西洋絵画で目にする”テンペラ(tempera)”という言葉。
特にルネサンス頃の作品で
この”テンペラ”という言葉を絵にする事が多いと思います。
現在では油絵具が主流になっていますが、
一昔はこのテンペラによって絵画が制作されていました。
(今でも画家によってはたまにテンペラを使っていたりします。)
例えばこの名画も
テンペラによって描かれたものでした。
サンドロ・ボッティチェッリ「ヴィーナスの誕生」(1485年頃)
”テンペラ”とは何だろう!?
【 テンペラ(temperare) 】
… ラテン語で”混ぜ合わせる”という意味。
顔料に卵や膠(にかわ)、カゼインなどを混ぜた絵具を用いる技法の事で、
油絵具が登場するまで西洋絵画で主に使われていました。粉状の顔料だけだと紙や板に定着させることができないため、
定着させる接着剤として乳化作用のある卵などを混ぜて絵具を作っていました。一般的なテンペラは卵が使用されていましたが、
膠(にかわ)やはちみつやカゼイン(タンパク質の1種)など
画家によって混ぜ合わせたものは様々だったと言います。テンペラ画は油絵具の様に変色(変黄)しにくく、
そして乾きやすく重ね塗りが出来る特性があります。
テンペラは定着効果が優れているので、
現在ルネサンス期の作品がある程度発色の良い状態で残っているわけです。
約500年以上経っていても作品を観る事が出来るのは、
こういったテンペラのメリットのおかげなわけですね。
ピエロ・デラ・フランチェスカ「キリストの鞭打ち」(1444‐1447年)
ドメニコ・ギルランダイオ「キリストの降誕」(1492年頃)
※ドメニコ・ギルランダイオ(Domenico Ghirlandaio)
1449年~1494年
ルネサンス期に活躍したイタリアの画家。
油彩画が登場してからこのテンペラ画が描かれなくなってきたのですが、
今でもテンペラの技術を用いた作品がたまに描かれる事もあります。
壁画には不向き?なテンペラ
テンペラ画は定着効果に優れていて、
約500年前のルネサンス期の作品が良い状態で今観れたりします。
でももちろん不向きな面もあるのです。
例えば壁画には不向きとされているのです。
このダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、
テンペラのデメリットの最たる例と言われています。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」(1495‐1498年)
これはサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院に所蔵されている作品。
この絵は修道院の食堂の壁画に描かれたもので、
本来なら壁画という事もありフレスコ画で描くのが一般的だったと言います。
しかしダ・ヴィンチはあえてテンペラ画にこだわって描いたとされる作品。
【フレスコ(Fresco)】
…西洋絵画などで壁画を描く際に使用された技法。
壁に漆喰を塗り、その漆喰が生乾きの状態で水または石灰水で溶いた顔料で描く事。乾いてからだとやり直しが効かないが、
壁画としては非常に保存性の高くなるとされています。
(完全に乾くまで約8時間くらいだと言います。)
食堂という場所がら湿気による腐敗と、
壁画に描かれた事で壁画の通気性が悪くなり絵を損傷させたと言われています。
ちなみに油絵具というものが登場してきたのが約15世紀頃。
そして現在の様なチューブ状の絵の具が誕生したのが、
19世紀頃と比較的最近の事なのです。
でも今ではチューブ状になっているので、
そのままパレットに出して使える様になっていますが、
昔の画家は顔料に卵などを混ぜて絵具を作っていたわけですよね。
本当に便利になったものだな~と思います。
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