- 2020-10-4
- Artist (画家について), Artwork (芸術作品)
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ギュスターヴ・クールベの作品「世界の起源」は、タイトルだけ見ると神話画なの?と思いがちです。でも実際はかなり刺激的というか、卑猥的だったりします。もちろん芸術的とも取れるわけですが…。
現在でも賛否が分かれそうな作風なだけに、クールベの生きていた19世紀は、一体どれほどスキャンダルを巻きおこしたのか!?多少なり西洋美術史を知っている人なら、当時のドタバタぶりは想像できるかもしれませんね。
現在はフランスのオルセー美術館に所蔵されている「世界の起源」。今回はそんなクールベの衝撃作について、私なりに掘り下げて見ていこうと思います。
「世界の起源」は見れば観るほど、何となく理解できる!
「世界の起源」というタイトルだけを見れば、至ってシリアス的な作品に思いがち。神話画?それとも宗教画?と想像をめぐらしてしまいそうです。でも実際は全く違っていて、かなり衝撃的です。
すでにどんな画か知っている人からすれば、何を今さら!と思うかもしれませんが、改めてクールベの「世界の起源」を神話的なイメージを持って見てほしい。すると、いかに衝撃的なのかが感じられると思います。
さて、あなたはこの絵を見て、どう思いますか??
・46×55cm、カンヴァスに油彩、オルセー美術館所蔵
正直言って”ウブ”な私的には、ちょっと刺激的過ぎる作品ですね!^^
女性の顔は一切描かれていなく、女性の性器だけがドアップで目の前にある感じです。本当に大胆というか、豪快というか…、しかもそれが写実的に描かれているから、なおさらですね!当時相当スキャンダルを呼んだのも納得です。
実は、私も最初この絵を見た時は、ちょっとビックリしたものでした。でも不思議な事に、見れば観るほど「世界の起源」の意味が何となく理解できなくもない。確かに本質を突いている!と思ってしまうのです。世界の起源…、つまり人類誕生の起源は男女のセックスだと思うので、そう考えるとタイトルを”世界の起源”とした理由も理解できませんか?
さて、ギュスターヴ・クールベ(1819‐1877)は”写実主義(レアリスム)”を代表する画家です。ちなみに、写実主義とは”写真の様な~”という意味ではなく、対象物を美化する事なくありのまま描こう!とする事。”生きた芸術を生み出したい!”の言葉通り、クールベはリアルで生々しい感じを描こうとしていたのです。
でもクールベの生きていた19世紀は、女性のヌードを美化して描く傾向がありました。そんな時代からすれば、クールベの「世界の起源」は、あまりにも挑戦的で型破りです。とはいえ、クールベの性格的は野心家で型破りだったと言われているので、ある意味クールベらしいと言えば”らしい”作品だと思いますが…。
ともかく、第一印象ではタイトルとのギャップにビックリするかもしれませんが、でも見れば観るほどクールベの「世界の起源」は深いな~と感じてしまうのです。
あなたは、どう思いますか??
「世界の起源」を見れば観るほど、モデルは誰かが気になる!
普通人物画や裸体画では、顔と身体の両方が描かれている事が多いと思います。実際クールベは裸体画を複数描いていますが、全体像で描いた作品が多いです。「世界の起源」の様に、局部だけという画風はちょっと珍しい。当然ながら、こんな疑問が湧いてくるのも自然な流れだと思います。
モデルは誰なのだろう?…と。
・55.9×66.0cm、カンヴァスに油彩、メトロポリタン美術館所蔵
当初、「世界の起源」に描かれたモデルは、クールベの愛人”ジョアンナ・ヒファーナン(Joanna Hiffernan)”だと言われていました。
ジョアンナ・ヒファーナンはアイルランド出身で、別名”ジョー”とも呼ばれていた女性です。赤毛の髪が特徴的で、アメリカ人画家ホイッスラー(ジェームズ・マクニール・ホイッスラー)の恋人でした。
一方では、絵のモデルについてこんな解釈も!!
確かに当初はクールベの愛人ジョアンナ・ヒファーナンが有力だとされていました。でも一方ではこんな解釈もあったのです。「世界の起源」に描かれている女性の陰毛は、赤毛というよりは黒に近い色です。ジョアンナ・ヒファーナンの赤毛では、陰毛の色とが一致しないというのです。つまり絵のモデルは、他の女性だったのではないか?…と。
・・・
それから月日は流れ、作家”アレクサンドル・デュマ”と”ジョルジュ・サンド”との手紙のやり取りから、ついにモデルが明らかになります。
”コンスタンス・ケニオー(Constance Queniaux)”
元バレリーナで高級娼婦だった女性”ケニオー”(1832年~1908年)がモデルと判明したのです。
現在では、ほぼ99%ケニオーがモデルだとされているそうです。もしお金のやり取りでモデルを務めていたなら、堂々と局部だけのモデルになるのも理解できます。ちなみに「世界の起源」のモデルが明らかになった時は、フランスのマスコミはこぞって報道したそうです。つくづく芸術の国フランスはアートへの関心が高いな~と感じる瞬間ですね。
クールベの「世界の起源」についての余談…
さて、この「世界の起源」がなぜ描かれたのか?
クールベは性格的に野心家だったとも言われていて、この「世界の起源」は当時のアカデミーに対する挑発として描いた作品だと思うでしょう。でも、実はトルコ人外交官カリル・ベイ(Khalil Bey)の注文で、化粧室に飾るために描いた作品だったのです。ちなみに、この時「眠り」という作品も同時に注文していたと言います。
・135.0×200.0cm、カンヴァスに油彩、プティ・パレ美術館所蔵
レズビアンを主題にした作品で、現在はフランスのプティ・パレ美術館に所蔵されています。注文者のカリル・ベイは、2年後にギャンブルで破産し「眠り」を含め約100点の作品を売却してしまったのです。
一見すると猥褻的にも見える「世界の起源」ですが、じっくり観ると本質を捉えている様にも見える。人によってどう解釈するか?に委ねられるわけですが、あなたはクールベの「世界の起源」をどう見ますか?
”卑猥的”だと思いますか?それとも”芸術”だと思いますか?
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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