- 2020-4-26
- Artwork (芸術作品), Word (用語)
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現代にも通じるデザインと装飾性!
これこそ”琳派(りんぱ)”最大の特徴で、凄さ!になると思います。400~500年前に描かれた作品でも、全く古臭さを感じさせない理由は、現代に通じるデザインが要因でしょう。
代表作に尾形光琳の「燕子花図屏風」や俵屋宗達の「風神雷神図」がありますが、どちらも琳派の特徴が存分に表れています。特に「燕子花図屏風」は、一見するとその凄さは全く理解できないと思います。”何が凄いの??”と私も思ったほどでした。でも琳派の特徴が分かってくると、時代の最先端を走っていた作品なのが分かってくるのです。
西洋絵画や現代に多大な影響を与えた流派”琳派”。最近でいえば小林古径(こばやしこけい)や速水御舟にも強い影響を与えたと言われています。そんな琳派の代表作を挙げながら、作品の特徴や見所を解説していこうと思います。
”琳派”って何だろう? 意味は??
まずは琳派の意味から話していこうと思います。そもそも琳派が何なのか知らない事には、何も始まらないからです。
参考として「新潮世界美術辞典」で調べてみたのですが、この様に説明されていました。
琳派(りんぱ)…
江戸時代の装飾芸術の流派。桃山ー江戸初期の宗達を祖とし尾形光琳が大成し、酒井抱一が最後を飾った。宗達光琳派、光悦派とも呼ばれる。かれらが追求した純日本的な装飾美は、絵画をはじめ、蒔絵、染物などの工芸意匠にとり入れられて、影響の範囲は広い。
宮廷を中心をした王朝文化復興の気運の中で、新興町衆出身の宗達はやまと絵の伝統を基盤に新しい絵画様式を確立し、晩年の障屏画は、桃山金碧(きんぺき)画の力強い生命力を保ちつつ、これをいっそう純化して装飾芸術の神髄に迫るものであった。また宗達と合作を行うなど近しい関係にあった本阿弥光悦は、書、蒔絵、陶器などの意匠、造形感覚にこの派の絵画に通ずるものがあり、宗達に対してだけでなくのちの作家にも少なからぬ影響を与えている。~
※新潮世界美術辞典より一部抜粋
”琳派”とは絵画や書、蒔絵など江戸時代の装飾芸術の流派を言います。この中で特にポイントは”装飾芸術”という言葉。そして装飾性が琳派の大きな特徴でもあるわけです。
分かりやすい例として、琳派を代表する俵屋宗達の「風神雷神図」を挙げたいと思います。
・各154.5×169.8cm、紙本金地着色 2曲1双、建仁寺蔵(京都国立博物館寄託)
贅沢に使用された金箔が、実に装飾的で目を惹きませんか?それに風神と雷神の色遣いも金箔に負けない存在感があります。この色彩感も装飾性に一役買っているのが分かると思います。
元々”屏風”は部屋の仕切りや部屋を彩るための装飾具という意味合いが強い道具です。そういった意味でも琳派のデザイン性や装飾性は屏風にはピッタリの流派だったのでは?と思うのです。
さて、「風神雷神図」を語る上で、もう一つ忘れてはいけないポイントがあります。
・各164.5×181.8cm、紙本金地着色 2曲1双、東京国立博物館所蔵
実は多くの琳派の画家が”風神雷神”というテーマの作品を制作しているのもポイント!本来”琳派”という流派は俵屋宗達、本阿弥光悦を祖とし、その後尾形光琳、尾形乾山によって大成し、酒井抱一や鈴木其一らによって発展していきました。この「風神雷神図屏風」も俵屋宗達の後、尾形光琳や酒井抱一によって模写されています。
・各170.7×170.2cm、紙本金地着色 2曲1双、出光美術館所蔵
もちろん構図はほぼ同じですが、画家が違えば画風も違ってくるもの。作品を見比べてみると、違いがあちこちにあるのが分かると思います。
ちなみにこの酒井抱一(1761‐1829)は尾形光琳(1658‐1716)に私淑した画家として有名でした。ここで”私淑(ししゅく)”という聞きなれない言葉が出てきますが、琳派においては特徴的な継承方法だったのです。(この後の琳派の特徴で説明します。)
酒井抱一は光琳の死後約50年後の生まれた画家。直接指導されていないわけですが、作品からは光琳の特徴が受け継がれているのが分かると思います。
琳派の特徴は何だろう??
日本画には狩野派や土佐派などいろんな流派があって、特徴もそれぞれ一様に違います。もちろん、琳派も他の流派とは一味も二味も違っています。使われている技法や構図、そして継承の仕方にもその特徴があるのです。
1,琳派の特徴 …”装飾的でシンプル”な作風
・151.2×358.8cm、紙本金地着色 6曲1双、根津美術館所蔵
琳派の特徴が一番表れているのが、尾形光琳の「燕子花図屏風」になると思います。平面的で一切の無駄を省いたシンプルな構図。金地に緑と青の3色という必要最低限の色で構成されているのも特徴的です。ここまで単純明快だと、ある意味潔さ(いさぎよさ)も感じられますね。まさに”The 燕子花”と言った感じでしょうか。
・151.2×358.8cm、紙本金地着色 6曲1双、根津美術館所蔵
さて、「燕子花図屏風」を観る上で、もう1つ忘れてはならないポイントがあります。実は同じようなパターンの模様を繰り返し使って、燕子花が描かれている点です。まさに装飾的デザインの様なもの。呉服商の家に生まれた尾形光琳ならではの技法でしょうね。
琳派の特徴その2…”私淑(ししゅく)”による継承
・各156.0×172.2cm、紙本金地着色 2曲1双、MOA美術館所蔵
狩野派や土佐派など多くの流派は、基本的に師から弟子へ師弟関係によって継承されるのがほとんど。でもこの”琳派”に関して言うと、”私淑”という独特な継承の仕方だったと言います。
”私淑(ししゅく)”って何?
直接師から教えを受けるのでなく、密かにその人を師と仰いで模範し継承していく事!例えば酒井抱一(1761‐1829)は尾形光琳(1658‐1716)に私淑した画家として有名でした。酒井抱一は光琳の死後約50年後の生まれた画家で、直接指導されていません。つまり光琳を師と仰ぎ、模範したというわけです。こういった継承方法は、他の流派を見渡してもかなり稀だったそうです。
琳派の特徴その3…”たらしこみ”の技法
・各154.5×169.8cm、紙本金地着色 2曲1双、建仁寺蔵(京都国立博物館寄託)
俵屋宗達はこの「風神雷神」の雲を描くにあたり、”たらしこみ”という技法を使っているのが特徴です。
”たらしこみ”とは色が渇いていないうちに他の色をたらしてなじませていく技法の事。つまり滲ませる事で独特な色合いや深みを表現しているのです。もちろん、琳派の多くの画家もこの”たらしこみ”を私淑という形で継承しています。
琳派の作品をいくつか挙げてみました!
琳派はシンプルで、デザインチックな作風が多いだけに、一見するとその凄さは分からないもの。ただ特徴が少しでも分かると、琳派がいかに奥深いかが分かってくるのです。
ここまで見てくれたあなたなら、これから挙げる琳派の作品たちの良さが少しは分かるのでは?と思うのです。
琳派は私淑によって継承されているのが特徴ですが、中には例外もあります。鈴木其一は酒井抱一の弟子として付き従った、師弟関係にあった画家。33歳の頃に酒井抱一が亡くなったのをきっかけに、鈴木其一は独立し後継者として躍進していきます。琳派の特徴ともいえる”シンプルで装飾的”な事はもちろん。ダイナミックでより明快な色彩表現へと、独自の作風へと昇華していったのです。
・165.8×363.2cm、紙本金地着色 6曲1双、根津美術館所蔵
紅色に染まった桜の葉が描かれた秋の景色。
・165.8×363.2cm、紙本金地着色 6曲1双、根津美術館所蔵
美しい山百合が咲いている夏の景色を描いた右隻。左右で違った季節を描いている風情ある作品です。それぞれ金地を背景に、緑と青色が目を惹くのが印象的!この鈴木其一の「夏秋渓流図」は、2020年に重要文化財に指定された作品で、現在は根津美術館に所蔵されています。
根津美術館は尾形光琳の「燕子花図」も所蔵していて、毎年カキツバタが咲くころになると、企画展で展示されます。
参考に2019年の様子をどうぞ!
⇒根津美術館で『燕子花』と「カキツバタ」を観てきました。
※ここで扱っているイラストや作品画像はpublic domainなど掲載可能な素材を使用しています。
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