!を解説します。

「燕子花図屏風」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

 

尾形光琳燕子花図屏風は、知れば知るほど奥深い作品なのが分かってきます。

 

現在は根津美術館に所蔵されていて、限られた時期にしか公開されません。国宝のため公開日数に限りがあるのは、仕方がないと言えば仕方がないわけですけど。それだけに前もって日程を確認しておかないと、なかなか出会えない作品だったりします。

とはいえ、やっと見れたとしても画風は非常にシンプルなだけに、一見しただけだとその凄さは分からないと思います。でも何度も観るにしたがって、なんて凄い作品なのだろう!!と分かる瞬間がやってきます。つまり「燕子花図」は繰り返し何度も観てこそ、その良さが分かってくるわけです。もちろん、予備知識はあったに越したことはないわけですが。

 

今回は琳派を象徴する作品「燕子花図屏風」を味わうために、私なりに詳しく解説していこうと思います。

 

 

尾形光琳の「燕子花図」屏風の凄さ!を解説

何が見所!?

尾形光琳は琳派を代表する画家です。琳派は装飾的でデザイン性に富んだ作風が特徴で、特に江戸時代頃が最盛期だったと言われています。現代のデザインにも通じると言われていて、日本や西洋問わず多くの画家に影響を与えた流派。そういう意味でも、日本人ならぜひ知ってほしいですね。

今回解説する「燕子花図屏風」は、そんな琳派の画家”尾形光琳”を象徴する作品というわけですね。

 

「燕子花図屏風(右隻)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

「燕子花図屏風(右隻)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

(各)縦151.2×横358.8cm、紙本金地着色 6曲1双、根津美術館所蔵

今だから言える事ですが、私が初めて「燕子花図」を観た時の印象は、「僕でも描けそう!」というものでした。(尾形光琳に対して、本当に失礼な感想ですよね…。)それから回数を重ねるたびに、「燕子花図」の凄さが分かってきた感じです。もちろん、見る目が肥えてきたのもあるだろうけど、同時に知識の蓄積も大きな要因だったと思います。

これまでの私の経験談と知識を紹介しながら、「燕子花図屏風」の鑑賞ポイントについて話していこうと思います。

 

1、絵具や材料が高価!

 

1つ目に押さえてほしいポイントは、使用されている絵具や材料です。

「燕子花図屏風」は構図もそうだけれど、使用されている色も非常にシンプルです。花の部分の群青と葉っぱの緑青色。そして背景の金(金箔)の計3色です。色味だけで考えれば、非常にシンプルですよね。でも一つ一つの絵の具や材料のこだわりは、尋常ではないのです。

実際に本物を観れば分かりますが、花の群青と葉っぱの緑青の発色が非常に良いです。背景の金に負けないくらい発色が良いのです。鋭い人なら、何か特別な絵具を使っているのでは??と思うかもしれませんね。

まず背景の金から話をするなら、当然の如く”金箔”が使用されています。これについては特段説明は要らないかもしれませんね。ただ使われている金箔の枚数と当時に時代背景は押さえてほしいポイント!

 

背景で使用している金(金箔)の枚数と価値!

金屏風

使用されている金箔の枚数は、単純計算ですが左右合わせて1,000~1,200枚はあると思います。1つの扇で少なくとも15×6=90枚はあって、それが全部で12扇ですから。枚数だけで考えても、非常に贅沢なのが分かると思います。

そして金箔の価値についてですが、これは金の純度や当時の時代背景もあるので、はっきりとは分かりません。でも参考として現在の価値で考えてみようと思います。現在Amazonで「工芸用の金箔(24K)10枚」で、約5,000円位するようです。(2023年4月時点)。仮に1,000枚で考えると、金箔だけで50万円は掛かる計算になりますね。

ちなみに「燕子花図屏風」が制作された当時は、金箔の生産や販売が厳しく統制されていた時代だったそうです。そう考えると、今よりもかなり金箔が高価だった可能性がありますね。

 

花の群青と葉っぱの緑青(ろくしょう)

マラカイト・アズライト

背景の金に負けない燕子花の発色の良さ!

一体どんな絵具が使われているのか、気になりますよね。実は花の群青も葉っぱの緑青も、どちらも鉱物を砕いて使用しているそうです。

葉っぱの緑青孔雀石【マラカイト(Malachite)】銅の二次鉱物
…孔雀石の名の由来は、模様が孔雀の羽に似ている事から。古代エジプトでは、クレオパトラがアイメイクに使用していた事でも知られています。

花の群青色藍銅鉱(らんどうこう)【アズライト(Azurite)】銅の二次鉱物
…孔雀石と化学式は似ているが、産出は孔雀石に比べてはるかに少ないため貴重とされています。

 

「燕子花図屏風、右隻(detail)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

「燕子花図屏風、右隻(detail)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

 

燕子花を構成している花(群青色)と葉っぱ(緑青色)は、共に宝石として使われるような鉱物を使用している!だから金箔にも負けないくらい発色が良い!わけですね。金も群青も緑青もすべて宝飾が使用されていると考えたら、いかに贅沢な屏風なのかが分かると思います。色味は3色とシンプルだけれど、実は物凄く贅沢でこだわりが詰まっているわけですね。

当時材料だけでいくら掛かったかは分かりませんが、相当な値段だったに違いない!だとすると、それなりに財力のある注文主の依頼で制作したのだろうと予想できますね。

 

2、同じ絵柄が使用されている斬新さ!

「燕子花図屏風(右隻)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

「燕子花図屏風(右隻)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

 

同じ絵柄を繰り返す…、もしくは”絵柄のパターン化”と言ったほうが分かりやすいでしょうか。この技法は「燕子花図屏風」を語る上では外せないポイントです。西洋絵画でもそうですが、繰り返し同じ絵柄を使うケースってあまりないと思います。だから、なかなか気が付かないわけですね。

まさに家が呉服商を営んでいた尾形光琳ならではの斬新なアイデア!!と言ったところでしょうか。

 

3、本来の機能性を考慮したデザイン!

和室の中の屏風

先ほどの絵柄の話の続きにもなります。

本来の機能性を考慮したデザイン!”と言われても、ちょっと分かりにくいかもしれませんね。本来”屏風”は部屋の仕切りなどに使用された、今で言う”調度品(インテリア)”の様なモノ。芸術的な屏風ばかりが注目されてしまうだけに、屏風は芸術というイメージがあると思います。でも屏風は本来インテリアだと考えると、「燕子花図」の様に同じ絵柄を使う技法は、まさに理にかなっていると思えてならないのです。

部屋を彩るインテリアとして考えるなら、デザイン性の高さは重要!!毎日見ていても見飽きる事がなく、インテリアとして部屋も装飾してくれる。しかも屏風自体が芸術性に富んでいる!!琳派とインテリアの相性が抜群にイイのが分かると思います。

 

「燕子花図屏風(左隻)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

「燕子花図屏風(左隻)」(江戸時代、18世紀)尾形光琳筆

(各)縦151.2×横358.8cm、紙本金地着色 6曲1双、根津美術館所蔵

琳派が単なる芸術じゃないのが分かってもらえたかと思います。実際に「燕子花図屏風」を見続ければ分かりますが、何度観ても見飽きる事がありません。現代のデザインにも通じる理由ですね。今から300~400年前の江戸時代に、それまでの芸術性にプラスして、現代にも通じるデザイン的発想を融合させたと考えると、琳派がいかに凄いかが分かってもらえるかと思います。まさに時代を先取りした画風だったわけですね。

私的な言葉で言えば、尾形光琳は画家でありながら、インテリアデザイナーでもあった!となるわけです。

 

「燕子花図屏風」はシンプルな作風ゆえ、なかなかその凄さには気が付かないかもしれない。でも、分かってくると非常に凄い作品なのが見えてくるわけです。今回の話を参考に、ぜひ本物の「燕子花図屏風」を見てほしいと思います。でも1回や2回では、その凄さはなかなか理解できないかもしれない!回数を重ねる度に、深みと凄さが分かってくると思っています。

まさに「燕子花図屏風」は回数を重ねるたびに深みが増してくる名画というわけですね!

 

燕子花図屏風 光琳の生きた時代1658~1716

・会期:2023年4月15日(土)~5月14日(日)
・場所:根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)

まだ見た事のない人は、とりあえず試しに観てほしいですね!

 

※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。

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